フィットネスLab

トレーナー×医学の知識でダイエット、筋トレを効率よく結果を出す情報をお届け

アルコールが筋肉に及ぼす影響

「筋トレを頑張っているけど運動後はビールが飲みたくなる」

 

頑張ってトレーニングをした後はこんなことを思ったことはありませんか?

 

普段お酒を飲む方であれば仕事が終わって「ジムに行くのがめんどくさい」という気持ちに打ち勝って一生懸命トレーニングをしたけど、達成感を感じたと共にキンキンに冷えたビールが恋しくなる事もあると思います。

 

そこで「折角筋トレしたし我慢しよう」と自分に打ち勝つことができれば良いのですが、「頑張ったしちょっと位は良いか」と誘惑に負けてしまう方もいるでしょう。

 

f:id:rehaphysical:20210508232038j:plain

 

日はそんな方のために【アルコールと筋肉】についてお話しします。

この記事を読んで少しでも「お酒を飲みたいけど、筋肉にとっては良くないよな」とお酒を我慢する理由として使って頂ければと思います。

 

またアルコールが健康に及ぼす影響はこちらの記事にまとめてあるため、興味があれば読んで頂きたいと思います。

 

rehaphysical.hatenablog.com

 

 

◆アルコールが筋肉に及ぼす影響①

 

ルコールを取ると筋肉に良い影響を与えないことは何となく想像できると思います。

 

では具体的にアルコールは筋肉にどの様な影響を及ぼすのでしょうか?

 

まず初めに筋肉に与える影響として【筋タンパク質の合成を阻害する】ということが挙げられます。

 

2013年に発表されたDirect central nervous system effect of alcohol alters synthesis and degradation of skeletal muscle proteinという論文ではアルコールを飲むと筋合成が減少し、筋分解を増加させるとされています。

更に筋肥大に重要なアミノ酸であるロイシンの機能もアルコールによって損なわれるとされています。

 

f:id:rehaphysical:20210507223652j:plain

※Effect of alcohol on muscle protein synthesis. In vivo-determined protein synthesis was determined using 3H-phenylalanine in rats administered alcohol (ethanol; EtOH) either ICV or intragastrically (IG). Gastrocnemius (A) and soleus (B) were sampled from each group. Values are means ± SEM; n = 8–9 per group. For the same time point (e.g. 1, 6 and 24 h), values with a different letter are statistically different (P < 0.05), compared with time-matched control values (open bars). As there were no significant differences between rats infused ICV with aCSF and those administered saline IG, values from these groups were combined and presented as a single ‘control’ group for this and other endpoints.

 

また別のEthanol impairs post-prandial hepatic protein metabolism.という研究ではアルコールを70g摂取すると24%筋肉の合成が阻害されるとされています。

 

 

この研究結果からアルコールを摂取すると単純に筋合成が抑制されトレーニングの効果が薄くなることが分かります。

 

では他にはどの様な影響があるのでしょうか?

 

◆アルコールが筋肉に及ぼす影響②

 

ルコールによって受ける影響として次にあげられるのは【コルチゾールの増加】です。

 

コルチゾールとは別名ストレスホルモンと言われており、血圧を上げたり、免疫を抑えるなどマイナスの働きをすることもありますが、血糖値を上げて低血糖から身体を守ってくれたり、身体の炎症を抑えてくれたりする機能があります。

 

そのためコルチゾール自体は適切に働けば身体に守ってくれる良い影響を与えるのですが、筋肉に関してはこちらもマイナスの働きをします。

 

コルチゾールの作用の一つとして【筋肉を分解してエネルギーを作る】というものがあります。

 

こちらのAlcohol consumption and hormonal alterations related to muscle hypertrophy: a reviewといった研究では体重1kgあたり1.75gのアルコール を摂取するとコルチゾールが大幅に増加するとされています。

 

体重1kgあたり1.75gというとかなりの深酒ではありますが、やはりアルコールは筋肉に良い影響は与えなさそうです。

 

f:id:rehaphysical:20210508232205j:plain

 

