間違った医学【塩分と高血圧】
「塩分を取りすぎると高血圧になる!」「出来るだけ、薄味の方が健康的で長生きできる」などと言った言葉を耳にした事はありませんか?
実際に高血圧の方が病院に行くと医者から「あなたは血圧が高いから塩分を減らして下さい」と指示されます。
病院内の食事でも高血圧の方は塩分をコントロールされており、厳しく血圧を管理されています。
しかし、「高血圧の因子と塩分摂取量の間にはほとんど因果関係がない」と言ったら皆さん信じるでしょうか?
私は普段はダイエットやトレーニングについて情報を発信していますが、今日は現在の本職である医療の分野から間違った医療常識をお話ししていきます。
◆塩分で血圧が上がるメカニズム
何故「塩分=血圧上昇」と多くの方が思っているのでしょう?
要因の一つに塩分と血圧変動のメカニズムが関係しています。
人間の身体は60〜70%が水分で出来ています。
その水分はミネラルが溶けており、ある一定の濃度を保っています。
これを浸透圧と言います。
塩分もミネラルの一種のナトリウムであり、塩分を大量に摂取する事で浸透圧が変化し、体内の塩分濃度が濃くなります。
そのままだと身体に異常をきたしてしまう為、身体は「体内の濃度を戻すために水分を取れ」と脳に命令し、身体は口渇感を感じ水分を摂取します。
水分を摂取した事で浸透圧は正常に戻りましたが、水分を摂取したため体内の水分量が多くなってしまいました。
体内の水分量が多いと言うことは、溜まった水分を排出するために腎臓に血液を大量に送り、尿として体外に出す必要があります。
そこで心臓は普段以上に頑張って血流を送り出します。
心臓が頑張って血流を送り出すため、血管の圧が高くなり血圧が上がってしまいます。
とてもザックリとした簡単な説明ですが、これが塩分を摂ると血圧が上昇するメカニズムです。
この浸透圧はむくみや熱中症とも関わりがあるのですが、それはまた別の記事で
このメカニズムが塩分を摂ると高血圧になると勘違いされてきた要因の一つです。
「いや待って、体内の濃度を調節するために血圧を上げて尿を出すなら、尿が出た後は血圧が正常に戻るんじゃないの?」と思った方がいるかも知れません。
実はそうなんです。
基本的に正常な肝臓と腎臓が健康であれば、多少塩分を摂った所で血圧は維持されます。
しかし、メディアなどは「塩分を摂りすぎると高血圧になります!」とよく言っています。
それは人の恐怖心を煽って自分達の番組や商品の宣伝に目を向けさせるためでしょう。
人間は恐怖心を煽られると購買意欲が高まるため、利益を上げる方法としての常套手段と言えます。
また私も医療従事者のため大きな声では言えませんが病院も同じです。
病院の利益は薬剤が占める割合が大きいため、薬を売りたがります。
実は力関係としては「病院<製薬会社」といった構図の所がほとんどです
そのため、「高血圧なんで塩分を控えて下さい。お薬出しておきますね。」と言われ、医者に言われれば「そうなんだ」と納得せざるを得ません。
確かに高血圧であることは間違いなのでしょうが、薬が必要ない人も多いのも事実です。
◆塩分摂取量が多い=高血圧の研究
塩分を摂ると一時的に血圧が高くなることは分かったけど、そもそも医学ってそんな簡単に考えているの?
