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寝るだけで痩せるって本当?

るべく楽をして痩せたい」我が儘かも知れませんが、ダイエットする時にこんな事を考えたりしませんか?

 

私自身も運動を続けていますが、できる事なら楽をして理想の身体になりたいと思っています。

 

そんな魔法のような方法はないかと考えてしまいます。

しかし、その願いを叶えるかも知れない研究結果が最近出てきています。

 

それが睡眠時間によって脂肪の蓄積率が変わると言う事です。

 

どう言う事でしょうか。

2017年に発表された論文Effect of shortened sleep on energy expenditure, core body temperature, and appetite: a human randomized crossover trial, Scientific Reports, では3日間の睡眠不足で食欲を抑制するホルモンであるPYYの減少や1時間事に測定された自覚的な空腹感が強くなった事 。

また直腸で測定された深部体温が睡眠不足により有意に低下し、日内リズムに影響を与えた。

とされました。

 

また様々な国や地域を対象に大規模集団調査を行った研究では

睡眠時間が7時間以下の人は過体重や肥満が多いと判明し、睡眠時間と肥満の関係を調べたメタ分析でも睡眠時間が7時間未満の人は7〜8時間寝ている人よりも50%も肥満が多かったと言う結論になりました。

 

7時間未満と7〜8時間では1時間程度しか睡眠時間が変わらないのにこれだけの大きな差になるんですね。

 

 

◆睡眠不足が代謝に与える影響

 

はなぜ睡眠不足になると肥満になりやすいのでしょう?

 

原因の一つに代謝への影響が考えられます。

 

人間の細胞は常に代謝を行っています。

代謝にも色々と秋類があり基礎代謝や新陳代謝などは聞いたことあるのではないでしょうか。その他にも運動時の代謝や熱生産なんかもあったりするのですが、睡眠不足になると代謝の中の食事誘発性熱生産と言う代謝がガクッと低下します。

 

食事誘発性熱生産とは食事で得た栄養を身体の中で燃やし、熱を産み出し体温を上げる仕組みです。

この作用によって食べた物が全てが脂肪として蓄えられることなく熱として消費されるのですが、睡眠不足の翌日はこの食事誘発性熱生産が20%も低下するのです。

つまり言い換えると睡眠不足になるとしっかり寝ている人よりも20%脂肪を蓄えてしまう事になるのです。

 

また睡眠の研究をしているChristian Benedict氏がドイツの研究者と行った実験では睡眠不足の翌日の夜のエネルギー消費は通常より多くなり、それに伴い夕食の量が多くなり消費された以上にエネルギーを蓄えようとする事がわかっています。

 

理由としては「エネルギー消費が多い夜がこれから続くかも知れない、もしものために身体に脂肪を蓄えておかなければ」と脳が考え、脂肪を蓄えてしまう様です。

たった1日の睡眠不足ではさほど影響はないですが、慢性的な睡眠不足になると体重増加に悩まされる可能性は高くなります。

 

◆睡眠不足が食事に与える影響

 

眠不足は食事の量・内容にも影響する事がわかってきています。

 

先ほどのChristian Benedict氏がスウェーデンのウプサラ大学で行った研究ではパソコンに様々な食べ物を表示した。どの食べ物も複数のサイズが用意され、実験参加者に希望する食べ物、満腹感を得られそうなサイズを選択してもらった。

 

すると睡眠不足のグループは睡眠時間7〜8時間のグループに比べ、より大きなサイズの食べ物を選択し、選んだ食べ物も高カロリーなものばかりだった。

更にこの選択後、健康的な朝食(ヨーグルト、ハム、チーズ、パンなど)を食べてもらい、満腹になった後で再度同じ実験を行った。

 

結果は睡眠不足のグループは変わらず、睡眠時間が充分なグループよりも大きなサイズを選択し、更に選んだ食べ物もファストフードばかりだった。

しかも、空腹時と違い朝食後に満腹と答えていたにも関わらず、高カロリーで大きいものを選んでしまっていた。

 

睡眠不足に陥ると脳が消費したエネルギーを余分に取り戻そうとし、満腹感に関わらず、食事量が大きくなる傾向がありそうですね。

 

◆睡眠不足では甘いものを避けられない

 

イエットしている時どうしてもあま〜いお菓子に目が行ってしまいダメだとわかっているのに、ついつい手が伸びてしまう事はありませんか?

