広背筋に効く筋トレランキングトップ5
「背中に鬼神が宿ってる!」
これは一言で背中のたくましさを表した言葉で、ボディビルのコンテストでは有名な台詞です。
ボディビルダーの様に筋骨隆々になりたい訳ではないけれど、男性であれば厚くたくましい頼り甲斐のある背中は憧れますよね。
しかし、実際に背中を鍛えている人は他の筋トレに対して少ない様な気がします。
私がトレーナーをしていた時も「筋肉を付けたいんです!」と言ってジムに来た人の大体が腹筋、腕、胸に付けたいと言う人が多く、「背中を鍛えたいんです!」と言ってくる人はほとんどいなかった様に思います。
理由は単純に腹筋、腕、胸は分かりやすく「筋肉がついていたらカッコイイ」と思う箇所だからと思います。
実際に腕と胸は筋肉が付きやすく、変化を実感出来るため筋トレ初心者の方は継続のモチベーションを高めるために鍛えるのは効果的かなと思います。
ですが、そうして筋トレを続けていくと筋トレに慣れてきた時にこう思ってくるんです。
「背中も筋肉ついてたらカッコイイ」
そう思い、背中の筋トレを始める人が増えてきます。
しかしここで困難に打ち当たるのです「全然背中に効かせられない」「思ったより筋肉が付かない・・・」
特に筋肥大しやすい大胸筋や上腕二頭筋、上腕三頭筋を集中して鍛えていた人は予想以上に変化を感じれず、背中のトレーニングをやめてしまう事も多いです。
この壁を乗り越えられるかでカッコイイ背中を手に入れられるかが決まってくるのですが、この様な壁があるため必然的に背中を鍛える人はベンチプレスやアームカールをする人よりも少なくなってしまっているのです。
私自身もトレーニングを始めた事は背中に効かせる事は苦手でしたし、筋トレの指導をしている時もクライアントから「1人じゃ効いてる感じがわからない」なんて言葉を良く聞きました。
確かに背中の筋肉、主に広背筋はトレーニング時の動きが見えないため意識しづらいですし、大胸筋に比べ筋肥大もしにくいためなかなかモチベーションが上がりませんよね。
また少し専門的な話になりますが、広背筋への刺激は肩甲骨の動きや上腕骨頭(腕の骨の関節部分、脱臼で抜けるのはここ)の引き込み具合によって変わるため、広背筋に効率よく刺激を与えるには、思っている以上に身体を上手く使う必要があります。
しかし、だからと言って広背筋を鍛えカッコイイ背中を手に入れる事を諦めたくはないですよね?
今日はそんな広背筋を鍛えるのに効率良いトレーニングは何かをいくつかの研究を元に個人的な解釈でランキングを付けて発表します。
またそのトレーニングの時に何を注意する必要があるのかを解説していきます。
◆筋電図を用いた広背筋トレーニング
1つ目の研究は2000年にドイツで行われた研究です。
これは筋電図を用いて各トレーニングでどれだけ広背筋が収縮したかを調べたものです。
そのトレーニング は
①ラットプルダウン(フロント、ナロー、逆手)
②ラットプルダウン(バック、順手、持つ幅は肩幅)
③ラットプルダウン(フロント、順手、持つ幅は肩幅)
④ダンベルロウ(アンダーグリップ)
⑥シーデットロウ(ニュートラルグリップ)
の6つの種目での筋肉の反応をみました。
贅沢を言うのであればこの時、上腕二頭筋や菱形筋群など周囲の筋肉の反応も見たいものですが、今回は広背筋のみです。
結果はこの様になりました。
この研究では①のラットプルダウン(フロント、ナロー、逆手)で一番筋収縮が起こっているとなりました。
しかし、他のラットプルダウンとそこまで差はなく、またダンベルロウとも大きな差はありませんでした。
ただ、シーデットロウではラットプルダウンに比べ、30%程度活動量が少なかったです。これはシーデットロウのフォーム的に三角筋の後部繊維や菱形筋、僧帽筋に筋収縮が起こりやすかったためと考える事ができます。
この研究だけ見ると一番良い種目はラットプルダウンで、手幅や持ち方はそのまで大きな差はないため、やりやすい方法でやるのが効果的となり、全体的に刺激を入れたいならシーデットロウが良いとなります。
◆早稲田大学での研究
次は2009年に早稲田大学で行われた研究です。
これちらの研究では
・アップライトロウ
・シーデットロウ
・フロントラットプルダウン(持つ幅は肩幅)
・バックラットプルダウン(持つ幅は肩幅)
・ベントオーバーロウイング
の5つの種目で広背筋の活動量について調べました。
個人的にアップライトロウ(主に肩、三角筋のトレーニングで行う種目)でも調べているのが面白いと思いました。
