フィットネスLab

トレーナー×医学の知識でダイエット、筋トレを効率よく結果を出す情報をお届け

筋肥大のメカニズムと5つの要素

キムキになりたい」「かっこいい身体を目指したい」そう思って筋トレを始めた方も多いと思います。

私もそうでしたが特に若い世代の方は筋肉をつけて引き締まった身体に憧れを持ちますよね。

 

筋肉をつけたい理由は人それぞれですが、男性であればモテたいと言うのが本音ではないでしょうか?

事実筋肉量が多い人はモテる確率が高まると言う論文も発表されています。

もちろん純粋に筋肉をつけること自体に喜びを感じている人もいるでしょう。

 

またスポーツ選手のような締まった身体、ボディビルダーのようなムキムキな体型、フィジークの選手のようなゴリゴリであり締まった身体など人によって目指す体型も様々です。

 

そのどの体型を目指すにしても必要なのが「筋肉をつけること」もっと簡単に言うと「筋肥大」です。

 

f:id:rehaphysical:20210501130725j:plain

 

今日はその「筋肥大」についてのお話です。

 

◆ジムのトレーナーは「筋肥大はなぜ起きる?」を説明できますか?

 

トレをしていると段々筋肉が大きくなり、気がつくと服がきつくなっている事があります。

それは筋トレをした結果、筋肉が肥大しており身体のサイズが大きくなっているのですが、その筋肥大はどのようにして起こるか知っていますか?

 

恐らく「筋トレで筋肉が傷ついて、それが治るときに前と同じ刺激に負けないように筋肉がより強く回復する」と何となく思っているのではないでしょうか?

 

 

それは正しいのですが、何だかぼんやりした説明と感じませんか?

もちろん身体についての知識がない方はそれで十分ですが、ジムのトレーナーなどがこのレベルの説明では少し物足りないです。

 

皆さんが通っているジムのトレーナーさんは筋肥大のメカニズムを詳しく説明できるでしょうか?

この説明が全てではありませんが、やはり身体の勉強をしている者としては知っていて欲しいですよね。

 

 

なので今日は筋肥大が起こる5つのメカニズムを解説していきます。

もし現在「このトレーナーさんは本当に知識があるのか」や「パーソナルトレーニングをしようかな、どこのジム・どんな人が良いのかな」と考えている方は今日の説明を聞いて、トレーナーに「筋肥大のメカニズムを詳しく教えて」と聞いてしっかりとした返答が返ってくれば信頼性を判断する一つの材料になると思います。

 

f:id:rehaphysical:20210501130844j:plain


 

◆筋肥大のメカニズム

 

は初めに筋肥大について基礎的な知識をお話しします。

少し専門的な話になるため、軽く読み流して次の項目に行って頂いても大丈夫です。

 

まず初めに知っていただきたいのは、筋肉の構造です。

筋肉は筋繊維の集まりで出来ているのは一般の方でも知っていると思います。

しかし、筋肉を細かく見ていくと、筋繊維は筋原繊維と言う細い束の集まりなのです。

更にその筋原繊維もとても細いミオシンフィラメントとそれよりも細いアクチンフィラメントで構成されています。

 

 

このミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが滑り合う事で筋肉は収縮されます。

そしてこの2つは筋タンパク質から出来ています。

この2つのフィラメントが合成される事で筋肥大が起こるため筋肉にはタンパク質が必要と言われているのです。

 

 

この筋タンパク質は24時間365日代謝され「分解と合成」を繰り返しています。

基本的には分解と合成が釣り合った状態のため、私たちの筋肉量は維持されています。

そのため、筋肥大させるにはこの筋の合成が分解を上回る必要があります。

 

では、どうすれば筋の合成は促進されるのでしょうか?

