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腹筋を頑張っても効果が出ない4つの理由

トレと言えば腹筋

男性であれば「バキバキに割れたシックスパック」

女性であれば「スリムでペタンとした腰回り」に

憧れる事があるでしょう。

 

実際、私がトレーナーをしている時も初めのカウンセリングで

「腹筋を鍛えたい」と言うクライアントがとても多くいました。

 

特に男性であれば「夏までに格好いい腹筋を手に入れてプールで女性の注目を浴びたい」と思うでしょう。

事実、筋肉量が多い男性は魅力度が高く女性にモテる事が報告されているので、シックスパックに割れた腹筋があればモテる可能性が高くなります。

 

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かし、気合を入れて腹筋を頑張ったとしてもなかなか効果が出ない事も多くありませんか?

 

もちろん、筋トレを始めたてだったり、そもそもの脂肪量が多い場合は腹筋以外の所からアプローチしていく必要がありますが、筋トレ歴もそこそこあり脂肪も多くない、けど何故か腹筋が割れない。

こんな方結構いるんじゃないでしょうか。

 

そんな時「腹筋は痩せれば出てくるからもっと脂肪を落とす必要がある」と有酸素運動を多く取り入れてみたり、「腹筋は回数が大切だから」とレップ数を増やしてみたり、様々なアプローチをしている人がいます。

 

間違いではないですが筋トレをそこそこやっている場合、問題はそこではない事が多いです。

むしろ、有酸素運動をする事で全体的な筋肉のボリュームが落ちたり、腹筋の回数を増やして腰を痛めたりする危険があります。

 

今日はそんな腹筋を頑張っていても効果が出ない4つの理由とその対処法をお伝えしたいと思います。

※今回は腹筋=腹直筋の事と考えて記事をご覧下さい。

 

◆腹直筋の繊維について理解していない

 

1つ目の理由は腹直筋の繊維について理解していないことです。

 

筋トレをしている人は知っているかも知れませんが、筋肉には大きく分けて2つの繊維があります。

それが赤筋(遅筋)と白筋(速筋)です。

 

赤筋は血管がたくさん通っており、酸素やエネルギーが供給されやすく、ミオグロビンと言う酸素を貯蔵するタンパク質も多く存在するため酸素やエネルギーを効率よく使えます。

その代わり筋繊維が小さいため大きな力を発揮する事は苦手です。

 

逆に白筋は血管やミオグロビンが少ないため持久力がないですが、筋繊維が太いため大きな力を発揮する事が出来ます。

 

実際にはこの間のピンク筋(Ⅱa繊維、FOG繊維とも言われる)があるのですが今回は省略します。

 

では腹筋、正確にはシックスパックを作る腹直筋はどちらの繊維で出来ているでしょう。

 

「腹筋は姿勢を保っていて持久力が必要だから体力のある赤筋でしょう!」

と思うかも知れませんが

答えは白筋が53.9%、赤筋が46.1%と意外な事に白筋の比率が多いんです。

もちろん個人差はありますが、実は腹筋も大きなパワーが求められる筋肉なんですね。

 

少し前までは上記の「姿勢を保つ筋肉だから赤筋優位」と考えられていたため、腹筋は低強度・高回数で行う方が良いとされてきましたが、実は間違いだったのです。

どちらかと言うと姿勢保持は腹直筋の奥にある腹横筋や内腹斜筋が担っており、腹直筋は走る・ジャンプなど素早く動いた際、腰椎が伸展(後ろに反る事)しすぎないように固定する役割の方が大きいため、ある程度強い力を発揮する必要があるんですね。

 

そのため、腹筋の回数をとにかく増やす筋トレをしている人は白筋繊維が発達せずなかなか腹筋が割れないと言う状況になっている可能性があります。

もし現在、あなたが低強度・高回数で毎日腹筋を行っているなら重りなどを用いて高強度・低回数を2〜3日に1回程度の腹筋運動を行うと結果が出る可能性があります。

 

とは言え、赤筋も46.1%で人によっては5:5位の比率なので週や月によって強度・回数を変えて全体的に鍛えるのが良いでしょう。

 

◆腹直筋の構造について理解していない

2つ目は腹直筋の構造について理解していない事です。

 

あなたは腹筋がどこからどこに付いているか知っていますか?

トレーナーをしていた時は「うーん、みぞおちの辺りからおへその所くらいかなー」と

答える方が結構いた様に思います。

 

しかし、実際は下記の通り恥骨から第5~7肋軟骨(教科書によって誤差あり)や剣状突起と下から上に向かって付いています。

 

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剖学を知っている人には当たり前かも知れませんが、「恥骨まで筋肉が続いている」「そもそも下から上に付いている」のは知らない人にとっては意外な事ですよね。

 

このことから腹直筋は体幹(腰椎)の屈曲、側屈、回旋に働きます。

そのため、皆さんが行うクランチなどの腹筋運動で腰を丸め、お腹に力を入れると鍛える事が出来ます。

 

しかし、もう一つ腹直筋には大きな役割があります。

それが骨盤の後傾です。

 

腹直筋が骨盤を後ろに傾ける作用があるのですが、多くの人は骨盤が前傾した状態で腹筋を行い効率が悪くなったり、一番筋肉に負荷がかかる遠心性収縮の際に腰椎を伸展させ、負荷を逃してしまいます。(腰椎が伸展すると骨盤は前傾方向に動くため)

 