こちらの研究では広背筋だけではなく、上腕二頭筋と僧帽筋の活動量も調べてくれています。
しかも、僧帽筋に関しては上部、中部、下部に分けて調べてくれてるため、とても良い研究だと感じました。
この研究でも一番広背筋が活動していた種目はラットプルダウンでした。
またラットプルダウン ではフロント、バックどちらに引いても活動量に有意差はありませんでした。
そして先ほどの研究と違い、今回のものではシーデットロウでもラットプルダウンと広背筋の活動量は大きく違いはありませんでした。
またフォームが難しいとされているベントオーバーロウでは、上記2種目にやや劣るものの広背筋への刺激は高かったとなりました。
しかし、アップライトロウでは上腕二頭筋の活動量が大きく、広背筋はほとんど活動していなかったという結果になりました。
アップライトロウはロウイングの種目ですが、主に肩を鍛える種目のため当然の結果かなと思います。
今回の研究だけで言うと
1位、2位ラットプルダウン
3位シーデットロウ
4位ベントオーバーロウ
5位アップライトロウ
となりました。
また今回の研究では広背筋の他に僧帽筋の活動量も見ているため、そちらにも少し触れてみましょう。
筋トレをしていない人にとっては馴染みの無い筋肉かも知れませんが、僧帽筋は首から肩甲骨の内側まで付いている大きな筋肉です。
ボディビルダーの首がモコッと出ているのは僧帽筋が発達しているからなんです。
僧帽筋上部はボディビルダーや首への衝撃が強いラグビー選手やプロレスラーには重要な筋肉ですが、一般の人にとっては鍛えすぎると肩こりの原因になるためそこまで必要ではありません。
しかし、僧帽筋中部繊維・下部繊維は姿勢の安定や肩甲骨の動きのコントロールをするため筋力が落ちてくると肩に痛みが出たり、姿勢が悪くなります。
そのため、中部繊維・下部繊維は鍛えるメリットは大きいです。
そんな僧帽筋も広背筋と同様にラットプルダウンとシーデットロウで活動量が大きい結果になりました。
ですが、一番上部・中部・下部繊維の全体に活動が大きかったのはベントオーバーロウとなりました。
理由はベントオーバーロウは前傾姿勢を保持し、肩甲骨を内転(内側に締める)させる必要があります。
そのため、僧帽筋が常に収縮している必要があるため活動量が大きくなったのでは無いかと考えます。
今回の研究からわかった事はやはり広背筋をを鍛えるにはラットプルダウンが効果的だが、初めの研究と違いシーデットロウでも広背筋は有効に鍛える事が出来る。
広背筋だけなく僧帽筋も鍛えたいならベントオーバーロウが効果的となりました。
しかし、先ほども言いましたがベントオーバーロウはフォームの獲得が難しく、我流でやると肩や首ばかりに力が入ったり、腰痛になる可能性があるため筋トレ初心者はラットプルダウンかシーデットロウでも充分かと思います。
◆ラットプルダウンの持ち方
2つの研究から広背筋にはラットプルダウンがかなり優秀なトレーニングでは無いかと考えられますが、手幅や持ち方がバラバラでどんな持ち方が一番良いかが気になるところです。
そこで色々調べていると持ち方について調べているものがあったため紹介します。
まずは2002年に海外(どこの国かは分かりませんでした)で行われた研究では、ラットプルダウンのグリップをフロント、バックどちらに引くかで広背筋の活動量が変化し、フロントに引く方が効果的と報告されています。
しかし、この研究は先ほどの早稲田大学の研究内で否定されているため、除外して考えても良さそうです。
また他の研究ではラットプルダウンの手幅や持ち方だけを調べたものがありました。
まず比較したのはラットプルダウンを全てフロントで行い、手幅のみナロー・ミディアム・ワイドグリップの3つで行い。広背筋の活動がどう変化するか調べたものです。
この研究でも広背筋の他に上腕二頭筋、僧帽筋、刺下筋の活動量も調べられています。
結果はどの幅で持っても広背筋、上腕二頭筋、僧帽筋、刺下筋に活動量の変化は見られませんでした。
強いて言えば、ワイドグリップで持った時に若干僧帽筋の活動が大きい程度です。
次に調べた研究では
・ワイドグリップでのフロントラットプルダウン
・ワイドグリップでのバックラットプルダウン
・逆手、ナロー、フロントラットプルダウン
・Vバーでのナローラットプルダウン
での広背筋の活動量を調べたものです。
この研究ではこの4種目をコンセントリックとエキセントリックに分けて調べてくれており、非常に有益な研究です。
