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【意識してた?】エキセントリックの時間による効果

皆さんは「コンセントリック」「エキセントリック」という言葉を聞いたことはありますか?

 

この場でも何度かご紹介しているものですが、簡単に言うとコンセントリックは筋肉が縮んでいく状態。

 

エキセントリックは筋肉が縮もうとしているけど、重さに負けて伸びながら力が入っている状態です。

またエキセントリックは「ネガティブ」「遠心性収縮」と言われることもあります。

 

 

このエキセントリック収縮はトレーニングにおいて効果を出すために重要なポイントです。

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◆エキセントリックを意識する

 

レーニングを始めたばかりの方であればバーベルやダンベルを一生懸命挙げようとすると思います。

 

まだまだ重さに慣れていないため、重量を挙げることに精一杯になるのは仕方ないですが、筋肉に強い刺激を与えるにはバーベルやダンベルを下げる際にゆっくりと下げていき、筋肉に効かせることが大切になってきます。

 

 

別の記事でも紹介しましたが、トレーニングのセット法にもエキセントリックのみを意識する 「ネガティブオンリー」というセット法もあるくらいエキセントリック局面を意識することはトレーニングに欠かせないものです。

 

レーニングセット法の記事はこちら↓

 

rehaphysical.hatenablog.com

 

 

んなエキセントリック収縮ですが、コンセントリック収縮よりも40%も強い力が出るとも言われています。

 

では、そんなエキセントリック収縮ですが本当に意識・強調することでトレーニング効果は高まるのでしょうか?

 

2017年に出されたChronic Adaptations to Eccentric Training: A Systematic Reviewというレビュー論文ではエキセントリック収縮を意識・強調することでコンセントリックを意識するよりも筋力・パワー・スピード・パフォーマンスが向上し筋機能や筋腱複合体の適応が促されたとされています。

 

 

やはりエキセントリック収縮はトレーニングにおいて重要な要素と考えられるため、サッとバーベルやダンベルを下げずにしっかりと意識して下ろす様にした方が良いということですね。

 

 

さて、前置きが長くなりましたがここからが今回のメインのお話です。

 

◆エキセントリックの収縮時間は?

 

キセントリックがトレーニング効果を出すのに効果的だと分かったところでこんな疑問が出てきます。

 

「エキセントリックはゆっくり動かすほど効果的なの?」

 

エキセントリック収縮を意識するためには少しゆっくりとバーベルを下ろす必要があります。

 

しかし、「ゆっくり時間をかけるほど効果はあるのか」「ベストな時間はどれくらいなのか」を考えたことのある方は多くないと思います。

 

 

今日はそんなエキセントリック収縮時の時間についてお話していきます。

 

まずは2017年のThe Effects of Eccentric Contraction Duration on Muscle Strength, Power Production, Vertical Jump, and Sorenessという研究

 

この研究では3つのグループに対象者をランダムに振り分け「筋力」「パワー発揮」「筋肉痛」について変化を調べました。

3つのグループではエキセントリック局面を2秒、4秒、6秒行う様にグループを分けました。

その際に全てのグループでコンセントリック収縮は2秒、静止を1秒と統一しエキセントリックのみ時間の変化をつけました。

なお、この研究での筋力はスミスマシンによるスクワットで測定されており、1RMの80〜85%の強度で6回反復する運動を4セット行い4週間後に効果を判定しました。

 

 

 

結果は

「筋力は全てのグループで向上した」

「垂直跳びは2秒のグループで向上傾向にあり、4秒のグループでは変化なし、6秒のグループで有意に減少した。」

「また筋肉痛は全てのグループで起こったが、2秒のグループで有意に強かった。」

という結果になりました。

 

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に2019年のRate of Force Development and Muscle Architecture after Fast and Slow Velocity Eccentric Trainingという研究を見てみましょう。

 

 

この研究では2つのグループに対象者を分け、高速スクワットと低速スクワットに分けて、「1RMの強さ」「外側広筋(太腿の外側の筋肉)の筋厚」「力の発生率(等尺性レッグプレス)」を調べました。

また高速スクワットグループはエキセントリック局面を1秒未満、低速スクワットグループはエキセントリック局面を4秒としました。

 

 

結果は高速スクワットで1RMが約14%向上、低速スクワットで約5.4%向上しました。

また力の発生率は高速スクワットグループでのみ10g前後増加し、繊維束も増加しました。

しかし、外側広筋の筋厚は低速グループでのみ増加し、約6%の変化が見られました。

 

 

◆エキセントリック局面時間の考察

 

れらの実験からエキセントリック局面の時間によって身体への変化に違いがあるということが分かります。

 

 

まず1秒や2秒で素早く動作をした際には力の発生率が向上し、垂直とびなどの筋パワーを要する種目に向上が見られました。

これはストレッチショートニングサイクル(伸張ー短縮サイクル)と言われる筋肉の瞬発的な収縮力が鍛えられるためです。

 

2つ目の研究で高速スクワットグループが筋肉の繊維束が増加したのも筋肉の伸び縮みが繰り返されたためでしょう。

 

 

逆に遅いグループでは垂直とびなどのパワー系の種目のパフォーマンスが低下しました。

これは遅い動作のためストレッチショートニングサイクルがうまく行われず、力の立ち上がりが遅かったため爆発的なパワーを生み出すことが出来なかったためでしょう。

スポーツ動作やパワー向上を目的にトレーニングする際にはエキセントリック収縮局面は短い方が良いでしょう。

 

 

しかし、遅いグループでは筋厚の向上が見られました。

これはエキセントリック局面を遅い動作で行うことで筋肉の微細な損傷が起こりやすくなり筋肥大が起こったと考えられます。

 

またエキセントリックの速度に関わらず1RMの重力が向上したため筋力に関してはどの速度で行っても効果は出ると考えられます。

ただ、Rate of Force Development and Muscle Architecture after Fast and Slow Velocity Eccentric Trainingでは高速スクワットのグループで1RM筋力の向上が低速スクワットグループよりも高いため神経的な面も考慮すると筋力も少し速度は早い方が良いかも知れません。

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◆まとめ

 

回のまとめです。

エキセントリック収縮については

・1〜2秒の短いエキセントリックではパワーの向上に効果的、スポーツ動作の向上や最大挙上重量を上げたい場合は短い時間の方が良い

・4〜6秒の長いエキセントリックでは筋肥大に効果的、ただしパワーに関して負の効果が出やすい

・筋力向上にはどの速度でも効果が出たが、短い時間の方が効果が高いかも

という結論になりました。

 

 

なんとなく行っていたエキセントリック収縮の時間を変えるだけでこれだけ効果に差があるため、少し意識して頂くとより効率よくトレーニングの結果を出すことが出来ます。

 

 

今回も記事を読んでいただきありがとうございました。

これからエキセントリック収縮の時間もコントロールして、しっかりとトレーニンング効果を高めていきましょう。

 

では、また次回の記事でお会いしましょう。