◆アルコールが筋肉に及ぼす影響③

 

ルコールが筋肉に及ぼす影響の3つ目は【テストステロン】についてです。

 

テストステロンは男性ホルモンの一つです。

男性ホルモンだからと言って女性にないわけではないのですが、男性に多くこのホルモンが筋肥大に関わっており筋合成を促進してくれるものです。

 

 

ある研究では体重1kgあたり1.5gのアルコールを摂取するとテストステロンが23%減少する。1.75g摂取すると27%もテストステロンが減少するという結果が出ています。

更に減少したテストステロンの回復には36時間以上かかるとされており、1日以上筋合成が少ない状態が続いてしまいます。

 

こうなるとかなり筋肉をつけるためには効率が悪くなってしまいます。

 

ただテストステロンに関してはThe effect of alcohol on testosterone concentrations in alcohol-preferring and non-preferring rat linesといった研究やAlcohol consumption and hormonal alterations related to muscle hypertrophy: a reviewといった研究で「少量のアルコールであれば摂取後にテストステロンの量が変わらない・もしくは増加する」といった結果が出ているため【アルコール=テストステロンが減少する】とは言い切れませんが、他の影響を見てみてもトレーニングの効果を低下させたくない場合はアルコールを控えた方が良さそうです。

 

以上3つがアルコールが筋肉に及ぼす影響でした。

おさらいすると

【筋合成の抑制・筋分解の促進】

コルチゾールの増加】

【テストステロンの減少】

 

 

これらがアルコールが筋肉に直接的に関わる影響でした。

 

しかし、直接的でなくともアルコールは他の影響を与えます。

 

次はアルコールが及ぼす間接的な影響を紹介します。

 

◆アルコールによる間接的な影響①

 

ず1つ目が【脱水】です。

 

アルコールは利尿作用があるため体内から水分が抜けていきます。

これはしっかりと水分を補給すれば問題ないのですが、水分が抜けた状態だと筋力低下や持久性の低下を招いてしまいます。

 

更に脱水状態だと血流も悪くなり身体中に栄養や酸素が行き届かなくなり、パフォーマンスの低下や筋合成のための栄養が少なくなるなどの影響も出てきます。

f:id:rehaphysical:20210508232312p:plain
 

 

◆アルコールによる間接的な影響②

 

2つ目はビタミンB1亜鉛の不足】です。

 

アルコールを体内で分解するにはビタミンB1亜鉛が必要です。

ビタミンB1の働きとして糖質をエネルギーに変えるというものがあります。

しかし、ビタミンB1が不足しているとその働きがうまく利用出来ず、エネルギーを作り出すために筋肉を分解してしまいます。

 

そうなると折角トレーニングしていても効果は少なくなってしまいます。

 

また亜鉛筋肉の修復や新陳代謝に関わってくるため亜鉛が不足するとパフォーマンスの低下や疲労が回復しないなどの影響が出てきてしまいます。

 

◆アルコールによる間接的な影響③

 

3つの影響は【睡眠の質が低下する】というものです。

 

アルコールは睡眠にも影響してきます。

アルコールを分解するために身体は働き続ける必要があります。

 

そのため、深い眠りにつくことが出来ず浅い睡眠になってしまい結果筋肉の修復や栄養を身体中に届けることができなくなります。

 

「お酒を飲むとよく眠れる」という人がいますが、アルコールによって誘発される睡眠のスイッチは通常のものとは異なります。

これについてはここで説明すると長くなってしまうため、別の記事にしようと思いますが、Reviewing alcohol's effects on normal sleepという研究でもアルコールによってレム睡眠が阻害されるということが分かっています。

 

 

◆その他の研究と適切な摂取量

 

まかな説明は以上となりますが、最後に少しだけ他の研究とどのくらいの量なら適切な量かをお話ししたいと思います。

 

紹介したいのはAlcohol myopathy: impairment of protein synthesis and translation initiationという研究なのですが、こちらはアルコールの大量摂取についての研究です。

 

