大胸筋に最も効果的なトレーニングは?【種目編】
トレーニングを始めた頃はとにかく大胸筋を鍛えていた私ですが、皆さんはどうでしょう?
トレーニング初心者の方はベンチプレスをトレーニングの中心にしている方も多いのではないでしょうか。
特に男性であれば分厚くてたくましい胸板に憧れます。
私もトレーニングを学び始めた18歳の時は大胸筋の発達を感じてトレーニングのモチベーションが上がっていました。
現在はしっかりと全身のトレーニングを行なっていますが、それでもやはり大胸筋を鍛えることは好きかなと思っています。
今日はそんな男性であれば誰でも憧れる分厚い胸板を作る大胸筋のトレーニングは何が最も効率がいいのかをお話ししていきます。
※同じ様に以前「広背筋を鍛える最も効率的なトレーニング」も紹介しているので、読んでみてください。
では早速色々な研究を見ていきましょう。
◆大胸筋トレーニングの研究その①
まず初めの研究は1997年にドイツで行われたElectromyographical analysis of the pectoralis major muscle during various chest exercisesという研究です。
この研究では9種類のトレーニングを筋電図(筋肉の活動レベルを調べるもの)を用いて行い、どのトレーニングが一番大胸筋が活動したかを調べました。
その9種のトレーニングは
「ベンチプレス」
「プッシュアップ(腕立て)」
「チェストプレスマシン」
「ペックデックマシン」
「ディップス」
「ケーブルクロス」
「サスペンデットプッシュアップ(現在のTRXを用いた腕立て)」
「バランスボールに足を乗せてのプッシュアップ」
です。
結果は「ベンチプレス」「ペックデックマシン」「ケーブルクロス」の3つが大胸筋のトレーニングに効果的となりました。
◆大胸筋トレーニングの研究その②
次の研究は2000年にドイツで行われたものです。
この研究でも筋電図を用いて
「ベンチプレス」
「ケーブルクロス」
「ダンベルプレス」
「ペックデック」
「ダンベルフライ」
「プルオーバー」
の6種類のトレーニングを調べました。
結果は「ベンチプレス」が最も効果的で、次に「ケーブルクロス」「ペックデック」と続きます。
しかし、ベンチプレスの大胸筋の活動量を100%とするとケーブルクロスは90%程度、ペックデックで80%程度となるため、やはりベンチプレスは頭一つ抜けて大胸筋に効果がありそうです。
◆大胸筋トレーニングの研究その③
「大胸筋のトレーニングと言えばベンチプレス」
と研究など知らなくてもトレーニング初心者から上級者まで感覚でわかる通り、上記の2つの実験からやはりベンチプレスが大胸筋のトレーニングとしてはとても優秀です。
では、プレス系の種目であればなんでもいいのでしょうか?
A comparison of muscle activity and 1-RM strength of three chest-press exercises with different stability requirementsという研究でプレス系の種目について研究されています。
この研究では「バーベルプレス」「ダンベルプレス」「スミスマシンでのベンチプレス」の3つを行い大胸筋、三角筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋の筋電図を測定しました。
ちなみにダンベルプレスはバーベルプレスよりも17%、スミスマシンよりも14%低い負荷で行い。
バーベルプレスはスミスマシンより3%高い負荷で行なったそうです。
結果は
「大胸筋と三角筋の働きはダンベル、バーベルプレスよりもスミスマシンで小さかった」
「上腕三頭筋の働きはスミスマシンで最も大きかった」
となりました。
個人的な考察としては「大胸筋と三角筋の働きはダンベル、バーベルプレスよりもスミスマシンで小さかった」点に関してはスミスマシンはバーベルの軌道が決まっているため最も大胸筋、三角筋がストレッチされるポジションに肩関節の角度を持っていけず、大胸筋、三角筋の活動量が低くなったのではないかと考えられます。
「上腕三頭筋の働きはスミスマシンで最も大きかった」点に関しては先ほどと同じくバーベルの軌道が決まっているため、バーベルを挙上する際に肩関節よりも肘関節優位で動いているため上腕三頭筋の出力が強くなったのではないかと考えられます。
最後の「上腕二頭筋の働きダンベルプレスで最も大きかった」という点に関してですが、バーベルプレスは両手で重量を扱うため前後左右の動きが安定がしやすです。
スミスマシンに関してはバーベルプレスよりも更に安定感があります。
しかし、ダンベルプレスは左右の重量が独立しており、片手で重量をコントロールする必要があります。
そのため、主働筋である大胸筋や補助筋である三角筋、上腕三頭筋以外にも上腕二頭筋が働き、肩関節を安定させていたのではないかと考えます。