と思った方もいるでしょう。
確かに浸透圧の関係だけが理由でここまで「塩分をカットして!」とはなりません。
減塩が唱えられ始めた理由としては1940年代にアメリカのある医師が減塩による食事療法を唱えたからと言う理由やその他の研究で高血圧の人を対象に減塩すると血圧低下が見られたなどという研究がされていると言ったものがあります。
しかし、これには大きな罠が仕掛けられているです。
それが「疫学」です。
疫学は地域や国などを限定して、年齢・食生活・性別、生活習慣・運動歴など違いによって、病気の発生率にどう影響があるのかを調べ、統計的に疾病の発症原因を考えるものです。
別に赤ワイン自体がダイエットや健康に大きな影響は無いのに
「地中海の食事が健康的」=「地中海周辺の人は毎日赤ワインを飲んでる」=「ダイエット・健康には赤ワインだ」となっているのも疫学が招いた誤解です。
そんな疫学には注意点があるのです。
ある病気が特定の集団に見られたと言ってそ子に因果関係が無い事も多々あります。
統計的なデータは調査側の解釈によって結果が違ってくるのです。
しかも、研究者は良い結果が出れば論文が注目されますが、「効果なし」「悪い結果になった」という研究結果であれば、注目されないためそんな論文は出したく無いのです。
そのため、都合の悪い結果を排除して自分の仮説を裏付けるものだけを採用する事も珍しい事ではありません。
実際に海外で匿名回答での「研究結果を誤魔化したことはあるか?」と言う質問に15%程度の研究者はYESと回答、更に中堅の研究者はキャリアアップのために20.6%もの割合で論文を改ざんした事があると回答した。と言った事実もあります。
なので基礎的な知識から考えて論文を読む必要があります。
よく「これはメタ分析だから正しいんです!」「レビュー論文だからこの方法が絶対!」とyoutubeなどで言っている人ががいます。
確かに論文のレベル的にはガイドラインの次にメタ分析、系統的レビューは信頼性が高いですが、同じメタ分析でもやはり信頼性の低いものや、そもそもレビューのために集めた論文の質が低いものも多いです。
なので、思考停止をしてメタ分析だから全て正しいと思わずにしましょう。
特に私の記事では取り扱いませんが心理学、行動科学系の論文は6割が再現性のない研究で信頼性が低いと言った結果もあるため、注意が必要です。
少し話が反れましたが、疫学だけでは仮説段階であり臨床的な実験を行わないと実際の所、因果関係はわからないと言う事です。
●塩分=高血圧説の疫学の調査の1つ
上記の様な疫学の調査結果は実際にありました。
それが日本の東北地方で高血圧が多いと言った調査結果です。
1日の塩分摂取量の目安は6gとされていますが、実際は1日10〜11gの塩分を摂っている人が多いです。
しかし、東北地方で高血圧が多かった県は1日に10〜11gよりもかなり多い塩分摂取があったため塩分が悪者にされてしまいました。
食塩の摂取量が多い地域で高血圧の方がという統計であれば、この仮説は成立します。
しかし、実際この時の調査では塩分の摂取量が少なくても高血圧の人もいれば、塩分摂取が多くても低血圧の人もいました。
一人一人の個体差で見れば、仮説は成立しなかったのです。
しかし、疫学は「地域」や「食生活」などに注目するため個体差から目を晒しがちです。そのため【塩分を多く摂っている人は高血圧になる】と言われる様になりました。
ですが、平成24年の国民栄養調査報告では食塩の消費が多いのは
1位岩手県
2位長野県
3位山形県
4位埼玉県
5位山梨県
なのに対し
10万人あたりの高血圧患者の多さは
1位山梨県
2位島根県
3位青森県
4位長崎県
5位熊本県
となりました。
これだけでも塩分の摂取量と血圧に大きな因果はないと考察できますね。
◆高血圧は栄養で解決
そもそも、血圧とは何かご存知ですか?
血圧とは心拍出量×末梢血管抵抗で出た数値のことです。
つまり、心臓が強く血液を押し出すか、血管が収縮すれば血圧は高くなります。
心臓が強く血液を押し出すときは緊張しているときや運動中などです。
末梢血管抵抗が強くなるときは寒い中で身体がギュッと力が入っている時や加齢や栄養不足により血管が硬くなった時などです。
この抹消血管抵抗が強い状態が続くと日本人の高血圧のほとんどを占める「本能性高血圧」になります。
カリウムは細胞内のナトリウムを排出し浸透圧を一定に保つ役割があります。
カリウムが豊富な果物をよく食べる人は高血圧の割合が少ないといった結果も出ています。
ちなみにナトリウム:カリウム=1:0.6の比率がベストなため、血圧が気になる人はカリウムが豊富なほうれん草、りんご、スイカ、バナナ、メロンなどを食べることをオススメします。