アルコールを飲むと筋分解などが促進される可能性が高いと説明しましたが、アルコールを一度に大量に飲む行為

 

いわゆる「ガブ飲み」をしてしまうとただ単に筋合成の低下、筋分解の促進による筋力

 低下だけでなく、急性的に筋繊維の部分的壊死が起こることが報告されています。

 

 

しかも壊死するのは、筋肥大や筋パワー発揮に重要な速筋繊維(白筋繊維)のため、筋肥大を目指している方はアルコールの大量摂取は控えた方が良さそうです。

 

更に慢性的な症状として、筋萎縮や筋の衰弱が起こるという報告もされています。

これはアルコールによってテストステロンの合成量が低下し、筋合成が抑制された結果だと考えられます。

 

◆アルコールの適切な摂取量

 

ルコールが筋肉に悪影響を及ぼすことは今までの説明で分かっていただけたかと思います。

 

しかし、「それでもお酒を飲みたい」と言う方もいるでしょう。

 

なので最後にアルコールの適切な摂取量をご紹介します。

ちなみに健康に関してはアルコール自体が悪影響という結果が出ているため、健康を意識する場合はアルコール摂取量は0に近い方が良いです。

その記事をまとめたものがこちら

↓↓↓↓↓↓↓↓

 

rehaphysical.hatenablog.com

 

 

る研究では体重1kgあたり1gかそれ以下のアルコールであればテストステロン値に変化はないとされています。

また石井らは「究極のトレーニング 最新スポーツ生理学と効率的カラダづくり」のなかでビールを1日に1.2ℓ程度であれば影響はないとされています。

 

またModerate and Large Doses of Ethanol Differentially Affect Hepatic Protein Metabolism in Humansという研究の中ではアルコール摂取量が1日に28g以下ではテストステロン値やコルチゾールにほとんど影響はなかったとされています。

 

1日の摂取量が28g以下ということは350mlの缶ビール2本程度なので、これ位なら飲んでも大丈夫とこの研究からは考えることができます。

 

しかし、他の研究では3週間毎日30~40gのアルコールを摂取しているとテストステロン値が低下したと報告されているため、「基準値以下なら毎日飲んでも良い」という訳ではなさそうです。

 

更にこれらの研究は海外のものであり、被験者も外国の方です。

そのため日本人よりも体格が良い人が被験者である可能性が高く、我々日本人の基準値はもう少し少ない可能性が高いです。

 

また厚生労働省が定める1日のアルコールの摂取量は20g以下のため、こちらの数値も参考にしてみてください。

f:id:rehaphysical:20210506174344j:plain

 

◆総まとめ

 

の記事を書き始めた時は「今日は少し短い記事かな」と思っていたのですが、書いてみたらかなりの量になってしまいました。

 

最後におさらいとして総まとめです。

【アルコールの直接的な影響】

・タンパク質の合成低下、分解促進

・テストステロンの低下

コルチゾールの分泌促進

 

【アルコールの間接的な影響】

・脱水

ビタミンB1亜鉛の不足

睡眠障害

 

【その他】

・一度に大量に飲むと筋繊維が壊死する可能性がある。

・適切な量は1日28g以下(日本人なら20g以下の方が良いかも)

・基準値以下でも毎日飲むとテストステロンなどに影響が出る可能性がある。

 

 

今回のまとめとしてはこんな感じでしょうか。

 

アルコールは気分をリラックスさせてくれるもののため、ストレスの緩和にも繋がります。

お酒の席でコミュニケーションを取る人もいるでしょうし、付き合いもあるため絶対に飲むなとは言いません。

 

 

しかし、筋肉や健康にとってはやはり好ましくないもののため、出来たら控える方が良いでしょう。

特に自宅で1人で飲むのが習慣になっており、「なかなか筋肉つかない、脂肪が減らない」と悩んでいる方は今回の記事を読んで少しでもお酒を控える気になっていただければ幸いです。

 

 

では、今回も記事を読んでいただきありがとうございました。

また次回の記事でお会いしましょう。