 

食べている時は幸せな気分になりますが、その後で「ダイエット中なのにお菓子を食べてしまった」「なんて自制心がないんだ」「こんな誘惑に勝てないなんてダメな自分に嫌気が差す」と後悔の念に押し潰されるなんて経験があるかも知れません。

 

しかし、それはあなたのせいではなく睡眠不足と言う悪魔があなたを操っているだけかも知れません。

 

実際にアメリカで行われた実験では睡眠時間が7時間未満の人は糖分を多くとり、食物繊維の摂取量が少なかったという結果が出ています。

 

またドイツ・スウェーデンでの研究では、被験者に対してこんな2回の実験を行いました。

1回目は充分に睡眠をとり、2回目は徹夜をしてもらった。どちらの実験でも翌朝、被験者にお金を渡し「明日は全てのお店が休業する事を想定し、蓄えとして食べ物を買ってきて下さい。その際、渡したお金は全て使い切ってください。」と伝え、買い物に行ってもらった。

 

さて、結果はあなたが予想している通り、徹夜明けの2回目の実験では1回目の実験の時よりも脂肪分や糖分が多く、甘く高カロリーな食品を購入してきた。

これは購入品だけでなく、バイキングやビュッフェでも徹夜後は野菜類よりもケーキなどの糖分・脂質が多い物を選んでしまう傾向があります。

 

良く眠れず、身体中がエネルギーを欲っしているためどうしても高カロリーな物が魅力的に見えてしまうんですね。これはダイエットの観点から見れば良くですが、生物・進化の観点からは非常に優秀な選択と言えます。

 

大きな目で見れば生物も目的は種を次の世代に繋げ、生き残ることです。

睡眠不足などで脳がピンチに陥っている時に「生物として生き残る欲求」と「痩せたいという欲求」ではどちらが勝つかは明らかです。

 

そのため、あなたがお菓子を我慢出来ないのは自分の自制心がないのではなく、単に睡眠不足で本能が生き残るために命令しているだけかも知れません。

 

◆睡眠不足が運動に与える影響

眠不足になると代謝や食事だけでなく運動にも影響を与えます。

充分な睡眠が取れなかった翌日は身体がダルイ感じがありますよね。

 

それは疲労が取れていないからなのですが、疲労感がある場合どうしても1日の活動量が減ってしまいます。

いつもは階段を使っているのにエスカレーターを使ったり、すぐそこまで行くのにタクシーや車を使ったり身体が疲労していると自然と活動量が低下してしまい、「仕事が終わったら頑張ってジムに行くぞ!」と思っていても仕事後にはヘロヘロになっており結局ジムに行かず、帰ってダラダラしてしまう可能性が高くなります。

 

強靭な意志力で頑張ってジムに行って筋トレしても疲労感が残っているためすぐに疲れてしまったり、集中力が低下し効果的な運動が出来ない事も多くなります。

また、睡眠不足による運動への影響は疲労感だけでなく身体の中でも起っています。

 

Christian Benedict氏が行った実験では2日連続で睡眠不足になるとインスリンへの反応が20%低下する事がわかっています。

加えてシカゴで行われた研究では2つのグループで昼と夜に同じ時間寝てもらった場合、同じ時間寝ているにも関わらず、夜寝ていないグループ(昼に寝ているグループ)はインスリン感受性が30%低下する事が報告されています。

 

インスリンは血中のブドウ糖(糖質)を筋肉に運び、エネルギーをして利用する事を促すためインスリン感受性が低いと運動中に利用できるブドウ糖が少なくなりパフォーマンスが下がったり、余った血中のブドウ糖が脂肪になったりするため運動での脂肪燃焼の効率も低下します。

 

インスリンと聞くと糖尿病をイメージするかも知れませんが、インスリン感受性が低下すると糖尿病のリスクも高くなり事がわかっています。

 

◆睡眠時間を確保するだけで身体は変わり始める。

上の研究や実験などから睡眠不足が身体に与える影響、いかに睡眠不足がダイエットの邪魔をするか少しでもご理解頂けたでしょうか。

 

睡眠が身体へ与える影響についてのお話しや研究・論文などはまだまだあり、もっとご紹介したいと思うのですが、全てをお話しするとなるとキリがないため、また別の記事で紹介したいと思います。

 

長くなってしまいましたが、最後にまとめると

・睡眠不足は食後の熱産生が低下し、20%太りやすくなる。

・睡眠不足の翌日は選ぶ食べ物が高カロリーになりサイズも大きくなりやすい。

・睡眠不足は普段の活動量が低下し、運動の効率も低下する。

 

ということになります。

逆に言うと睡眠時間をしっかりと確保するだけでこれらの影響を受けづらくなり、ダイエットで効率良く結果を出す事が出来ます。

人によって適切な睡眠時間は違いますが、現状は7〜8時間の睡眠時間は確保しておきたい所ですね。

 

 

今日も読んで頂き、ありがとうございました。

また次の記事でお会いしましょう。