カフェインによるトレーニングパフォーマンスの向上
【カフェインはトレーニング効果を増強させる】
と聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
カフェインと聞くと眠気覚ましのイメージがある様に神経を興奮させる作用があります。
そのカフェインは実際にトレーニングにどう言った影響があるのか、今日はそんなお話です。
◆カフェインと運動パフォーマンス
カフェインの作用と運動パフォーマンスの関係はとても昔から研究されています。
カフェインは現在、【パフォーマンス向上薬物】とされており、世界アンチドーピング機構(WADA)の禁止薬物リストには掲載されてはいないものの、「使用を監視する必要があるもの」とされています。
そんなカフェインはどの様な効能をもたらすのでしょうか。
2001年に掲載されたThe metabolic and performance effects of caffeine compared to coffee during endurance exerciseという研究では対象者全員に30分間自転車を漕いでもらい、その後45分のタイムトライアルを行いましたl。
対象者はそれぞれ「カフェイン」「カフェイン入りコーヒー」「カフェイン抜きコーヒー」「プラセボ群」を飲む4つのグループに分けられました。
この時、「カフェイン」と「カフェイン入りコーヒー」のグループが摂取するカフェインの量は同じになる様にしました。
結果は「カフェイン」と「カフェイン入りコーヒー」が大幅に自転車を漕ぐ速度が上昇しました。
また自転車を漕ぐパワーも「カフェイン」「カフェイン入りコーヒー」で有意に高かった様です。
そしてカフェイン抜きコーヒー」「プラセボ群」の間に有意差がなかったと報告されています。
この研究から運動前(この研究では1時間前)にカフェインまたはカフェイン入りコーヒーを飲むことで持久性のパフォーマンスが向上する可能性があると考えられます。
◆カフェインとパワー
カフェインが筋持久力や全身持久力を向上させるかも知れないとわかりましたが、筋力、パワーはどうでしょうか。
2018年にこんな研究がされています。
Effects of caffeine intake on muscle strength and power: a systematic review and meta-analysis
この研究では1RMの最大筋力と垂直とびによる筋力発揮(筋パワー)を調べました。
結果はカフェインを摂取したグループで最大筋力と筋力発揮(筋パワー)が有意に高かったとなりました。
またこの研究のその他の結果として特に上半身の筋肉でパフォーマンスの向上が大きかったそうです。
また2020年に行われたメタ分析(Acute Effects of Caffeine Supplementation on Movement Velocity in Resistance Exercise: A Systematic Review and Meta-analysis)では、カフェイン摂取により【運動平均速度】【運動時のピーク速度】【軽度・中等度・高度の全ての負荷での運動速度】【レジスタンストレーニング時の筋力】【レジスタンストレーニング時の持久力】が向上した。
と言った結論を出しています。
これらの研究からカフェインはトレーニングやスポーツ時のパフォーマンスの向上が期待できると考えていいでしょう。
◆カフェインの本当の効能
これらの研究からカフェインはトレーニングパフォーマンスを向上させる効果があるとわかりました。
しかし、「カフェインは筋力を強くするから」と言って、カフェインを多く取ることで筋肉はつくのでしょうか?
これは違います。
筋肉の材料はタンパク質とビタミンA、Cとブドウ糖であるため、どれだけカフェインを取っても身体は強くなりません。
では、何故カフェインを摂取するとパフォーマンスが上がるのでしょうか。
それは【痛みの知覚】が低下するからです。
カフェインについての研究では筋力は向上しても筋肉量が向上したというものはありません。
(もちろんカフェインの研究で筋肥大するほど長期間経過を辿ったものはないですし、筋肥大に関しての研究もされていないので当然ですが、それでもパフォーマンスが上がっています。)
カフェインの研究では筋力や持久力と共に【痛みの知覚】つまり、疲労感や筋肉痛の程度も測定されているものが多いです。
そしてカフェインを摂取したグループはこの痛みの知覚も低下しているとされています。
また2013年の研究であるThe effect of caffeine ingestion on delayed onset muscle soreness.では2つのグループに分け、片方のグループにトレーニング1時間前にカフェインを摂取させ、限界まで筋肉を追い込みその後24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、120時間後に0から10までの段階で痛みを評価する視覚的アナログスケールを用いて評価しました。
この研究では、体内から成分が抜ける時間を空けて、グループを入れ替えて再度同じことを行いました。
結果はカフェイン摂取グループで有意に2日後、3日後の痛みが軽減しました。
更に追加でカフェインを摂取する事で痛みの軽減が大きくなり、トレーニングの最大反復が増加しました。
この結果からトレーニング前や筋肉痛があるときにカフェインを摂取する事でトレーニングのレップ数や反復回数、挙上可能重量が増加し、多少疲労があってもトレーニングの質の低下を抑えトレーニングすることができると言えます。
また、この研究では筋肉の損傷マーカーであるCK値(クレアチン・キナーゼ)の量は差がなかったとされています。
つまり筋出力や持久力が増加しても血中CK値は変化がなく、やはりカフェインは筋肉に作用すると言うよりも神経に作用し痛みを軽減、興奮作用によって神経の活性化をすることでパフォーマンスを向上させていることが分かりました。
◆まとめ
今回はカフェインとトレーニングについてお話ししてきました。
まとめると
【カフェインはトレーニング効果を向上させる】
【運動強度・負荷量や有酸素、無酸素運動に関わらず効果があった】
【しかし、筋肉に作用せず神経の興奮などの作用だった】
【研究ではカフェインはトレーニング1時間前に取ると効果があったものが多かった】
この様なまとめになります。
アスリートであればカフェインはドーピング検査に関係するため摂取には細心の注意が必要ですが、単にトレーニング時に普段よりも強度を高くしたい人や疲労があるけどトレーニングしたい人は運動前にカフェインを摂取することでトレーニング効果が高まります。
ただ注意して欲しいのは夜トレーニングする場合、カフェインとトレーニングで神経の興奮が高くなり、睡眠の質が悪くなり翌日に疲れが強くならない様にしてください。
せっかくトレーニングで追い込んでも質の悪い睡眠で身体が回復しなければ意味がないです。
今回も記事を読んでいただきありがとうございました。
カフェインはサプリメント出なくてもコーヒーでも効果があるため、日々のトレーニングで更に追い込みたい方は今日の記事を参考にしてみてください。
また次回の記事でお会いしましょう。