特に運動を始めたばかりの方はガムシャラに腹筋に力を入れようとし、クランチであれば頭と体幹部を動かす事に必死で骨盤部分まで意識出来ていません。

 

そうなると折角頑張っていても効果は半減してしまうため、腹筋で骨盤を意識していなかった方は骨盤を意識してみましょう。

個人的にはお尻の穴を前に向ける様にお腹に力を入れると骨盤が後傾しやすいため、試してみて下さい。

 

◆腹筋種目がいつも同じ

3つ目は腹筋の筋トレ種目がいつも同じ事です。

 

先ほどの腹直筋の付着部を見てもらうと分かる通り、腹直筋は大きく体幹部の前面を走っています。つまり大きな筋肉なんですね。

 

となると1〜2種目の腹筋運動では全体の筋繊維を充分に鍛える事が出来ないのです。

腹筋の筋トレとなると皆さんクランチ、シットアップなどを行う人が多いですが、紹介した通り、腹直筋には体幹を屈曲させる作用の他に側屈、回旋させる作用もあります。

 

そのため体幹を丸める運動だけでなく、体を捻ったり横に動かしたりと様々な方向への動作が必要になります。

なので、腹直筋を鍛える場合は毎回でなくても良いので種目をこまめに変えて、色々な刺激を腹直筋に与えると効果的に鍛える事が出来ます。

 

◆腹直筋下部を鍛えるのが難しい

 

後は腹直筋下部繊維についてのお話しです。

腹直筋は大きな筋肉のため、繊維が大きく上部と下部に分かれています。

 

3つ目の理由で色々な種目をして下さいと言いましたが、多くの人が行う筋トレはほとんど腹直筋の上部繊維(肋骨やみぞおち辺り)の筋トレで、腹直筋下部繊維は鍛えられていないのです。

それでは腹直筋全てを鍛えるのに充分ではないのです。

 

ただ、「じゃあ腹直筋下部を鍛えて下さい」と言ってもなかなか鍛えるのが難しく、筋トレをしても効果が出にくいのです。

 

なぜでしょう?

腹直筋下部が鍛えにくい理由は日常生活であまり使わない事意識しづらい事の2つです。

 

まず日常生活では腹直筋下部を使う機会が腹直筋上部に比べ少ないのです。

腹直筋上部であれば朝ベッドから体を起こす時に使ったり、体を後ろにう〜んと伸ばす時に体が反りすぎない様に体幹を固定するなど普段から使う事が多いです。

 

しかし下部繊維は足あげ腹筋(レッグレイズ)など体幹部が固定された状態で足を動かす時に使われます。

そんな状況なかなか日常ではありませんよね?

(もちろん普段全く使われていない訳ではありません。)

 

また、腹直筋の下部繊維は「下腹痩せにはこの運動!」とネットやyoutubeなどで筋トレ方法を見かけますが、恐らく効果的に行えていない人も多いと思います。

 

確かにレッグレイズなど足を上げる運動などで腹直筋下部は鍛える事が出来るのですが、運動初心者などで慣れていない人は腹直筋ではなく足を上げる別の筋肉である腸腰筋や大腿直筋を使ってしまい、腹直筋下部の収縮が弱くなってしまいます。

 

 

 人間は普段使っていない筋肉は上手く使う事が出来ず、他の筋肉で代償しようとしてしまうためこの様な事が起こってしまいます。

レッグレイズで腰が反ってしまうのは腹直筋下部繊維ではなく、腸腰筋で代償している代表的な例ですね。

 

この様な理由から腹直筋下部は鍛えるのが難しく、効率的に刺激が入りません。

 

対処法としては、まず「骨盤の動き」をマスターすることです。

腹直筋下部に刺激を入れるには体幹部を固定して骨盤側を動かす事が重要です。

そのため、上記の2つ目の理由としてあげた骨盤の動きがポイントになります。

 

多くの人は骨盤を上手く動かせず、腰椎で代償してしまうため、目的以外の筋肉に刺激が入ったり、腹直筋上部にしか刺激が入らなかったりします。

また骨盤を上手く動かせる事でスクワットやデッドリフトなど他の種目にも良い影響を与えます。

なので、まずは腹筋をする際骨盤の動きを意識して筋トレをしてみて下さい。

 

◆まとめ

 

今回は腹筋について詳しく解説してみましたが、いかがだったでしょうか?

意外と知らない事もあったんじゃないでしょうか。

 

腹筋が割れない理由を簡単にまとめると

①腹筋の繊維の知らない 

対処法:白筋も多いため高負荷・低回数の種目も行う。

 

②腹筋の構造を知らない

対処法:骨盤の後傾を意識して腹筋を行う。

 

③種目が少ない

対処法:腹直筋は大きいため色々な種目を行う。

 

④腹直筋下部は鍛えづらい

対処法:骨盤の動きをマスターして、骨盤を動かす種目をする。

 

この様に運動内容を変えて頂ければ、徐々にあなたの腹筋はシックスパックに近づいていくでしょう。

折角、頑張って筋トレするなら効率よく結果を出していきましょう。

 

今回も記事を読んでいただきありがとうございました。

今回の様に一つの筋肉を解剖学的・運動学的な面から考えていく記事は個人的に書いていて楽しかったためまた書きたいと思っています。

もし「この筋肉について知りたい」と言う事があればコメントを残して頂けると記事にさせていただきます。

 

では、また次の記事でお会いしましょう。