【超基本】トレーニングの3つの原理と5の原則
こんにちは、今日はいつもの様々な研究から効率の良いトレーニングなどを紹介する記事ではなく、トレーニングする上で必ず知っていないといけないトレーニングの原理と原則についてお話しします。
トレーニングで結果を出すためには最新の研究や科学的に証明されている事を知識として知っておく事も必要ですが、それ以前にトレーニングにおける不変的な原理・原則を知る必要があります。
原理・原則の意味は辞書にはこうあります。
原理:多くの物事を成り立たせる根本的な法則。認識や行為の根本をなす理論。
原則:特別な場合を除く、一般的に適応される根本的な理論
どれだけ新しい知識を蓄えようとも基本的な地盤がないと、どんな事も成立しません。
前回の記事でも紹介した【意識性の原則】も基本的な原則の1つです。
今日は普段よりも記事のボリュームは物足りないかも知れませんが、一度トレーニングの基礎・基本を復習してみましょう。
◆トレーニングにおける不変的な原理
トレーニングに置いて変わらない原理は3つあります。
それが
・過負荷(オーバーロード)の原理
・特異性の原理
・可逆性の原理
です。
内容を1つずつ紹介していきましょう。
【過負荷(オーバーロード)の原則】
過負荷とは日常生活以上の負荷という事です。
基本的に人間の日常生活はどれだけ高負荷でも1RMの30%を超えないと言われています。
どれだけ頑張ってもという事は基本的には15%前後、デスクワークなど身体をあまり動かさない人は更に低い負荷量で生活しているという事です。
毎日の生活で負荷が高いと身体や精神を壊してしまうため、これは生活する上では良い事なのですが、やはりそうなると筋肉の成長は期待出来ません。
そのため、筋肉の成長を促すためにはトレーニングで日常生活以上の負荷をかける必要があります。
また過負荷の原理にはもう1つ重要な考え方を持つ必要があります。
それが「慣れ」です。
考えてみてください。
普段エレベーターばかり使う人がダイエットのために階段を使う事にしたとしましょう。
初めのうちは徐々に体重が減っていき、体力や筋肉も付いてくるでしょう。
しかし、だからと言って際限なく痩せていくでしょうか?
そんな事はないはずです。
人間は生物の中でもトップクラスに適応力があるため、一定の期間同じ事を続けると身体が順応してしまいその負荷が日常生活レベルになります。
これはトレーニングでも同じ事で毎回同じ負荷や同じ種目をしていても身体は変わっていきません。
そのため、筋肉を成長させるには重量やレップ数・セット数、種目などの変数を変えていく必要があります。
「現状維持は衰退と同じ」と言った言葉がある様にトレーニングに置いて変化のない同じ事を繰り返すことは避け、慣れてきたら徐々に負荷量を上げていく必要があります。
【特異性の原理】
特異性とは「そのものに備わっている特殊な性質」という意味です。
これは目的によってトレーニング方法を変えましょうといった原理です。
例えば、同じトレーニングでも足腰を鍛えたいのにベンチプレスばかりしていたらいつまで経っても足腰は強くなりませんよね。
上記は極端な例でしたが、実際にフィットネスジムでは筋肉を付けたいはずなのにランニングマシンをひたすら走っている男性、痩せたいはずなのに大筋群を使う多関節運動でなく軽い負荷で腕のトレーニングばかりしている女性などをちょこちょこ見かけます。
個人的に1番多いと感じるのは「痩せたいのにひたすら高重量を挙げる事に必死になっている中年男性」です。
男なら高重量を扱える様になりたいと気持ちはとてもよくわかります。
私もトレーニング初心者のときは同じ気持ちでした。
目的が重量のアップなら良いのですが、やはり目的と方法の相違があるとなかなか自身の満足のいく結果にならないため目的によってトレーニング方法を考えて変えていく必要があります。
【可逆性の原理】
可逆性とは「変化したものは元に戻ろうとする性質」の事です。
トレーニングを始めると初めはみるみる身体が変化します。
自身の身体の変化に嬉しさを覚え、トレーニングにハマり継続できればとても良い事ですが、身体の変化が起き始めたタイミングで仕事が忙しくなりなかなかジムに行けなかったり、初めに飛ばし過ぎてやる気がなくなってしまうと折角ついた筋肉がなくなり元の身体に戻ってしまいます。
これが可逆性です。
元々、人間の身体が恒常性と言って身体を元の状態に保とうとする機能が働きます。
それが良い変化であろうと悪い変化であろうと身体は変化を嫌い元の状態に戻ろうとします。
ダイエットでリバウンドしたり、付いた筋肉がなくなり元の身体に戻ってしまうのはこのためです。
そのため、痩せた身体や筋肉の付いた身体を「普通の状態」と身体が認識するまでは、運動やトレーニングを継続する必要があります。
しかし、この可逆性は悪い事ばかりではありません。
身体が元の状態に戻ろうとするということは、一度痩せた状態、筋肉が付いた状態が普通になるとちょっとの事では太ったり筋肉が減ったりしません。
しかも、その状態になっているということは運動習慣も付いているため太る可能性は少なくなり、一生スリムな身体・筋肉質な身体を維持する事が可能でしょう。
身体に定着するまでは頑張る必要がありますが、一度身体が覚えてしまえば良いため「今日はジムに行かずダラダラしたいな」という気持ちに打ち勝って運動習慣を付けましょう。
◆トレーニングにおける守るべき原則
3つの原理の次はトレーニングの守るべき原則についてのお話しです。
トレーニング の原則は以下の5つ
・漸進性の原則
・全面性の原則
・継続性の原則
・意識性の原則
・個別性の原則
です。
【漸進性の原則】
漸進とは「段階を踏み、徐々に進んでいく事」という意味です。
トレーニングもこの漸進性が大切なのです。
「これって過負荷の原理と同じでは?」と思う方もいるでしょう。
確かに過負荷の原理と似ていますが、過負荷は「成長には日常生活や現在のレベル以上の負荷が必要」という意味に対して、漸進性は「”徐々に”進んでいく」という意味で、この”徐々に”がキーワードです。
この原則を無視して急激に負荷量を上げてしまうと関節や靭帯に負担がかかり、逆に効果が出なかったり怪我をしてしまったりします。
これはトレーニング以外でも言える事で例えば仕事でも新卒の頃に急に大きな仕事を任されてもパンクしてしまいますよね。
しかし、徐々に経験を積んでいくと難しい仕事でもこなす事が出来ます。
トレーニングもいきなり高重量や難しいことをするのではなく、自分ができる範囲で徐々に負荷量を増やしていく事でいつの間にか高いレベルに辿り着く事が出来ます。
【全面性の原則】
全面性とは言葉の通り、全身バランスよく鍛えましょうという事です。
トレーニングを始めると好きなトレーニング種目や鍛えたい部位が出てきます。
男性であれば大胸筋を鍛えるベンチプレスや上腕二頭筋を鍛えるアームカールなどは人気でジムでも鍛えている人をよく見かけます。
しかし、トレーニングメニューや部位の偏りはボディバランスを崩したり、身体を痛める原因になります。
特に綺麗な体型を目指している人は全身バランスよくトレーニングを行う必要があります。
実際に私がパーソナルトレーナーの学校に通っていた頃、クラスメイトが大胸筋と上腕二頭筋ばかり鍛えていました。
その甲斐あってかベンチプレスは130kg程度まで挙げており大胸筋もすごく筋肥大していましたが、姿勢が悪く肩も痛めていました。
更にその他の種目を一切していないため、下半身は同じクラスの女の子と上げられる重量が同じという始末でした。
トレーナーとして同じ勉強しているのに何故そんな事になるのか疑問でした。
もちろん私とはトレーニングする目的が違ったからで、彼は「重量を挙げる事」にのみこだわっていたのでしょう。
そんな彼も卒業後はパーソナルトレーナーになりましたが、本当に効果を出せているか心配です。
そこし愚痴っぽくなってしまいましたが、トレーニングは偏ってしまうと良くないと言う事です。
ただ全身のトレーニングを行い、その中で特に「この部位は頑張ろう!」と言うのは問題ないため、しっかりとした基礎をわかった上で自身の鍛えたい部位を鍛えて下さい。
またこれはトレーニングの事だけでなく、柔軟性や持久力なども関係してくるためしっかりとしたストレッチやたまには持久系の種目をやってみても良いかも知れません。
【継続性の原則】
継続性も言葉の通り、「短期間ではなく、長期的な目線で継続しましょう」と言う事です。
短期的なトレーニングは可逆性の原理によりすぐに元に戻ってしまいます。
また短期的にストレスをかけると、ストレスに適応出来ず身体を壊してしまう可能性があります。
一時期流行った某パーソナルジムでは「2ヶ月で-30kg!」と宣伝していましたが、そのジムでトレーニングを受けた人はほとんどがリバウンドしていました。
また詳しくは他の記事で書きますが、短期的で急激な糖質制限により身体を壊す人も多かったそうです。