 

筋肉はα運動ニューロン(いわゆる運動神経)からの命令で収縮し身体を動かします。トレーニングなどで筋繊維が収縮する刺激が筋合成を促進するスイッチを入れます。

 

筋肉を収縮する際に筋肉にある筋小胞体と言う箇所からカルシウムイオン(Ca2+)が放出されます。そして細胞の成長を促すインスリン様成長因子(IGF-1)の分泌が増加します。

このインスリン様成長因子(IGF-1)は睡眠不足になると分泌が抑制されると以前の記事で紹介しましたね。

※その記事も貼っておきます。

 

 

rehaphysical.hatenablog.com

 

れらのカルシウムイオンとインスリン様成長因子(IGF-1)によって活性化されるのが筋肥大に重要と言われている哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)です。

この哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)は筋合成を促進させる物質を活性化させ、筋合成を抑制する物質を不活性化させます。

 

 

つまりトレーニングによって、身体の中の筋合成を促進させる物質が活性化する事で筋肉は大きくなるのです。

では、その筋肉を大きくさせる要素はどう言ったものがあるのででしょうか。

 

 

◆筋肥大のための5つの要素

筋肥大に必要なのは以下の5つです。

・メカニカルストレス

・筋肉へのダメージ

代謝

・酸素環境

・ホルモン

 

1つずつ解説していきましょう・

 

●メカニカルストレス

 

カニカルストレスとは、重いものを持った時に筋肉や腱に加わる力のことです。

筋肉を肥大させるにはこのメカニカルストレスをしっかりとかけなければいけません。

レーニングを1RMの60〜80%の負荷で行うと筋肥大すると言うのは、このメカニカルストレスをかけるためです。

 

これについては「サイズの原理」や「総負荷」に対する考えもあり、最近では必ずしも高負荷である必要はないのですが、それは長くなるため別の記事でお話しします。

 

また常に同じ負荷でトレーニングすると身体が慣れてきてしまいメカニカルストレスが弱くなってしまうため、筋肥大を行うには徐々に負荷を上げていく必要があります。

これを過負荷の原理と言います。

f:id:rehaphysical:20210501131212j:plain

 

●筋肉へのダメージ

 

レーニングによって筋繊維が微細な損傷や断裂を起こします。

この損傷や断裂は怪我ではないため、数時間〜数日で回復します。

 

人間は環境への適応力が生物の中でも抜群に優れているため、ダメージを受けた筋肉が回復する際に「同じストレスに負けないようにしよう」となり筋繊維の強度が増します。

それによって筋肥大が促進されるのです。

この過程が皆さんが思っている筋肥大のイメージかなと思います。

 

また肉離れなどをイメージしてもらうと分かりやいですが、筋繊維は伸ばされる時に損傷を起こしやすいです。

そのため筋肉が伸びながら収縮する遠心性収縮(エキセントリック、ネガティブ動作とも言います)を意識して行う事で筋肉の成長を促しやすくなります。

 

筋肉へのダメージと聞いて「筋肉痛」をイメージしてしまいますが、筋肉痛は必ずしも筋肥大に必要ではないため筋肉痛が来ないからと効果がないわけではないため、安心してください。

 

代謝

 

肥大には代謝も重要です。

代謝と言うと栄養素のことも入ってしまうのですが、そうなるとキリがないため今回は乳酸の代謝についてです。

 

乳酸と聞くと疲労物質をイメージする方も多いと思います。

確かにトレーニングを行うと乳酸は発生します。

数年前までは乳酸が疲労の原因とされていました。

 

しかし、現在ではむしろ乳酸は疲労回復」「筋肥大」に重要な物質だとわかってきています。

 

乳酸は無酸素運動、つまり瞬発的な激しい運動を行うと生成されるのですが乳酸が溜まってくると脳にその情報は伝わります。

そうすると脳の下垂体と言う場所から成長ホルモンが分泌されます。

 

そうする事で筋の合成が促進され筋肥大しやすくなります。

また乳酸は体内にエネルギーがないと生成されにくいため、トレーニング前は糖質を取る事で筋の分解を防ぐとともに乳酸の生成を促し筋肥大に繋がります。

 

 

以下の様に乳酸によって筋肥大が促されたという研究もいくつもされているため、「乳酸が溜まると疲れやすい」と言っているトレーナーがいればちょっと勉強不足かな?と思います。

https://www.ueharazaidan.or.jp/houkokushu/Vol.32/pdf/report/099_report.pdf

 

●酸素環境

 

し前に加圧トレーニングが流行ったことを覚えているでしょうか?