◆大胸筋トレーニングの研究その④
最後は個人的に一番面白いと思った研究を紹介します。
Inside the Muscles: Best Chest and Triceps Exercisesという研究なのですが、かなり多くの種目を重量を変化させて行い、筋電図による筋肉の活動を「平均」と「ピーク」で数値化したものになります。
この研究では単に大胸筋の筋電図ではなく大胸筋の「上部」「中部」「下部」で個別に筋活動を表しています。
この研究の結論としては
大胸筋上部はダンベルインクラインプレス、ギロチンプレス(※1)、バンドプッシュアップ(※2)
大胸筋中部はギロチンプレス、ダンベルプレス、ペックデック
大胸筋下部はギロチンプレス、ペックデック、重量付きディップス
の順で最も効果的に働くと結論づけられています。
※1ギロチンプレスとはベンチプレスの変則型でバーベルを首元に降ろして行うもの。
※2バンドプッシュアップとは腕立て伏せで両手にバンドを巻き負荷をかけたもの。
この研究で個人的に面白うと思ったのは「ディップスのトレーニングは135ポンド(約60kg)のフラットベンチプレス、インクラインプレスよりも筋活動が大きい」とされている点です。
(約100kgである225ポンドのベンチプレスと比べると筋活動は小さい)
60kgとなるとそこそこの重量でトレーニング初心者〜中級者レベルであるため、これが本当ならトレーニング中級者まではベンチプレスよりもディップスを行った方が効果的となります。
しかし、この研究は対象者が「海外のボディビルダー」であり「135ポンド(約60kg)のベンチプレスよりも自重の腕立て伏せの方が効果的」などとされている点から信憑性に疑問が残ります。
またこの研究では「自重」の数値は示されておらず、しっかりとした研究だとすると海外のボディビルダーが対象のためそもそもの体重が重い可能性があり、「自重トレーニング」だとしても私たち一般の日本人より負荷量が高い可能性があります。
これは私の感覚ですが自重での腕立て伏せよりも60kgでベンチプレスをした方が効果は実感できますし、トレーナーとして指導していても結果は出ます。
ディップスに関しても良いトレーニングではありますが、100kgベンチプレスでないと大胸筋の筋活動が上回らないほどの負荷量ではない感じです。
そのため、この研究は面白い結果にはなっていますが、話半分で聞いておいて自分で本当にディップスが効果的か試していった方が良いでしょう。
◆まとめ
様々な実験結果を紹介してきましたが、最後にこれらの研究から順位をつけていきましょう。
1位:ベンチプレス
1位は高重量を扱うこともでき、重力にも逆らう運動になり単純に大胸筋の活動量が大きいため、総合的に考えるとやはりベンチプレスが一番効果的ではないかという結論に至りました。
様々な研究でもベンチプレスが一番効果的という結果になっているものが多いため、これは文句なしの一番でしょう。
2位:ケーブルクロス
ベンチプレスには及びませんが「ケーブルクロス」もかなり大胸筋を鍛えるには効果的です。
ケーブルクロスの筋活動が大きかった理由としては高重量を扱うことができ、かつベンチプレスよりも運動の可動範囲が大きいため大胸筋のストレッチをかけながらトレーニングが出来るからではないかと考えます。
またケーブルクロスであれば関節運動の自由度が高いため、様々な角度から大胸筋に刺激を与えられるため、大胸筋を上部・中部・下部の部位ごとに鍛える際にも効果的な種目と言えるでしょう。
3位:ペックデック(ペクトラルフライ)
3位はペックデックです。
これも筋活動が大きかった種目で、大きい理由としては他の種目と違い純粋な大胸筋の単関節運動であるため、大胸筋に刺激を与えやすかった方だと考えます。
またマシントレーニングであるため、高重量を扱ってもフォームが崩れにくく大胸筋に効かせる意識がしやすいため、筋活動が高かったのではないかと思います。
大胸筋に効果的な種目トップ3は以上の通りですが、やはりトレーニングは色々な刺激を与える必要があるため、トレーニング初心者で大胸筋を鍛えたい方はこの種目を中心に行い。
トレーニングに慣れてきたら、徐々に違う種目も試していくことで分厚い胸板を手に入れることができるでしょう。
今回はここまでになりますが、次回はベンチプレスの際にベンチの角度によって筋肉の働きがどう変わるのかをお話ししたいと思います。
本当は今回ご紹介しようと思っていたのですが、流石に文字数が多くなり読むのがしんどいかなと思います。
余談ですが、ブログを書き始めてから正確な情報をお届けしようと今まで以上に論文を読み精査する様になりました。
そのため精査に時間を取られブログの更新頻度が少なくなり、記事も情報が詰め込まれ読みにくくなるかも知れません。
なるべく更新頻度を保ちつつ、読みやすく解釈していきますので、引き続いて記事を読んで頂けると嬉しいです。
本日もありがとうございました。
また次回お会いしましょう。