一度某パーソナルジムでトレーニングを受けた人のトレーニングを受ける前の血液データと受けた後の血液データを見せてもらいましたが、たった2〜3ヶ月でかなり血液データが悪くなっていました。
実際の方は体重が減って満足していましたが、肌や髪は艶がなくなり顔もやつれており、体重は減って体型も変わったのにでトレーニングを受ける前の方が綺麗で若々しかったです。
何も短期的に痩せる事が全て悪いとは言いません。
結婚式や特別な事があり、痩せたいと言う気持ちは分かりますし、2ヶ月で体重が30kgも減れば人生も変わる事があるでしょう。
しかし、よほどの事がない限りトレーニングやダイエットは長期的な目線で行っていく方が健康的で効果も期待出来ます。
【意識性の原則】
これはトレーニングの際に筋肉が動いている意識や重量を挙げる意識など自分の状況を意識しながらトレーニングを行うと効果が高まるという原則です。
この原則には賛否両論ありますが、スポーツ選手や物事の上達が早い人を見ていると、やはり1つ1つを意識して考えながら行動していると感じます。
実際に前回の記事や意識性についての研究によって効果は証明されてきています。
トレーニングにおいても「筋肉に効かせる」のか「重量を挙げる」のかによって、効果が変わってきます。
意識するだけでもトレーニングの効率が変化するため、「ながら運動」ではなくしっかりと意識してトレーニングを行いましょう。
【個別性の原則】
これは人によって適切なトレーニング種目や負荷量が違うため、自分に合ったトレーニングを選択しましょうという事です。
例えばトップアスリートがやっているトレーニングだからと言って万人に効果がある訳ではないですし、Aさんに効果があったからと言ってBさんも同じことをして同じ結果になるとは限りません。
トレーニングの効果や結果には「性別、健康状態、遺伝子、トレーニング・運動歴、食事内容」など様々な要素が複雑に絡み合います。
極端なことを言うとサッカーを始めたばかりの子にネイマールと同じ練習をさせても効果がないです。(仕方ない事ですが部活動の指導でこの様な事が良く見られます)
この個別性に関しては自分自身でどんなトレーニングが適正かを探していく必要があります。
また自分1人では難しい場合はパーソナルトレーナーを付けてみるのも一つの手です。
結果的にそちらの方が結果が出やすいため、初めだけ色々と教えてもらい途中から1人でトレーニングしていくのが効率的かも知れません。
◆最新の情報・研究も大切だけど
以上の3つの原理と5つの原則がトレーニングにおいて基礎となる考え方です。
最新の情報も大切ですが、この様な基礎・基本から外れていれば効果が出ない事も多々あります。
特に栄養学に関しては論文や研究で分かった事を鵜呑みにして、そもそもの生理学・生化学的に考えるとありえない事でも「最新科学で分かった○○な方法!」「科学的に証明された食べると○kg痩せる食べ物」と見たくなる様なタイトルを付けて間違った情報を発信している人がとても多いです。
その様な情報に騙されないためにも、まずは基礎的な知識を持っておく事も大切です。
本日も記事を読んでいただきありがとうございました。
たまにこの様な基礎・基本シリーズも記事にしていければ良いと思っているため、また読んで頂けると嬉しいです。
ではまた、次回の記事でお会いしましょう。
「重量を挙げる」VS 「筋肉に効かせる」どっちが大切?
「筋トレは筋肉に効かせろ!」
筋トレを行う人は筋肉を意識する事でしっかりと筋肉を使う事ができます。
実際にトレーニングの原則として【意識性の原則】と言うものがあり、意識をするとしないでは大きな差があるとされています。
特にトレーニング初心者の方はこの「効かせる意識」を持つ事でトレーニング効果を挙げる事ができます。
しかし、トレーニングを積んでいくと
「効かせる意識は大切だけど、とにかく重量を上げる方が良いんじゃないか?」
こんな疑問を持つ方も多いんじゃないでしょうか
筋トレを行う際に1RM(自分がギリギリ1回挙げる事が出来る重さ)の重さに近くにつれ、どうしてもバーベルを挙げる事に精一杯になり筋肉への意識が薄くなってしまいます。
そうなると「重量を挙げれているから良いだろう」と言う方と
「いやいあ、筋トレは効かせないと意味がない」と言う方に別れてしまいます。
今日はそんな「重量重視の筋トレ」と「効かせる意識重視の筋トレ」どちらが良いかをお話ししていきます。
◆効かせるとは何なのか
そもそも筋トレにおいて「効かせる」とは何なのでしょう。
個人的には筋トレで「効かせる」とは動いている筋肉を意識する事やどの筋肉がどう動いているかを意識する事だと考えています。
例えばベンチプレスだと大胸筋が動いていると感じ、更にバーベルを挙げるときは大胸筋が縮んでいて、下げるときは伸びていっていると感じる事が出来ると「筋肉に効かせられている」と言っていいでしょう。
解剖学的な知識がある方は大胸筋上部の起始部が停止に近づいているなど感じられると尚良いと思います。
また「筋肉に効かせる事の出来る」=「正しいトレーニングのフォーム」と言う考え方もある様です。
特にボディビルダーやフィジークの選手はこの「効かせる意識」を重要と考えているそうです。
「効かせる」事に関しては筋肉を意識する事が大切と説明しましたが、これは科学的に証明されています。
2012年に発表された研究(過去15年間に行われた論文をまとめたレビュー論文)では、運動効果に関する指示やフィードバックにより運動の有効性(バランス、正確さ)や効率(筋活動、筋発揮、心肺機能の反応)に利点があるとされています。
つまり、運動を意識するだけでパフォーマンス向上が見られると言う事です。
◆「重量を挙げる」VS 「筋肉に効かせる」〜単関節運動〜
では、意識する事でパフォーマンスが向上するとわかった所で
「重量を挙げる」「筋肉に効かせる」どちらが良いかを検討していきます。
まず、2009年に発表された研究でアームカールを用いて「筋肉の動きに集中する内部意識」「重量を挙げる事に集中する外部意識」のどちらが良いかを調べています。
結果は外部意識に対して内部意識で40%程度、筋活動が大きい事が分かりました。
しかし、外部意識のグループは持ち上げられる重量が内部意識のグループよりも7%程度重かったといった事もわかりました。
この実験から「筋肥大目的なら効かせる意識」「重量を挙げたいなら挙げる意識」が有効と分かります。
ですが、これは1回だけのトレーニングで出た結論です。
トレーニングは長期的な変化が大切なため、この段階ではまだどちらが良いかは判断できません。
●長期的な変化はどうなのか?
先ほどの研究では1回のトレーニングで起こった変化を見ましたが、2018年に長期的な変化を追った研究がされています。
その研究では2つのグループにバーベルカール(上腕二頭筋)とレッグエクステンション(大腿四頭筋)をしてもらいました。
トレーニング期間は8週間で片方のグループには「筋肉を締める意識」をする様に、もう片方には「重量を挙げる
事を意識」する様に指示されました。
その結果「筋肉を締める意識」をしたグループは「重量を挙げる事を意識」したグループより約1.6倍の筋肥大が見られました。
この研究では重量の変化は調べられていませんでしたが、筋肥大に関しては意識がとても重要な要素になっていると考えられます。
◆「重量を挙げる」VS 「筋肉に効かせる」〜多関節運動〜
ご紹介した様にアームカールやレッグエクステンションの様な単関節運動では、どこに意識を置くかで筋肥大か筋力発揮の伸び率が変わってきそうです。
では、ベンチプレスなどの他関節運動はどうでしょう。
2012年に
「2つのグループを作りベンチプレス時に片方には大胸筋を、もう片方には上腕三頭筋を意識してもらい筋活動に変化があるか調べた」という研究がされています。
結果は「筋肉を意識する事で意識した筋肉の活動量が10%以上向上した」となりました。
更にこの研究では面白い事に1RMの50%・80%と重量を変え「意識する・しない」で筋活動に変化があるか調べられています。
結果は「1RMの50%だと筋肉を意識した方が筋活動が増えたが、80%の場合は意識しない方が筋活動が強くなった」となりました。
これは50%は意識出来る位の重量だが、80%になると筋肉を意識するよりもバーベル挙げる事に集中してしまうからだと考えます。
また今回はベンチプレスを使っていますが、この様な多関節運動では重量が重くなるに伴って全身の力を発揮する必要があるため、「ここの筋肉を意識する!」なんて言っている場合ではないのかも知れません。
次はベンチプレスの意識に加え挙上速度に関してのお話しです。
●「素早くバーベルを挙げる」VS「効かせる筋トレ」
トレーニングをする上で筋肥大だけでなくパワーも大切になってきます。
パワーは力(筋力)×速度で求める事ができます。
パワーをつけるためには、ゆっくり効かせる事よりも出来るだけ素早くバーベルを挙げる事を意識して行うのですが、このパワーのトレーニングは筋肉を意識して行うトレーニングより筋肉の活動量は多いのでしょうか?