加圧トレーニングとは腕や脚を圧迫し血流を制限して運動するものです。

血流は酸素を運んでいるため血流を制限すると筋肉が低酸素状態になります。

 

 

低酸素状態になると筋合成を促進する物質の活性を促すサイトカインという物質が増加し、筋肥大が起こります。

実際にBangsbo J,Gollnick PD,Graham TE,Juel C,Kiens B,Mizuno M,Saltin B,Anaerobicenergy Production and O2Deficit Debtlelationship during exhaustive exercise in human J Physiologic422:539-559 1990という論文でも

「低酸素状態でのトレーニングは筋横断面積を優位に増加させた」や

「寝たきりの人に1日2回血管閉塞を起こると筋萎縮が優位に減少した」とされています。

 

 

f:id:rehaphysical:20210501131412p:plain

 

た血管を圧迫した低酸素状態では圧迫を開放した際に一気に血流が流れ、その時に反応性の高い活性酸素種が作られ筋肥大を促すシグナルになると考えられています。

この理論を使ったのが加圧トレーニングです。

 

私がパーソナルトレーナーの学校に通っていた学生の頃も、同級生がセルフ加圧トレーニングとしてチューブで腕を締め、トレーニングをしていて筋肥大もとてもしていました。

 

この様に酸素の状況によっても筋肥大は促進されます。

しかし、私自身加圧トレーニング自体はあまりオススメしません。

 

理由としては血管を圧迫しているため、血管への負担が大きく意図的に血流を阻害するため静脈還流量が不均等になり心臓への負担も大きくなるからです。

加圧=心臓・血管に負担がかかる研究結果はないですが、通常のトレーニングでも十分効果があるため変にリスクを取る必要はないと考えます。

 

 

何より私の同級生の様にセルフで締めるなど危険性が高いため絶対にやめましょう。

もし、加圧トレーニングを行う場合は、専門の資格を持った指導者の元で行いましょう。

 

●ホルモン

 

肥大にはホルモンが重要とされています。

筋肥大を促すホルモンとして「成長ホルモン」「男性ホルモン(テストステロン)」「インスリン様成長因子(IGF-l)」などはあります。

f:id:rehaphysical:20210501131448p:plain

 

れらは高強度なトレーニングを行うことで分泌されやすくなり筋肥大に効果的と言われています。

 

「トレーニング後30分以内はゴールデンタイムだからすぐにプロテインを飲む必要がある!」と言われるのもこの考え方のためですね。

 

実際にはトレーニング後の成長ホルモンなどは筋合成に関与は小さいのですが、トレーニングによって筋肥大を促進するホルモンが分泌されるのは確かなため、徐々に負荷量を向上させていきましょう。

 

レーニング後のプロテイン摂取は効果的かどうかはこちらの記事を参考にしてください。

 

 

rehaphysical.hatenablog.com

 

 

◆まとめ

肥大のメカニズムとそれに伴う5つの要素についてお話ししてきました。

なるべくわかりやすく解説したつもりですが、いかがだったでしょうか?

 

 

普通にトレーニングするだけならここまで詳しく知らなくても「徐々に重量を上げると筋肉は強くなる」という認識で問題ないですが、トレーナーさんの知識などを見極める時などに今回の知識を使っていただけると、より良い指導者を探す1つのポイントになると思います。

 

 

明日からトレーニングする際に今回紹介した「メカニカルストレス」「筋肉へのダメージ」「代謝」「酸素環境」「ホルモン」のことを意識しつつトレーニングを行なってみてください。

 

本日も記事を読んでいただきありがとうございます。

また次回お会いしましょう。