ちなみにコンセントリック(求心性)は筋肉を縮める時の動き、エキセントリック(遠心性)は筋肉に力を入れているが重さに耐えれず、力が入った状態で伸ばされている動きです。
エキセントリックを意識的に行う事で筋肥大に効果的と言われています。
そして結果はコンセントリック、エキセントリック共に【ワイドグリップでのフロントラットプルダウン】が一番広背筋が活動したとなりました。
またコンセントリックではその次に「逆手・ナローグリップ・フロントラットプルダウン」と「ワイドグリップのバックラットプルダウン」がほぼ同じ数値で活動量が高かったです。
エキセントリックでは「ワイドグリップのバックラットプルダウン」が2番目に活動が強く、その次に「逆手・ナローグリップフロントラットプルダウン」となりました。
◆広背筋のオススメトレーニングベスト5
さて、長くなりましたがいよいよ広背筋に効果的なトレーニングベスト5の発表です。
第1位
【ワイドグリップのフロントラットプルダウン】
理由は
・多くの研究で大きな活動量が示されている。
・僧帽筋や菱形筋など広背筋以外の筋肉への刺激も多いため、全体的に背中を鍛えやすい。
・腕が肩より上に上がるため、肩関節や肩甲骨の可動域を獲得しやすい。
・動きの幅が大きいため、最初から最後まで筋収縮を入れる事が出来る。
と言う事でワイドグリップのフロントラットプルダウンが第1位になりました。
第2位
【ワイドグリップのバックラットプルダウン】
第一位のワイドグリップのフロントラットプルダウンとほぼ同じ理由ですが、頭より後ろにグリップを引くため、初心者はフロントよりも僧帽筋上部繊維に収縮が入りやすく、広背筋に効かせるのが少し難しいかも知れないと言う理由で2位になりました。
第3位
【シーデットロウ】
理由は
・初めの研究では活動量は低かったが、他の研究では充分高い数値を示していた。
・広背筋の他の筋肉(特に僧帽筋中部・下部や菱形筋)にも効果的
・肩甲骨の動きが意識しやすい。
です。
特に3番目の「肩甲骨の動き」は背中のトレーニングだけでなく、他のトレーニングでも必要になってくるのですが、トレーニング初心者ではなかなか意識するのが難しいです。
しかし、シーデットロウでは肩甲骨を寄せる動きが意識しやすいため、私がトレーナーをしている時も肩甲骨の動きを意識してもらうためにラットプルダウンよりも先に指導していました。
個人的にはトレーニング初心者に最初にやって欲しい背中のトレーニング第1位ですが、肩甲骨の動きが内転(内に寄せる)がメインで、上方・下方回旋(肩甲骨の回転の動き)が少ないため広背筋の活動量がラットプルダウンよりもやや劣るため第3位です。
第4位
【ダンベルロウ(ワンハンドロウ)】
理由は
・肩甲骨の動きは意識しやすいが、他の種目に比べ広背筋の活動量が物足りない。
・腕が垂れ下がった状態なのでローテータカフ(回旋筋腱板)などの肩甲骨周りの筋肉は使いやすい
・左右交互に行うため時間がかかる。
などから第4位となります。
第5位
【ベントオーバーロウ】
理由は
・フォームの獲得に時間がかかる。
・初心者は肩に力が入り、広背筋に効かせにくい
・下手に行うと腰に負担がかかるリスクがある。
今回は初心者向けの広背筋トレーニングのため、残念ながらフォームが難しいベントオーバーロウは第5位となりました。
今回はこの様な結果になりました。
やはりどの研究でも成績が良かったラットプルダウンが1・2トップでしたね。
また今回のランキングには入れていませんが、1位2位以外のラットプルダウン(Vバーやナローグリップ)はどれも大きな差はありませんでした。
広背筋の活動量的には1位2位に続くレベルでしたが、そうなるとランキングが全てラットプルダウンで埋まってしまうため今回は除外としました。
【ワイドグリップのフロントラットプルダウン】
【ワイドグリップのバックラットプルダウン】以外のものはどんな手幅、持ち方をしても有意差はないため、やりやすいやり方でやって頂いて問題ないです。
Vバーでのラットプルダウンのみやや広背筋の活動性は低い様です。
今回は広背筋のトレーニングに効果的な種目の紹介をいたしました。
なかなか効かせる事が難しい広背筋のトレーニングですが、まずはやるだけで活動量が多いものをして徐々に効かせられる様にしていきましょう。
では、今回も記事を読んで頂きありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう。