フィットネスLab

トレーナー×医学の知識でダイエット、筋トレを効率よく結果を出す情報をお届け

【いくつ知ってる?】トレーニングのセット法12選〜後半〜

本日の記事は前回の記事の続きとなっています。

レーニングのセット法を紹介していきます。

 

後半のセット法は前半よりもハードな内容のため、行う際は自分の筋力や体力、体調に充分注意しましょう。

ちなみに前回の記事はこちら

 

 

rehaphysical.hatenablog.com

 

では早速いきましょう。

f:id:rehaphysical:20210512231905j:plain

 

7.マルチ・パウンデッジ法(ドロップセット法)

 

の方法は1セットの中で重量が反復できなくなるまで回数を重ね、限界がきたら重量を減らしすぐに再度反復します。この工程を3〜4回繰り返すことを1セットとする方法です。

徐々に重量を下げていくことから別名ドロップセット法とも言われます。

 

レーニングの流れとしては

1RMの80%×10rep→重量を減らし→1RMの70%×8rep重量を減らし→1RMの60%×7rep→重量を減らし→1RMの45%×10repする。

ここまでで1セットと考えるような方法です。

 

 

この時RMの%や反復回数は個人によって変えて頂いて構いませんが、重要なのは【限界まで反復する】ということです。

これを2〜3セット繰り返します。

 

 

この方法の利点は筋肉を限界まで追い込めるということです。

ただ注意点として

1.疲労感が強いためセット間の休息を3〜5分と長めに取ること。

2.限界まで行うため、フリーウエストでは危険が伴うため必ずセーフティーバーを使用すること。

3.可能であれば補助員をつけること。

 

 

怪我防止のためこの3点は必ず守りましょう。

 

 

8.ピラミッド法

 

ラミット法はセットごとに重量を増やし反復回数を減らしていく方法です。

 

 

レーニングの流れとしては

・1RMの50%×12rep

・1RMの60%×10rep

・1RMの75%×8rep

・1RMの80%×4rep

・1RMの90%×1~3rep

このような流れで1セットとなります。

 

 

この方法は最大挙上重量の向上に向いています。

筋肥大のために高重量を扱えるようになりたい方にオススメです。

 

 

またこの方法も負荷量が高いため、セット間の休息は少なくても3分程度は取るようにしましょう。

 

9.ダブル・ピラミッド法

 

れは先ほどのピラミッド法と同じように徐々に重量を上げ、回数を減らしていくのですが、最大重量まで行った後で徐々に重量を下げて回数を増やしていく方法です。

 

レーニングの流れとしては

・1RMの70%×8rep

・1RMの80%×5rep

・1RMの90%×1~3rep

・1RMの80%×4rep

・1RMの70%×6rep

・1RMの60%×10rep

という風です。

 

この方法では最大挙上重量の向上と共に高反復回数を持続するという筋持久力の向上も期待できます。

 

しかし、回数をこなすため最大挙上重量の向上に関しては普通のピラミット法にはやや劣ります。

ただ1部位を集中的に鍛えたい場合はかなり有効なトレーニングのため「最近、刺激が足りないな」と思っている方にとてもオススメです。

f:id:rehaphysical:20210416222330j:plain


 

10.スタッガード・セット法

 

れは大胸筋や大腿四頭筋など大筋群と呼ばれる、主に筋トレでメインになりやすい筋肉を鍛える種目のセット間に腓腹筋僧帽筋など小筋群と呼ばれる小さい筋肉を鍛える方法です。

 

 

例えばベンチプレスの休憩の間にバーベルを持ち、僧帽筋を鍛えるシュラッグを行う。

スクワットの間にバーベルを担ぎカーフレイズを行うといった方法です。

 

レーニングを行う時は時間や体力が限られているため、多くの場合大筋群を優先して鍛えがちです。

しかし、それでは身体全体のバランスがおかしくなってしまうため、このような小筋群も鍛えてあげる必要があります。

 

 

しかし、仕事終わりで貴重な時間を使ってジムにいった時に腓腹筋僧帽筋、前鋸筋などをひたすら地味に鍛えていてもボディビルダーやフィジークの人たち以外は達成感が少なく楽しくないと思います。

 

なので、セット間の休憩を利用して普段あまり鍛えない筋肉を鍛えるためにこのような方法で鍛えると効率よく全身のトレーニングが可能となります。

 

11.フォースト・レップ法

 

の方法は1人では出来ない方法なのですが、補助員をつけて行う方法です。

 