またマグネシウムは血管を弛緩させる役割があるため収縮が続いている血管の負担軽減になります。
また高血圧だけでなく不整脈を予防する効果もあると分かっています。
マグネシウムは海藻、ゴマ、ナッツなどに含まれているため意識して食べていきましょう。
また味が苦手ではない方は硬水のミネラルウォーターを飲めば簡単にマグネシウムが摂取できます。
また他の栄養素として「タンパク質」「カルシウム」が必要です。
タンパク質は血管の新生や浸透圧の調整などに使われ、カルシウムは血管のスムーズな収縮を促します。
実際の研究で遺伝子的に必ず高血圧になるラットに「タンパク質」「カルシウム」「マグネシウム」「カリウム」を与えると寿命で亡くなるまで血圧は正常に保たれた。といった結果も出ています。
この様な結果が出ているにも関わらず、病院では「高血圧だから塩分を控えなさい」と言われます。
こういった研究を知らない事やそもそも栄養学に詳しくないためだと思いますが、だからといってすぐに薬を処方するのはどうかと思います。
むしろ「塩分を控えて!」と言われて塩分を控えると逆に身体を不調をきたしてしまいます。
塩分(ナトリウム)は体液の量を調節したり、細胞の形を維持します。
また尿を作る役割にも欠かせませんし、神経系の働きをさせているのもナトリウムです。
そのため、ナトリウムが不足すると腎臓や神経がダメージを受けます。
大切なのは血圧を下げたいからと言って塩分を控えるのではなく、他の栄養素をしっかり摂って身体が充分に機能を発揮できる様にする事です。
これは血圧だけでなく、その他の健康やダイエット・トレーニングにも言える事です。
◆降圧剤は血栓を作る可能性がある。
高血圧に対して薬が処方されると言いましたが、その薬(降圧剤)にも注意が必要です。
一口に降圧剤と言っても種類は豊富ですが、主に使われるのは利尿剤です。
理由として「血圧が高い」=「体内の血液の量が多い」=「体内の水分量が多い」=「尿で出せば水分量が減って血圧が下がる」という単純な考え方です。
確かに尿を出せば水分量は減って、見かけの血圧は下がります。
血液は水分だけで構成されている訳ではないですが、利尿剤で減るのはすいぶんだけです。
そうなると血液は少ない水分に対し、多くの物質を含む事になります。
つまり血液の粘度が増して、ドロドロの状態になり血液の質が尿を出す前よりも悪くなります。
血液は粘度が高いほど血栓(血管内の血の塊)ができやすくなります。
高血圧を下げるために利尿剤を使って血栓ができて、脳に詰まるなんて事があればたまったもんじゃないですよね。
◆高血圧と塩分は因果なし
ここまで高血圧と塩分が関係ないといったことを話してきましたが、その他の証明として、3000人以上を対象に高塩分摂取グループと低塩分摂取グループに分けて、13年間健康状態を追った調査では循環器障害の発症に有意差はなかった事。
アメリカで高血圧患者を集めて薬を一切使用せず減塩治療を行った所、血圧の低下は見られなかった事が分かっています。
他の研究でも塩分を1日6g以下にすれば高血圧患者の血圧が下がったと結果が出たものもありますが、結果が出たのは20%程度で80%の高血圧患者には効果がなかったとされています。
ただ例外として「すでに高血圧を持っている患者」に対しては塩分摂取が高血圧を助長する要因になる可能性があります。
また塩分の過剰摂取で高血圧を発症する人も完全に0ではなく、1〜2%程度いる事も分かっています。
しかし、とても少ない数のためやはり高血圧には「減塩」「降圧剤」を使用するよりもまずは正しい食事をする事が健康を維持するための重要な要素となります。
●まとめ
思ったよりも長くなってしまいましたが、今日のまとめです。
・高血圧は塩分が原因じゃない
・塩分が原因の人は1〜2%で減塩や薬では血圧は正常にならない
・研究や実験も絶対ではないため盲信しすぎない
・血圧低下には正しい食事(特にタンパク質、カルシウム、マグネシウム、カリウム)が重要
今日の記事を読んで勘違いしないで欲しいですが、私は医者を批判している訳ではありません。医者の業務はとても激務であり、栄養学などを勉強している暇がないのは十分承知しています。
そして処方されている薬を急にやめると体調に異変を来すため、医者や自身の体調と相談しながら変えていきましょう。
ただ現在の医学はこの様な間違った情報が多く溢れています。
間違った情報に流され、健康に害があってからでは遅いため少しでも皆様のお役に立てる情報を発信していけたらなと思っています。
今日も記事を読んで頂きありがとうございました。
思った以上に長くなってしまいました。
普段よりも真面目な内容なため面白くなかったかも知れませんが、健康のための知識として知っておいて頂ければと思います。
ではまた次回お会いしましょう。