2018年に行われた研究では1RMの50%でベンチプレスを行い、以下の条件を付けました。
①バーベルを普通に上げ下げする。(筋肉への意識なし)
②バーベルを普通に上げ下げする。(大胸筋or上腕三頭筋を意識)
③バーベルをなるべく素早く挙げる。(筋肉への意識なし)
④バーベルをなるべく素早く挙げる。(大胸筋or上腕三頭筋を意識)
結果は①に対して②で約5%程度、③で15%程度、大胸筋と上腕三頭筋の筋活動が増えました。
また④のバーベルをなるべく素早く挙げる(大胸筋or上腕三頭筋を意識)では③以上の筋活動は見られませんでした。
やはり、高重量や速さを意識し爆発的な力が必要なときは特定の部位を意識して効かせることは難しそうです。
◆「効かせる意識」や「重量・パワー系種目」は目的次第
本日は様々な研究を元に「筋肉に効かせる筋トレがいいのか」「ひたすら重量を挙げる筋トレ」が良いのかを紹介してきました。
結論をまとめると目的次第で方法を変えた方が良いと感じました。
例えば筋肥大を目的にする場合、あまり重すぎる重量を扱わず、1RMの50~70%程度で鍛えている筋肉を意識することで筋肉の活動量が増え、筋肥大を期待できます。
筋肥大よりも重量の向上やパワーの向上で最大挙上重量を挙げる事を目的とした場合、1RMの80〜90%の重量で重量を挙げる事や素早く動かす事を意識した方が効果的です。
またトレーニング初心者はトレーニングのフォームを獲得出来ていないため、高重量でのトレーニングすると怪我をしたり身体を痛める可能性があります。
トレーニング初心者は初めは高重量でのトレーニングを控えて、やや軽い重量で筋肉に効かせる意識やフォームの獲得を目指す事で長期的に見るとトレーニングの効果が上がってきます。
本日の記事はいかがだったでしょうか?
筋肉に効かせる事や重量を挙げる事への意識だけでトレーニングの効率が変わってくるため、この様な小さい事の積み重ねが理想の身体への近道ではないかなと考えています。
もしあなたが現在フィットネスジムに通っているなら、今日から目的に応じた意識を持ってトレーニングをしてみましょう。
本日も記事を読んでいただきありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう。
広背筋に効く筋トレランキングトップ5
「背中に鬼神が宿ってる!」
これは一言で背中のたくましさを表した言葉で、ボディビルのコンテストでは有名な台詞です。
ボディビルダーの様に筋骨隆々になりたい訳ではないけれど、男性であれば厚くたくましい頼り甲斐のある背中は憧れますよね。
しかし、実際に背中を鍛えている人は他の筋トレに対して少ない様な気がします。
私がトレーナーをしていた時も「筋肉を付けたいんです!」と言ってジムに来た人の大体が腹筋、腕、胸に付けたいと言う人が多く、「背中を鍛えたいんです!」と言ってくる人はほとんどいなかった様に思います。
理由は単純に腹筋、腕、胸は分かりやすく「筋肉がついていたらカッコイイ」と思う箇所だからと思います。
実際に腕と胸は筋肉が付きやすく、変化を実感出来るため筋トレ初心者の方は継続のモチベーションを高めるために鍛えるのは効果的かなと思います。
ですが、そうして筋トレを続けていくと筋トレに慣れてきた時にこう思ってくるんです。
「背中も筋肉ついてたらカッコイイ」
そう思い、背中の筋トレを始める人が増えてきます。
しかしここで困難に打ち当たるのです「全然背中に効かせられない」「思ったより筋肉が付かない・・・」
特に筋肥大しやすい大胸筋や上腕二頭筋、上腕三頭筋を集中して鍛えていた人は予想以上に変化を感じれず、背中のトレーニングをやめてしまう事も多いです。
この壁を乗り越えられるかでカッコイイ背中を手に入れられるかが決まってくるのですが、この様な壁があるため必然的に背中を鍛える人はベンチプレスやアームカールをする人よりも少なくなってしまっているのです。
私自身もトレーニングを始めた事は背中に効かせる事は苦手でしたし、筋トレの指導をしている時もクライアントから「1人じゃ効いてる感じがわからない」なんて言葉を良く聞きました。
確かに背中の筋肉、主に広背筋はトレーニング時の動きが見えないため意識しづらいですし、大胸筋に比べ筋肥大もしにくいためなかなかモチベーションが上がりませんよね。
また少し専門的な話になりますが、広背筋への刺激は肩甲骨の動きや上腕骨頭(腕の骨の関節部分、脱臼で抜けるのはここ)の引き込み具合によって変わるため、広背筋に効率よく刺激を与えるには、思っている以上に身体を上手く使う必要があります。
しかし、だからと言って広背筋を鍛えカッコイイ背中を手に入れる事を諦めたくはないですよね?
今日はそんな広背筋を鍛えるのに効率良いトレーニングは何かをいくつかの研究を元に個人的な解釈でランキングを付けて発表します。
またそのトレーニングの時に何を注意する必要があるのかを解説していきます。
◆筋電図を用いた広背筋トレーニング
1つ目の研究は2000年にドイツで行われた研究です。
これは筋電図を用いて各トレーニングでどれだけ広背筋が収縮したかを調べたものです。
そのトレーニング は
①ラットプルダウン(フロント、ナロー、逆手)
②ラットプルダウン(バック、順手、持つ幅は肩幅)
③ラットプルダウン(フロント、順手、持つ幅は肩幅)
④ダンベルロウ(アンダーグリップ)
⑥シーデットロウ(ニュートラルグリップ)
の6つの種目での筋肉の反応をみました。
贅沢を言うのであればこの時、上腕二頭筋や菱形筋群など周囲の筋肉の反応も見たいものですが、今回は広背筋のみです。
結果はこの様になりました。
この研究では①のラットプルダウン(フロント、ナロー、逆手)で一番筋収縮が起こっているとなりました。
しかし、他のラットプルダウンとそこまで差はなく、またダンベルロウとも大きな差はありませんでした。
ただ、シーデットロウではラットプルダウンに比べ、30%程度活動量が少なかったです。これはシーデットロウのフォーム的に三角筋の後部繊維や菱形筋、僧帽筋に筋収縮が起こりやすかったためと考える事ができます。
この研究だけ見ると一番良い種目はラットプルダウンで、手幅や持ち方はそのまで大きな差はないため、やりやすい方法でやるのが効果的となり、全体的に刺激を入れたいならシーデットロウが良いとなります。
◆早稲田大学での研究
次は2009年に早稲田大学で行われた研究です。
これちらの研究では
・アップライトロウ
・シーデットロウ
・フロントラットプルダウン(持つ幅は肩幅)
・バックラットプルダウン(持つ幅は肩幅)
・ベントオーバーロウイング
の5つの種目で広背筋の活動量について調べました。
個人的にアップライトロウ(主に肩、三角筋のトレーニングで行う種目)でも調べているのが面白いと思いました。
こちらの研究では広背筋だけではなく、上腕二頭筋と僧帽筋の活動量も調べてくれています。
しかも、僧帽筋に関しては上部、中部、下部に分けて調べてくれてるため、とても良い研究だと感じました。
この研究でも一番広背筋が活動していた種目はラットプルダウンでした。
またラットプルダウン ではフロント、バックどちらに引いても活動量に有意差はありませんでした。
そして先ほどの研究と違い、今回のものではシーデットロウでもラットプルダウンと広背筋の活動量は大きく違いはありませんでした。
またフォームが難しいとされているベントオーバーロウでは、上記2種目にやや劣るものの広背筋への刺激は高かったとなりました。
しかし、アップライトロウでは上腕二頭筋の活動量が大きく、広背筋はほとんど活動していなかったという結果になりました。
アップライトロウはロウイングの種目ですが、主に肩を鍛える種目のため当然の結果かなと思います。
今回の研究だけで言うと
1位、2位ラットプルダウン
3位シーデットロウ
4位ベントオーバーロウ
5位アップライトロウ
となりました。
また今回の研究では広背筋の他に僧帽筋の活動量も見ているため、そちらにも少し触れてみましょう。
筋トレをしていない人にとっては馴染みの無い筋肉かも知れませんが、僧帽筋は首から肩甲骨の内側まで付いている大きな筋肉です。
