早食いは肥満の元、ゆっくり食べるだけで痩せる理由
「早食いだと太りやすい」なんて言葉聞いたことありませんか?
ダイエットする人はどこで聞いたかわからないけど、聞き覚えがある言葉だと思います。
私もパーソナルトレーナーとしてダイエット指導をしていた時は食事はゆっくりする様に指導していました。
しかし、何故早く食べると太るのか?ゆっくり食べれば本当に痩せるのか?疑問に思いますよね。
今日はそんな食べる早さを変えるだけでダイエット効果があるのかを説明したいと思います。
◆早食いの人は5kgも太りやすい!?
早速結論ですが、早食いの人はゆっくり食べる人よりも平均して5kg以上も太っている事がわかっています。
これは国立健康・栄養研究所などの研究グループが全国の女子大生を対象に行った調査なのですが、全国22大学の18歳の女子生徒1744人を対象に身長・体重・食事内容・食べる早さ、生活習慣についてアンケートを実施しました。
その中で摂取カロリーが極端に多い人、少ない人を除く1695人のデータを解析しました。
食べる早さは「とても早い」「比較的早い」「普通」「比較的遅い」「とても遅い」の5段階で自己申告してもらいました。
また客観性を持たせるために、よく一緒に食事をする友人にも答えてもらうと9割り以上が本人が答えた食事スピードとほぼ一致していました。
解析の結果、身長と食事スピードの相関関係はありませんでした。
一方、体重と食事スピードは相関関係があり、「とても早い」人の平均体重は55.4kg「とても遅い」人の平均体重は49.6kgとなんと5.8kgも体重差がありました。
また体重には身長の影響もあるため、身長を含めた差を見るためBMI(身長に対する体重の割合)を調べると「とても早い」人は平均22.0、「とても遅い」人は平均19.6でした。
BMI22.0はそこまで太っている訳ではありませんが、ゆっくり食べる人の方が痩せている結果になりました。
◆早食いが太りやすい生理学的な理由
では何故食事スピードが早い人は遅い人に比べ太りやすいのでしょう?
それは食事量にあります。
食事スピードが早い人ほど食事量が多くなりやすいため、ゆっくりと食べる人よりも振りやすくなります。
食事量が多くなる理由は満腹中枢の働きです。
人間の食欲は脳の視床下部にある満腹中枢と接触中枢によりコントロールされており、お腹が空くと接触中枢が刺激され食欲が沸き、満腹になると満腹中枢が刺激され食欲が抑制されます。
満腹中枢は食事によって吸収されたブドウ糖により血糖値が上がる事で刺激されます。
しかし、この血糖値 が上昇し満腹中枢が刺激されるまで約20分かかるとされています。
つまり食事開始から20分は満腹感を感じにくいため、食事スピードの早い人はなかなか満腹にならず食べすぎてしまうのです。
また【インスリン分泌を高める】と理由もあります。
インスリンは筋肉と脂肪組織にブドウ糖を運ぶ役割があり、脂肪組織にブドウ糖が運ばれると脂肪になります。
食事スピードの早い食事をする事で急激に血糖値が上昇し、それに伴いインスリンが大量に分泌されます。
そうなると必要以上に脂肪組織にブドウ糖が運ばれてしまい、脂肪の合成が多くなってしまい、結果的に太ってしまいます。
1、2食ではあまり影響はないですが1日3回の食事全てがこの様な事が状態だと太りやすくなるのも頷けます。
そのほかには【噛む回数】も太りやすさと関係しています。
噛むという行為はヒスタミンなどの食欲抑制物質の分泌を亢進させ、満腹中枢がより早く刺激される事がわかっています。
またよく噛む事で食欲増進物質の分泌を抑制することもわかっています。
食事スピードが早い人は必然的に噛む回数が少なくなるため、遅い人よりも更に食欲が増してしまいます。
余談ですが、よく噛む事は味覚の敏感さにも関係しているためよく噛む人は味をしっかり感じる事ができ薄味でも満足できます。
しかし、早食いの人は味覚が鈍感になりやすいため濃い味を求め、そこで余計にカロリーを摂取してしまいます。
また、上記の調査の食事内容では食事早食いの人は食物繊維の少ないものや単品もの(ラーメン、丼もの)をよく食べる傾向があり、ゆっくり食べる人は食物繊維の多く含まれたものを食べる傾向にあったとのこと。
それだけでも太りやすさが変わってくるのが分かりますね。
◆食事内容よりも食事スピード早いだけで太る。
先ほど「食事スピードが早い人はそもそも太りやすいものを食べる傾向にある」とお話ししましたが、こう思った人はいませんか?
「じゃあ食事スピードに関係なく、食べるのが早い人は食事の内容がダメなだけなんじゃないか」
こう思った人は研究結果が出てるからと鵜呑みにせず疑う目で見れているため素晴らしいと思います。
そこでこんな研究が2002年に日本でされています。
35歳〜69歳の男女4742人の食べる早さと食事量、運動習慣、飲酒習慣を答えるアンケートを実施して、データ分析を行いました。
そうすると、男性では食事スピードが早い人は食事量も多い事が分かりましたが、女性では食事スピードと食事量に関連は見られませんでした。
そこで食べる量の違いを除去、また運動習慣の影響も除去し単純に「食事スピード」と「肥満」の関係のみで再度データ分析を行いました。
その結果、食事スピードが「普通」の男性の平均体重64.8kgに対し「とても早い」人は3.9kg体重が重く68.7kg、「とても遅い」人は3.0kg軽い61.8kgとなりました。
また女性では「普通」の人は平均52.8kgに対し、「とても早い」人で3.2kg重い56.0kg、「とても遅い」人は2.7kg軽い50.1kgとなりました。
こちらもBMIのデータを算出した結果、初めに紹介した研究を同じく食事スピードと相関が見られました。
この結果から同じ食事量でも食事スピードが早いだけで太りやすいと分かりました。
そのほかの研究では2015年に発表されたRelationship between short-term changes in eating speed and the risk of metabolic syndrome among adultsという論文で早食いの人ほどBMIが高く、腹囲の数値も大きかったと報告があります。
◆適切な食事スピード、噛む回数は?
ここまで早食いに対して脂肪が増えやすいと説明してきました。
では、どの様に食事スピードを意識すればダイエット効果があるのでしょうか。
これについては新潟大学医歯学総合病院の伊藤先生が文献のレビューを行っています。
・「食事スピードが早い・遅い」に明確な定義はない。
・20〜30分以上かける事が理想とされている。
・簡単にまとめると噛む回数が10回以下だと肥満率が高くなる。
・噛む回数の指導をし噛む回数が20回以上になると肥満率が減少。
・噛む回数は20〜30回が良く、理想は30回以上を目指す。
といった結果になりました。
食事スピードに関しては満腹中枢が刺激され始める20分以上かけて食べるのがやはり効果的なんですね。
また噛む回数は生理学的な研究が難しいですが、統計的に10回以下はダメ、20回以上からダイエット効果が出てくるみたいです。
また正確な研究内容は見つからなかったのですが、早食いに関しては大阪大学での研究で早食いの人は3倍太りやすい。岡山大学の研究では早食いの人は4.4倍肥満になりやすいと発表されているものもありました。
食べる早さだけでこれだけ肥満になる確率が高く、逆にゆっくり食べるだけでダイエット効果があるならやらない理由はありませんよね。
「仕事で忙しくてどうしても昼ごはんは早く食べないといけない」と言う人は朝・夕だけでもゆっくり食事する事を心がけて見てください。
本日も記事を読んでいただきありがとうございました。
また次回お会いしましょう。