ボディビルダーの首がモコッと出ているのは僧帽筋が発達しているからなんです。
僧帽筋上部はボディビルダーや首への衝撃が強いラグビー選手やプロレスラーには重要な筋肉ですが、一般の人にとっては鍛えすぎると肩こりの原因になるためそこまで必要ではありません。
しかし、僧帽筋中部繊維・下部繊維は姿勢の安定や肩甲骨の動きのコントロールをするため筋力が落ちてくると肩に痛みが出たり、姿勢が悪くなります。
そのため、中部繊維・下部繊維は鍛えるメリットは大きいです。
そんな僧帽筋も広背筋と同様にラットプルダウンとシーデットロウで活動量が大きい結果になりました。
ですが、一番上部・中部・下部繊維の全体に活動が大きかったのはベントオーバーロウとなりました。
理由はベントオーバーロウは前傾姿勢を保持し、肩甲骨を内転(内側に締める)させる必要があります。
そのため、僧帽筋が常に収縮している必要があるため活動量が大きくなったのでは無いかと考えます。
今回の研究からわかった事はやはり広背筋をを鍛えるにはラットプルダウンが効果的だが、初めの研究と違いシーデットロウでも広背筋は有効に鍛える事が出来る。
広背筋だけなく僧帽筋も鍛えたいならベントオーバーロウが効果的となりました。
しかし、先ほども言いましたがベントオーバーロウはフォームの獲得が難しく、我流でやると肩や首ばかりに力が入ったり、腰痛になる可能性があるため筋トレ初心者はラットプルダウンかシーデットロウでも充分かと思います。
◆ラットプルダウンの持ち方
2つの研究から広背筋にはラットプルダウンがかなり優秀なトレーニングでは無いかと考えられますが、手幅や持ち方がバラバラでどんな持ち方が一番良いかが気になるところです。
そこで色々調べていると持ち方について調べているものがあったため紹介します。
まずは2002年に海外(どこの国かは分かりませんでした)で行われた研究では、ラットプルダウンのグリップをフロント、バックどちらに引くかで広背筋の活動量が変化し、フロントに引く方が効果的と報告されています。
しかし、この研究は先ほどの早稲田大学の研究内で否定されているため、除外して考えても良さそうです。
また他の研究ではラットプルダウンの手幅や持ち方だけを調べたものがありました。
まず比較したのはラットプルダウンを全てフロントで行い、手幅のみナロー・ミディアム・ワイドグリップの3つで行い。広背筋の活動がどう変化するか調べたものです。
この研究でも広背筋の他に上腕二頭筋、僧帽筋、刺下筋の活動量も調べられています。
結果はどの幅で持っても広背筋、上腕二頭筋、僧帽筋、刺下筋に活動量の変化は見られませんでした。
強いて言えば、ワイドグリップで持った時に若干僧帽筋の活動が大きい程度です。
次に調べた研究では
・ワイドグリップでのフロントラットプルダウン
・ワイドグリップでのバックラットプルダウン
・逆手、ナロー、フロントラットプルダウン
・Vバーでのナローラットプルダウン
での広背筋の活動量を調べたものです。
この研究ではこの4種目をコンセントリックとエキセントリックに分けて調べてくれており、非常に有益な研究です。
ちなみにコンセントリック(求心性)は筋肉を縮める時の動き、エキセントリック(遠心性)は筋肉に力を入れているが重さに耐えれず、力が入った状態で伸ばされている動きです。
エキセントリックを意識的に行う事で筋肥大に効果的と言われています。
そして結果はコンセントリック、エキセントリック共に【ワイドグリップでのフロントラットプルダウン】が一番広背筋が活動したとなりました。
またコンセントリックではその次に「逆手・ナローグリップ・フロントラットプルダウン」と「ワイドグリップのバックラットプルダウン」がほぼ同じ数値で活動量が高かったです。
エキセントリックでは「ワイドグリップのバックラットプルダウン」が2番目に活動が強く、その次に「逆手・ナローグリップフロントラットプルダウン」となりました。
◆広背筋のオススメトレーニングベスト5
さて、長くなりましたがいよいよ広背筋に効果的なトレーニングベスト5の発表です。
第1位
【ワイドグリップのフロントラットプルダウン】
理由は
・多くの研究で大きな活動量が示されている。
・僧帽筋や菱形筋など広背筋以外の筋肉への刺激も多いため、全体的に背中を鍛えやすい。
・腕が肩より上に上がるため、肩関節や肩甲骨の可動域を獲得しやすい。
・動きの幅が大きいため、最初から最後まで筋収縮を入れる事が出来る。
と言う事でワイドグリップのフロントラットプルダウンが第1位になりました。
第2位
【ワイドグリップのバックラットプルダウン】
第一位のワイドグリップのフロントラットプルダウンとほぼ同じ理由ですが、頭より後ろにグリップを引くため、初心者はフロントよりも僧帽筋上部繊維に収縮が入りやすく、広背筋に効かせるのが少し難しいかも知れないと言う理由で2位になりました。
第3位
【シーデットロウ】
理由は
・初めの研究では活動量は低かったが、他の研究では充分高い数値を示していた。
・広背筋の他の筋肉(特に僧帽筋中部・下部や菱形筋)にも効果的
・肩甲骨の動きが意識しやすい。
です。
特に3番目の「肩甲骨の動き」は背中のトレーニングだけでなく、他のトレーニングでも必要になってくるのですが、トレーニング初心者ではなかなか意識するのが難しいです。
しかし、シーデットロウでは肩甲骨を寄せる動きが意識しやすいため、私がトレーナーをしている時も肩甲骨の動きを意識してもらうためにラットプルダウンよりも先に指導していました。
個人的にはトレーニング初心者に最初にやって欲しい背中のトレーニング第1位ですが、肩甲骨の動きが内転(内に寄せる)がメインで、上方・下方回旋(肩甲骨の回転の動き)が少ないため広背筋の活動量がラットプルダウンよりもやや劣るため第3位です。
第4位
【ダンベルロウ(ワンハンドロウ)】
理由は
・肩甲骨の動きは意識しやすいが、他の種目に比べ広背筋の活動量が物足りない。
・腕が垂れ下がった状態なのでローテータカフ(回旋筋腱板)などの肩甲骨周りの筋肉は使いやすい
・左右交互に行うため時間がかかる。
などから第4位となります。
第5位
【ベントオーバーロウ】
理由は
・フォームの獲得に時間がかかる。
・初心者は肩に力が入り、広背筋に効かせにくい
・下手に行うと腰に負担がかかるリスクがある。
今回は初心者向けの広背筋トレーニングのため、残念ながらフォームが難しいベントオーバーロウは第5位となりました。
今回はこの様な結果になりました。
やはりどの研究でも成績が良かったラットプルダウンが1・2トップでしたね。
また今回のランキングには入れていませんが、1位2位以外のラットプルダウン(Vバーやナローグリップ)はどれも大きな差はありませんでした。
広背筋の活動量的には1位2位に続くレベルでしたが、そうなるとランキングが全てラットプルダウンで埋まってしまうため今回は除外としました。
【ワイドグリップのフロントラットプルダウン】
【ワイドグリップのバックラットプルダウン】以外のものはどんな手幅、持ち方をしても有意差はないため、やりやすいやり方でやって頂いて問題ないです。
Vバーでのラットプルダウンのみやや広背筋の活動性は低い様です。
今回は広背筋のトレーニングに効果的な種目の紹介をいたしました。
なかなか効かせる事が難しい広背筋のトレーニングですが、まずはやるだけで活動量が多いものをして徐々に効かせられる様にしていきましょう。
では、今回も記事を読んで頂きありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう。
早食いは肥満の元、ゆっくり食べるだけで痩せる理由
「早食いだと太りやすい」なんて言葉聞いたことありませんか?
ダイエットする人はどこで聞いたかわからないけど、聞き覚えがある言葉だと思います。
私もパーソナルトレーナーとしてダイエット指導をしていた時は食事はゆっくりする様に指導していました。
しかし、何故早く食べると太るのか?ゆっくり食べれば本当に痩せるのか?疑問に思いますよね。
今日はそんな食べる早さを変えるだけでダイエット効果があるのかを説明したいと思います。
◆早食いの人は5kgも太りやすい!?
早速結論ですが、早食いの人はゆっくり食べる人よりも平均して5kg以上も太っている事がわかっています。
これは国立健康・栄養研究所などの研究グループが全国の女子大生を対象に行った調査なのですが、全国22大学の18歳の女子生徒1744人を対象に身長・体重・食事内容・食べる早さ、生活習慣についてアンケートを実施しました。
その中で摂取カロリーが極端に多い人、少ない人を除く1695人のデータを解析しました。
食べる早さは「とても早い」「比較的早い」「普通」「比較的遅い」「とても遅い」の5段階で自己申告してもらいました。
また客観性を持たせるために、よく一緒に食事をする友人にも答えてもらうと9割り以上が本人が答えた食事スピードとほぼ一致していました。
解析の結果、身長と食事スピードの相関関係はありませんでした。
一方、体重と食事スピードは相関関係があり、「とても早い」人の平均体重は55.4kg「とても遅い」人の平均体重は49.6kgとなんと5.8kgも体重差がありました。
また体重には身長の影響もあるため、身長を含めた差を見るためBMI(身長に対する体重の割合)を調べると「とても早い」人は平均22.0、「とても遅い」人は平均19.6でした。
BMI22.0はそこまで太っている訳ではありませんが、ゆっくり食べる人の方が痩せている結果になりました。
◆早食いが太りやすい生理学的な理由
では何故食事スピードが早い人は遅い人に比べ太りやすいのでしょう?
それは食事量にあります。
食事スピードが早い人ほど食事量が多くなりやすいため、ゆっくりと食べる人よりも振りやすくなります。
食事量が多くなる理由は満腹中枢の働きです。
人間の食欲は脳の視床下部にある満腹中枢と接触中枢によりコントロールされており、お腹が空くと接触中枢が刺激され食欲が沸き、満腹になると満腹中枢が刺激され食欲が抑制されます。
満腹中枢は食事によって吸収されたブドウ糖により血糖値が上がる事で刺激されます。
しかし、この血糖値 が上昇し満腹中枢が刺激されるまで約20分かかるとされています。
つまり食事開始から20分は満腹感を感じにくいため、食事スピードの早い人はなかなか満腹にならず食べすぎてしまうのです。
また【インスリン分泌を高める】と理由もあります。
インスリンは筋肉と脂肪組織にブドウ糖を運ぶ役割があり、脂肪組織にブドウ糖が運ばれると脂肪になります。
食事スピードの早い食事をする事で急激に血糖値が上昇し、それに伴いインスリンが大量に分泌されます。
そうなると必要以上に脂肪組織にブドウ糖が運ばれてしまい、脂肪の合成が多くなってしまい、結果的に太ってしまいます。
1、2食ではあまり影響はないですが1日3回の食事全てがこの様な事が状態だと太りやすくなるのも頷けます。
そのほかには【噛む回数】も太りやすさと関係しています。
噛むという行為はヒスタミンなどの食欲抑制物質の分泌を亢進させ、満腹中枢がより早く刺激される事がわかっています。
またよく噛む事で食欲増進物質の分泌を抑制することもわかっています。
食事スピードが早い人は必然的に噛む回数が少なくなるため、遅い人よりも更に食欲が増してしまいます。
余談ですが、よく噛む事は味覚の敏感さにも関係しているためよく噛む人は味をしっかり感じる事ができ薄味でも満足できます。
しかし、早食いの人は味覚が鈍感になりやすいため濃い味を求め、そこで余計にカロリーを摂取してしまいます。
また、上記の調査の食事内容では食事早食いの人は食物繊維の少ないものや単品もの(ラーメン、丼もの)をよく食べる傾向があり、ゆっくり食べる人は食物繊維の多く含まれたものを食べる傾向にあったとのこと。
それだけでも太りやすさが変わってくるのが分かりますね。
◆食事内容よりも食事スピード早いだけで太る。
先ほど「食事スピードが早い人はそもそも太りやすいものを食べる傾向にある」とお話ししましたが、こう思った人はいませんか?
「じゃあ食事スピードに関係なく、食べるのが早い人は食事の内容がダメなだけなんじゃないか」
こう思った人は研究結果が出てるからと鵜呑みにせず疑う目で見れているため素晴らしいと思います。
そこでこんな研究が2002年に日本でされています。
35歳〜69歳の男女4742人の食べる早さと食事量、運動習慣、飲酒習慣を答えるアンケートを実施して、データ分析を行いました。
そうすると、男性では食事スピードが早い人は食事量も多い事が分かりましたが、女性では食事スピードと食事量に関連は見られませんでした。
そこで食べる量の違いを除去、また運動習慣の影響も除去し単純に「食事スピード」と「肥満」の関係のみで再度データ分析を行いました。
その結果、食事スピードが「普通」の男性の平均体重64.8kgに対し「とても早い」人は3.9kg体重が重く68.7kg、「とても遅い」人は3.0kg軽い61.8kgとなりました。
また女性では「普通」の人は平均52.8kgに対し、「とても早い」人で3.2kg重い56.0kg、「とても遅い」人は2.7kg軽い50.1kgとなりました。
こちらもBMIのデータを算出した結果、初めに紹介した研究を同じく食事スピードと相関が見られました。
この結果から同じ食事量でも食事スピードが早いだけで太りやすいと分かりました。
そのほかの研究では2015年に発表されたRelationship between short-term changes in eating speed and the risk of metabolic syndrome among adultsという論文で早食いの人ほどBMIが高く、腹囲の数値も大きかったと報告があります。
◆適切な食事スピード、噛む回数は?
ここまで早食いに対して脂肪が増えやすいと説明してきました。
では、どの様に食事スピードを意識すればダイエット効果があるのでしょうか。
これについては新潟大学医歯学総合病院の伊藤先生が文献のレビューを行っています。
・「食事スピードが早い・遅い」に明確な定義はない。
・20〜30分以上かける事が理想とされている。
・簡単にまとめると噛む回数が10回以下だと肥満率が高くなる。
・噛む回数の指導をし噛む回数が20回以上になると肥満率が減少。
・噛む回数は20〜30回が良く、理想は30回以上を目指す。
といった結果になりました。
食事スピードに関しては満腹中枢が刺激され始める20分以上かけて食べるのがやはり効果的なんですね。
また噛む回数は生理学的な研究が難しいですが、統計的に10回以下はダメ、20回以上からダイエット効果が出てくるみたいです。
また正確な研究内容は見つからなかったのですが、早食いに関しては大阪大学での研究で早食いの人は3倍太りやすい。岡山大学の研究では早食いの人は4.4倍肥満になりやすいと発表されているものもありました。
食べる早さだけでこれだけ肥満になる確率が高く、逆にゆっくり食べるだけでダイエット効果があるならやらない理由はありませんよね。
「仕事で忙しくてどうしても昼ごはんは早く食べないといけない」と言う人は朝・夕だけでもゆっくり食事する事を心がけて見てください。
本日も記事を読んでいただきありがとうございました。
また次回お会いしましょう。
水素水、アルカリ水って健康に良いの?
【水素水に老化防止効果なし、国が販売会社に措置命令】
2021年3月30日にこんなニュースが流れました。
これは水素生成器を販売・レンタルしている会社が水素水には老化防止効果がある、様々な疾病予防に効果的、水素水は活性酸素を除去すると宣伝した事に対して取られた措置です。
皆さんも水素水と聞くとなんとなく身体に良い様に思うかも知れませんが。
国が水素水は健康に影響を与えないと公表したんですね。
こんなニュースが流れると「じゃあ他の効果があると宣伝されている水はどうなんだろう?」と思いませんか?
前回はダイエットと水の関係でしたが、今日はそんな「健康に良いと言われている水」についてお話ししたいと思います。
◆水素水の科学的根拠
さて、すでに科学的根拠に乏しいと公表された水素水ですが、一体なぜ今まで「効果がある」と言われていたのでしょうか?
ネットで調べてみるとどうやら水素水に含まれる水素がヒドロキシルラジカルなどの悪玉活性酸素を除去する。
活性酸素の増加を抑制すると言ったものが多かったです。
しかし、ネットの記事では多くが「水素水は活性酸素を除去し老化防止、疾病防止、美容に効果的と言われています。」と言った文言ばかりで科学的根拠を示すものはほとんどありませんでした。
次に論文や研究を調べてみると、2012年に日本老年医学会が水素分子の生理作用と水素水による疾病防御というものを発表していました。
論文の内容は水素水によって疾病にどんな効果があるかというものです。
結果は「効果がある!」と言っていても体内ではなく試験管内での反応を示しているものが多く、実際に水素分子を投与して様々な効果がありましたと言っているものもラットや豚などの動物実験での結果でした。
人間に投与しても効果があったものも少しだけあったのですが、効果のあったものは「糖尿病の改善」「疲労軽減」と言ったものでした。
しかしこれらは前回の記事 で説明しましたが、水素水に限らず普通の水でも同様の効果があります。
またその研究では臨床的には少し効果があったが、まだ未解明な部分が多く根拠に欠ける。しかし非科学的な仮説やそれによる宣伝がされており、臨床研究の妨げになっている。今後の研究で疾病の新しい治療方法になることを期待している。
とされており、科学的根拠に乏しい事や不確定な解釈による宣伝に言及しています。
また他の研究を調べてみても「効果があることを期待している」や「ラットでは効果があった」とされているものばかりで、私の調べた限りでは人間で効果があると断定しているものは少なかったです。
少なかったと言ったのは、「効果がある!」と言っているものもちらほらありましたが、その全てが水素水 の販売会社やサーバーのレンタル会社でした。
それだと自社の製品をアピールするために研究にバイアスがかかったり、そもそも聞こえの良い事しか書きませんよね。
例えば2018年に出されたものだと水素水を飲むとストレス軽減や眠気改善に効果があるという研究結果が出ていますが、出典元がその会社の研究開発部だったりします。
実際にニュースになり、措置命令を受けた会社も「科学的根拠があります」と論文を掲載していたそうですが、国により合理的な根拠はないと否定されたそうです。
これは今回の事だけではなく、論文・研究=全て科学的根拠(エビデンス)がある訳ではないとハッキリ分かりますね。
私もできるだけ正確な情報をお届けしようとしていますが、間違っている事や研究内容を読み間違える事もあるかも知れないので、常に疑問を持ちながら読んで頂きたいです。
余談ですが、私が学生時代トレーナーのアルバイトしていたフィットネスジムでも水素水のサーバーが導入され、お客様に勧めて欲しいと言われました。
当時19歳でしたが、年齢の割に身体についてかなり勉強していた自信があった私は本当にこれって効果があるのか?と思い、上司に聞いてみました。すると「ここの大学の教授が効果があるかもと言っているから大学で研究されていて効果があるみたいですと勧めて」と言われました。
名前は伏せますが、日本でもトップ5に入る位の有名フィットネスクラブでもそんなことが起きていることに驚愕しました。
私は効果がないかも知れないことを勧めたくないと思い、お客様にはこっそり「美容や健康の効果はまだ出てないから期待できないです」「ただ単純な水分補給のためなら飲んでも害はないです」と説明していました。
会社から見たら良くない事ですけどね。
以上の結果からやはり水素水現段階では効果が証明されていないです。
そのため、高いお金を払う必要はないと思います。
◆水素がダメならアルカリ水はどうなの?
水素水の他に有名なのはアルカリ水ではないでしょうか?
アルカリ水はその名の通り、pH8.0以上のアルカリ性の濃度を持った水です。
人間の身体のpHは7.4±0.05と弱アルカリ性のためアルカリ水を飲む事でpHをアルカリ性に戻す事ができ、健康に良いと言われれいます。
そして活性酸素などで身体が酸性に傾くと病気になってしまったり、しわ、しみの原因となるためアルカリ水も美容に人気の一つとなっています。
これについてはそもそもの人間の生理学的な知識があればすぐに嘘だと分かります。
先ほども言った通り、人間のpHは7.4±0.05と弱アルカリ性を保っています。
しかし、活性酸素が発生したからと言って酸性に傾く訳ではありません。
人間には恒常性機能と言う身体の状態を一定に保つ働きがあります。
これによって大きな病気がない限りpHは一定に保たれます。
そもそも活性酸素は身体が代謝したり、運動する度に発生しているため、食べ物・飲み物で体内のpHが変化する様なら、すぐに酸性に傾いて死んでしまいます。
これについてはイギリスの栄養士協会も同じ様な発言をしています。
ちなみにpHが一定値より変化する場合は腎障害や糖尿病、低カリウム血症や肺気腫などの病気にかかった時だけです。
どれも生命を脅かす様な病気ですが、健常な人は恒常性が働いてpHは傾かないため安心してください。
生理学的な面から見てもアルカリ水は効果なしと考える事ができますが、少しだけ研究面でもお話ししましょう。
アメリカの登録栄養士、クリスティ博士はアルカリ水に老化防止や体内の毒素排出の効果はないとしており、肝臓や腎臓が健康なら勝手にやってくれると言っています。
ただ、ラットを用いた研究ではpH8.8のアルカリ水によって胃酸の逆流を防ぐ事が出来る可能性があるとしています。
ですが、これは人間では証明されていないためあくまで可能性と言う段階です。
アルカリ水については2016年に「アルカリ水は運動中の水分補給に適している」と結論付けられた研究もあります。
100人の被験者に軽度の脱水症状になる程度の運動をしてもらい、その後通常の水分補給とアルカリ水での水分補給のグループで、どれだけしっかりと水分補給できたかを血液の粘度を調べました。
結果はアルカリ水では6.30%も粘度が低下しました。
これは血流が良くなり、酸素や栄養を全身に運びやすくなり運動効率やパフォーマンスが向上すると考える事ができます。
しかし、通常の水でも3.36%粘度が低下しました。
またこの実験では被験者に軽度の脱水が起きるまで運動してもらっていますが、本来であれば脱水を起こす前に適度な水分補給をする必要があるため、適度な水分補給をしていればアルカリ水出なくても問題ないと考えます。
また健康面でも同様の結果が出ています。
2016年にSystematic review of the association between dietary acid load, alkaline water and cancerと言う研究結果が出ました。
これはアルカリ水と癌の関連性を調べた研究で252件の研究を調べたレビュー論文となっています。
その結果、アルカリ水と癌には関連性がなく、メディアなどで宣伝されている様な効果はないと結論付けられました。
◆その他の飲料水
ネットで「健康 水」で検索すると大きく分けて水素水、アルカリ水がやはり多いのですがその他にも怪しいものが出てきたりします。
細かくは説明しませんが、基本的に「これを飲めば痩せる!」「健康にはこれ!」みたいなものは効果がないと考えて良いでしょう。
しかし、例外もあります。
例えば生理食塩水は人間の浸透圧に濃度が合わせて作っているため、脱水症状の際に効果的です。
また日本の水は基本的に軟水ですが、硬水も健康に効果的です。
硬水はマグネシウムやカリウムが豊富に含まれているため、不足しがちな微量栄養素であるミネラルが補給できます。
ミネラルが補給できれば、代謝の活性化や病気のリスクが低下するため長い目で見れば健康面に効果があるでしょう。
しかし、デメリットとして口に合わない、微量栄養素と言うだけあって飲み過ぎるとお腹を壊す可能性があります。
また通常の水でも健康への効果は高いため無理して硬水を飲む必要はないと思いますが、夏場の熱中症予防などには良いでしょう。
◆まとめ
さて、水素水やアルカリ水などダイエットや健康に良いと言われているものもあまり科学的根拠のないものが多いとわかっていただけましたでしょうか?
水は毎日飲むため継続してこういった水を買っていたり、サーバーをレンタルしている方はそのお金を野菜を買うなど違うことに使って頂いた方がダイエットに効果的です。
この様な間違った健康情報に惑わされないためには過剰な効果を謳った健康商品には手を出さないことです。
もし、心配であれば私のわかる範囲でお答えしますのでコメントもお待ちしています。
では本日も記事を読んでいただきありがとうございました。
腹筋を頑張っても効果が出ない4つの理由
筋トレと言えば腹筋
男性であれば「バキバキに割れたシックスパック」
女性であれば「スリムでペタンとした腰回り」に
憧れる事があるでしょう。
実際、私がトレーナーをしている時も初めのカウンセリングで
「腹筋を鍛えたい」と言うクライアントがとても多くいました。
特に男性であれば「夏までに格好いい腹筋を手に入れてプールで女性の注目を浴びたい」と思うでしょう。
事実、筋肉量が多い男性は魅力度が高く女性にモテる事が報告されているので、シックスパックに割れた腹筋があればモテる可能性が高くなります。
しかし、気合を入れて腹筋を頑張ったとしてもなかなか効果が出ない事も多くありませんか?
もちろん、筋トレを始めたてだったり、そもそもの脂肪量が多い場合は腹筋以外の所からアプローチしていく必要がありますが、筋トレ歴もそこそこあり脂肪も多くない、けど何故か腹筋が割れない。
こんな方結構いるんじゃないでしょうか。
そんな時「腹筋は痩せれば出てくるからもっと脂肪を落とす必要がある」と有酸素運動を多く取り入れてみたり、「腹筋は回数が大切だから」とレップ数を増やしてみたり、様々なアプローチをしている人がいます。
間違いではないですが筋トレをそこそこやっている場合、問題はそこではない事が多いです。
むしろ、有酸素運動をする事で全体的な筋肉のボリュームが落ちたり、腹筋の回数を増やして腰を痛めたりする危険があります。
今日はそんな腹筋を頑張っていても効果が出ない4つの理由とその対処法をお伝えしたいと思います。
※今回は腹筋=腹直筋の事と考えて記事をご覧下さい。
◆腹直筋の繊維について理解していない
1つ目の理由は腹直筋の繊維について理解していないことです。
筋トレをしている人は知っているかも知れませんが、筋肉には大きく分けて2つの繊維があります。
それが赤筋(遅筋)と白筋(速筋)です。
赤筋は血管がたくさん通っており、酸素やエネルギーが供給されやすく、ミオグロビンと言う酸素を貯蔵するタンパク質も多く存在するため酸素やエネルギーを効率よく使えます。
その代わり筋繊維が小さいため大きな力を発揮する事は苦手です。
逆に白筋は血管やミオグロビンが少ないため持久力がないですが、筋繊維が太いため大きな力を発揮する事が出来ます。
実際にはこの間のピンク筋(Ⅱa繊維、FOG繊維とも言われる)があるのですが今回は省略します。
では腹筋、正確にはシックスパックを作る腹直筋はどちらの繊維で出来ているでしょう。
「腹筋は姿勢を保っていて持久力が必要だから体力のある赤筋でしょう!」
と思うかも知れませんが
答えは白筋が53.9%、赤筋が46.1%と意外な事に白筋の比率が多いんです。
もちろん個人差はありますが、実は腹筋も大きなパワーが求められる筋肉なんですね。
少し前までは上記の「姿勢を保つ筋肉だから赤筋優位」と考えられていたため、腹筋は低強度・高回数で行う方が良いとされてきましたが、実は間違いだったのです。
どちらかと言うと姿勢保持は腹直筋の奥にある腹横筋や内腹斜筋が担っており、腹直筋は走る・ジャンプなど素早く動いた際、腰椎が伸展(後ろに反る事)しすぎないように固定する役割の方が大きいため、ある程度強い力を発揮する必要があるんですね。
そのため、腹筋の回数をとにかく増やす筋トレをしている人は白筋繊維が発達せずなかなか腹筋が割れないと言う状況になっている可能性があります。
もし現在、あなたが低強度・高回数で毎日腹筋を行っているなら重りなどを用いて高強度・低回数を2〜3日に1回程度の腹筋運動を行うと結果が出る可能性があります。
とは言え、赤筋も46.1%で人によっては5:5位の比率なので週や月によって強度・回数を変えて全体的に鍛えるのが良いでしょう。
◆腹直筋の構造について理解していない
2つ目は腹直筋の構造について理解していない事です。
あなたは腹筋がどこからどこに付いているか知っていますか?
トレーナーをしていた時は「うーん、みぞおちの辺りからおへその所くらいかなー」と
答える方が結構いた様に思います。
しかし、実際は下記の通り恥骨から第5~7肋軟骨(教科書によって誤差あり)や剣状突起と下から上に向かって付いています。
解剖学を知っている人には当たり前かも知れませんが、「恥骨まで筋肉が続いている」「そもそも下から上に付いている」のは知らない人にとっては意外な事ですよね。
このことから腹直筋は体幹(腰椎)の屈曲、側屈、回旋に働きます。
そのため、皆さんが行うクランチなどの腹筋運動で腰を丸め、お腹に力を入れると鍛える事が出来ます。
しかし、もう一つ腹直筋には大きな役割があります。
それが骨盤の後傾です。
腹直筋が骨盤を後ろに傾ける作用があるのですが、多くの人は骨盤が前傾した状態で腹筋を行い効率が悪くなったり、一番筋肉に負荷がかかる遠心性収縮の際に腰椎を伸展させ、負荷を逃してしまいます。(腰椎が伸展すると骨盤は前傾方向に動くため)
特に運動を始めたばかりの方はガムシャラに腹筋に力を入れようとし、クランチであれば頭と体幹部を動かす事に必死で骨盤部分まで意識出来ていません。
そうなると折角頑張っていても効果は半減してしまうため、腹筋で骨盤を意識していなかった方は骨盤を意識してみましょう。
個人的にはお尻の穴を前に向ける様にお腹に力を入れると骨盤が後傾しやすいため、試してみて下さい。
◆腹筋種目がいつも同じ
3つ目は腹筋の筋トレ種目がいつも同じ事です。
先ほどの腹直筋の付着部を見てもらうと分かる通り、腹直筋は大きく体幹部の前面を走っています。つまり大きな筋肉なんですね。
となると1〜2種目の腹筋運動では全体の筋繊維を充分に鍛える事が出来ないのです。
腹筋の筋トレとなると皆さんクランチ、シットアップなどを行う人が多いですが、紹介した通り、腹直筋には体幹を屈曲させる作用の他に側屈、回旋させる作用もあります。
そのため体幹を丸める運動だけでなく、体を捻ったり横に動かしたりと様々な方向への動作が必要になります。
なので、腹直筋を鍛える場合は毎回でなくても良いので種目をこまめに変えて、色々な刺激を腹直筋に与えると効果的に鍛える事が出来ます。
◆腹直筋下部を鍛えるのが難しい
最後は腹直筋下部繊維についてのお話しです。
腹直筋は大きな筋肉のため、繊維が大きく上部と下部に分かれています。
3つ目の理由で色々な種目をして下さいと言いましたが、多くの人が行う筋トレはほとんど腹直筋の上部繊維(肋骨やみぞおち辺り)の筋トレで、腹直筋下部繊維は鍛えられていないのです。
それでは腹直筋全てを鍛えるのに充分ではないのです。
ただ、「じゃあ腹直筋下部を鍛えて下さい」と言ってもなかなか鍛えるのが難しく、筋トレをしても効果が出にくいのです。
なぜでしょう?
腹直筋下部が鍛えにくい理由は日常生活であまり使わない事、意識しづらい事の2つです。
まず日常生活では腹直筋下部を使う機会が腹直筋上部に比べ少ないのです。
腹直筋上部であれば朝ベッドから体を起こす時に使ったり、体を後ろにう〜んと伸ばす時に体が反りすぎない様に体幹を固定するなど普段から使う事が多いです。
しかし下部繊維は足あげ腹筋(レッグレイズ)など体幹部が固定された状態で足を動かす時に使われます。
そんな状況なかなか日常ではありませんよね?
(もちろん普段全く使われていない訳ではありません。)
また、腹直筋の下部繊維は「下腹痩せにはこの運動!」とネットやyoutubeなどで筋トレ方法を見かけますが、恐らく効果的に行えていない人も多いと思います。
確かにレッグレイズなど足を上げる運動などで腹直筋下部は鍛える事が出来るのですが、運動初心者などで慣れていない人は腹直筋ではなく足を上げる別の筋肉である腸腰筋や大腿直筋を使ってしまい、腹直筋下部の収縮が弱くなってしまいます。
人間は普段使っていない筋肉は上手く使う事が出来ず、他の筋肉で代償しようとしてしまうためこの様な事が起こってしまいます。
レッグレイズで腰が反ってしまうのは腹直筋下部繊維ではなく、腸腰筋で代償している代表的な例ですね。
この様な理由から腹直筋下部は鍛えるのが難しく、効率的に刺激が入りません。
対処法としては、まず「骨盤の動き」をマスターすることです。
腹直筋下部に刺激を入れるには体幹部を固定して骨盤側を動かす事が重要です。
そのため、上記の2つ目の理由としてあげた骨盤の動きがポイントになります。
多くの人は骨盤を上手く動かせず、腰椎で代償してしまうため、目的以外の筋肉に刺激が入ったり、腹直筋上部にしか刺激が入らなかったりします。
また骨盤を上手く動かせる事でスクワットやデッドリフトなど他の種目にも良い影響を与えます。
なので、まずは腹筋をする際骨盤の動きを意識して筋トレをしてみて下さい。
◆まとめ
今回は腹筋について詳しく解説してみましたが、いかがだったでしょうか?
意外と知らない事もあったんじゃないでしょうか。
腹筋が割れない理由を簡単にまとめると
①腹筋の繊維の知らない
対処法:白筋も多いため高負荷・低回数の種目も行う。
②腹筋の構造を知らない
対処法:骨盤の後傾を意識して腹筋を行う。
③種目が少ない
対処法:腹直筋は大きいため色々な種目を行う。
④腹直筋下部は鍛えづらい
対処法:骨盤の動きをマスターして、骨盤を動かす種目をする。
この様に運動内容を変えて頂ければ、徐々にあなたの腹筋はシックスパックに近づいていくでしょう。
折角、頑張って筋トレするなら効率よく結果を出していきましょう。
今回も記事を読んでいただきありがとうございました。
今回の様に一つの筋肉を解剖学的・運動学的な面から考えていく記事は個人的に書いていて楽しかったためまた書きたいと思っています。
もし「この筋肉について知りたい」と言う事があればコメントを残して頂けると記事にさせていただきます。
では、また次の記事でお会いしましょう。
人工甘味料って実際ダイエットにどうなの?という話
カロリー0、糖質0などの謳い文句の商品がコンビニやスーパーに並ぶ事は最近珍しくなくなって来ました。
個人的には某パーソナルジムでの糖質制限が流行した影響で皆が「糖質制限」「痩せるには糖質はNG」と考えるようになったのではないかと思います。
実際にダイエットと糖質は非常に重要な関係ですが、糖質制限ダイエットは良くありません。
しかし、糖質制限や糖質の本質の話は別の機会にお話しさせて頂くとして、今回は糖質カット商品に含まれている人工甘味料についての記事になります。
◆魔法の成分【人工甘味料】
スクラロース、アスパルテーム、サッカリンなど糖質カットの商品には人工甘味料が含まれています。
人工甘味料は砂糖の様に甘さを感じますが、栄養素が含まれていないため、口にしても血糖値も上昇せず、更にエネルギーも皆無なためカロリーも取らずに済みます。
この様な作用から人工甘味料は甘いのに糖質OFFでダイエットに、カロリーOFFで健康に良い様に聞こえる商品を作る事が出来る魔法の成分となりました。
しかし、実際にはむしろダイエットや健康に悪影響を及ぼすものではないかと分かってきました。
人工甘味料は戦後から食べ物に含まれるなど、皆さんが思っているよりも昔からあります。
そのため人工甘味料に対しての研究も昔から行われていたのですが、昔からの研究は「人工甘味料は身体に悪いのではないか」という研究が多く、ダイエットに関しての研究は最近になって行われる様になってきました。
◆淘汰された人工甘味料
さて昔からある人工甘味料ですが、研究の末に使用が禁止されたものもあります。
例えばチクロ、ズルチンと言った人工甘味料は戦後の経済状況が厳しい中で安くて甘い商品を作れるとして大人気になりましたが、発がん性が確認され現在では使用が禁止されています。
またサッカリンという人工甘味料も一度は発がん性の疑いから、使用が禁止されたのですが、その後の実験で発がん性は低いと判断されたため、現在でも使用されています。
しかし、発がん性の疑いは少ないものの日本では発がん性の懸念のため、食べ物には使用されておらず歯磨き粉に使用される物がほとんどです。
またアスパルテームやスクラロースなどその他の人工甘味料も国によって使用の基準が定められたりしており、人工甘味料は発癌物質である懸念が今もぬぐい切れていない様です。
◆糖質0=太らない甘み?
少し話が逸れてしまいましたが、本題に入りましょう。
人工甘味料はダイエットに効果的か否かという話ですが、「効果的ではない」というのが私の考えです。
理由としてまず上げられるのが「血糖値の上昇がない」という点です。
「いやいや、血糖値が上がらないのは良い事じゃないか」「血糖値が高くなるから太るんでしょう?」と思うかも知れませんが、食事をすると人間は血糖値が上がる事が普通なのです。
血糖値が上がる事で膵臓からインスリンが分泌され、血糖値が徐々に下がることで満腹感を感じるのですが、人工甘味料の場合甘みを感じインスリンを出したものの血糖が上がっておらず、通常の血糖値から更に下がってしまいます。
そうするとむしろ摂食中枢が刺激され、食べたはずなのに更に食べ物を求め過食になり太ってしまいます。
更に「甘いのに血糖値が上がっていない状態」が続くとインスリンの反応が悪くなり、実際に血糖値が上がった時もインスリンを分泌しなくなります。
インスリンは血中のブドウ糖を肝臓や筋肉に送る作用があるため、インスリンが出ないと筋トレや運動時にすぐに疲れる、充分なパフォーマンスが発揮出来ない、ブドウ糖を筋肉に取り込めず筋トレの効果が薄くなるなどの影響が出て来ます。
血糖値が下がらないという事は糖尿病に向かって真っしぐらな事は明らかですよね。
実際に日本でこんな実験が行われました。
糖尿病のない33歳から55歳の男性2037人を2003年から2010年の7年間追跡したものです。7年間で糖尿病を発症したのは170人で週に人工甘味料が入ったダイエット飲料水を週に237ml以上飲む人は飲まない人に比べ、70%も糖尿病発症率が高かったそうです。
アメリカでも同じ様な実験がいくつか行われており、2015年に発表されたメタ分析でも人工甘味料が糖尿病を引き起こす原因ではないかと考えられています。
人工甘味料が生化学的に与える影響としてはGul,Sarah S,et al "inhibition of the gut enzyme intestina alkaline phoaphatase may explain how aspaetame promotes glucose intolerance and obesity in mice."Applied Physiology Nutrition and Metabolism 42,1 (2016):77-83という論文でアスパルテームが分解され生じるフィニルアラニンが小腸型アルカリ性ホスファターゼ(ALP)の働きを阻害するため代謝に異常が生じる。
と結論づけました。
ALPは肝臓や小腸などから分泌されるもので、人体の代謝の中でも特に脂質代謝に影響を与えていると考えられています。
つまり簡単にいうと人工甘味料が脂質代謝の阻害をするため肥満になりやすいということです。
また、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムKなどの人工甘味料は代謝異常症や脂質代謝の恒常性(身体が正常な状態に戻ろうとする作用)の破壊が報告されています。
更にシカゴの内科学会では「ダイエット飲料を日常的に摂取している人は通常の人よりも5倍肥満になりやすい」といった発表もされています。
◆他の味が感じなくなる人工甘味料の恐怖
人工甘味料は砂糖を使わずに甘さを感じられるものです。
その甘さは砂糖の数百倍であり、少量でも強い甘みを引き起こす事が出来ます。
例えばアスパルテーム・アセスルファムKは砂糖の200倍の甘さであり、アセスルファムKはダイエット飲料などに良く使用されています。
スクラロースであれば砂糖の600〜700倍の甘さであり、熱や酸に強いためお菓子に多く含まれています。
最近、登場した新しい人工甘味料のネオテームは砂糖の1万倍の甘み、アドバンテームはなんと砂糖の2万倍の甘みがあるそうです。
「やりすぎでしょ…」と思うかも知れませんが、実際に使用されているものもあるみたいです。
これだけの甘味を持ったものを日常的に口にしていたらどうなるでしょう?
人工甘味料で得た甘みが普通になり、自然の甘さの果物や天然成分のお菓子などでは満足出来ず食べすぎてしまうことに繋がってしまいます。
また味を感じるのは舌にある味蕾という部分なのですが、甘みにより味蕾の閾値(物事、今回なら味に反応する基準みたいなもの)が高くなり、他の味も感じにくくなります。
そうなると普段の料理も濃い味を求める様になり、食事内容が偏ったり塩や醤油、ソースなどをたっぷりかけてしまい肥満に繋がることになります。
更に濃い味の食事を日常的に食べることで高血圧や心疾患など他の病気を引き起こす可能性も高くなってしまいます。
◆結論
以上の結果から人工甘味料は健康やダイエットに向かないのではないかと考えております。
また人工甘味料は「人工」というだけあって自然なものではなく、人体にとっては異物なため、そもそもに有益な影響は与えないと考えて良いでしょう。
ただ人工甘味料は長期的に見ればダイエットや健康に悪影響ですが、唯一メリットを上げるとすれば、糖尿病患者への精神的な支えになる可能性があるということです。
現在、私は総合病院で働いており様々な患者様を見ているのですが糖尿病の患者様の食事は味気なく美味しそうではありません。
内科で入院していなくても糖尿病であれば糖尿病食になってしまいます。
味気ない食事のため、看護師の目を盗みお菓子を食べようとする方がいたり、食事自体を残してしまう方もいます。
そうなれば運動効果も出にくくなり更に入院が長引いてしまいます。
ただでさえ入院中は楽しみがないのに数少ない食事の楽しみまで奪われると精神的に辛いものがあるでしょう。
そんな時人工甘味料であれば血糖値に影響せず甘みを楽しむ事が出来ます。
もちろん取りすぎは良くありませんが、身体だけでなくメンタル面で考えた時、人工甘味料を上手く使う事で患者様の苦しみを少しでも和らげる事ができる可能性があるのではないかと考えています。
これはやや特別な例ですが、やはり基本的には健康な人やダイエットする人は人工甘味料を避ける方が良いのではないかと思います。
では、今回は人工甘味料についてのお話しをさせて頂きました。
少しでもあなたの健康やダイエットに役立てば幸いです。
今日も記事を読んでいただきありがとうございました。