通常のセット(今回紹介したセット法でも可)で筋肉を限界まで追い込んだ際に補助員に助けてもらい最も辛い場面であるスティっキング・ポイントを超えて筋肉を追い込む方法です。

 

 

補助をしてもらう回数は限界から2~3回だけで大丈夫です。

この時、特に意識してほしいのは重量を上げるコンセントリック(ポジティブ)な動作は補助してもらい、重量を降ろすエキセントリック(ネガティブ)な動作はあまり補助をしてもらわず自身で耐えながら速度をコントロールするという点です。

 

 

エキセントリック動作で最後まで追い込み切ればかなりの筋肥大が期待できます。

 

12.ネガティブ・オンリー法

 

後の方法は私が一番きついと思っている方法です。

この方法は先ほどのエキセントリック動作を使った方法です。

エキセントリックは別名ネガティブ動作とも言います。

 

 

これも先ほどのフォースト・レップ法と同じく補助員が必要です。

方法としては最初から自身の限界以上の重量を扱い、コンセントリック(ポジティブ)な動作は補助してもらい、重量を降ろすエキセントリック(ネガティブ)な動作はコントロールして降ろしていくという方法です。

 

 

最初から限界以上の重量(1RMの110~120%程度)を扱うため、筋力発揮がかなり必要です。

しかし、重量を降ろすネガティブ動作は重量を上げるポジティブ動作よりも140%近い筋力を発揮できるため、その性質を使い強制的に筋力発揮を促す方法となります。

かなり荒い方法ですが、筋肉を追い込むにはとても良い方法です。

 

 

ただし、この方法は「最大重量以上を扱う」「ネガティブ動作を意識してゆっくり行う」ため筋肉だけでなく、神経系もかなり疲労します。

そのため、筋トレに慣れていない人や次の日が大切な仕事がある日にはオススメしません。

 

 

次の日が休日でゆっくりと休息が取れる時にしっかりと追い込みたい人はこの方法がかなりオススメです。

 

f:id:rehaphysical:20210416222248j:plain


 

◆まとめ

 

て、今回は後半の6つのセット法を紹介してきました。

前半に紹介した方法と比べるとかなりハードな方法が多かったと思います。

 

おさらいとしては

7.マルチ・パウンデっじ法(ドロップセット)

8.ピラミッド法

9.ダブル・ピラミッド法

10.スタッガード・セット法

11.フォースト・レップ法

12.ネガティブ・オンリー法

です。

 

 

レーニングでもダイエットでも何でもそうですが、大切なのは継続することだと私は考えています。

しかし、毎回同じ方法で運動をしていてもやはり人間は飽きてくるものです。

 

 

そこで今回紹介したセット方法などで筋肉にいつもと違う刺激を与えて上げることでマンネリを防止して継続する事が可能となります。

 

 

特にトレーニング初心者から中級者になる時はやはり最初よりも筋肥大や重量の伸び代が少なくなってきます。

そうなると「何だか最近、楽しくないなぁ」となってしまいます。

 

しかし、運動が習慣化されつつあるそのタイミングでやめてしまうと非常にもったいないです。

マンネリの壁を越えて運動が生活習慣の一部となるまで後少しのため、踏ん張って運動を継続してみましょう。

 

 

今回の記事も読んでいただきありがとうございました。

また次回の記事でお会いしましょう。

【いくつ知ってる?】トレーニングのセット法12選〜前半〜

こんにちは、今日は【基礎・基本シリーズ】です。

 

 

皆さんはトレーニングの方法をどれだけ知っているでしょうか?

初心者の方は基本的に10回×3セットなどでセットを組んでいるのではないかと思います。

 

レーニングを始めてた頃はトレーニングの負荷にも慣れておらず、変に色々な方法を試すと習慣化せずにやめてしまう可能性があるためそれで良いと思います。

私自身トレーナー時代に運動初心者のクライアント様には10回×3セットから指導をしていました。

 

しかし、段々トレーニングに慣れてくると「もっと鍛えたい」「違う刺激を身体に与えたい」そう思ってきます。

また「なんだかずっと同じことで飽きてきたな…」と思ってしまうかも知れません。

ずっと同じことを繰り返しているとトレーニングの原理原則である漸進性の原則によって成長が止まってしまいます。

 

 

そんな時、今までと違うトレーニング方法を取り入れることでマンネリ解消、トレーニング効果アップを狙うことができます。

 

 

今日は様々なトレーニング方法12選を紹介していきます。

一気に紹介すると覚えにくいため、前半・後半に分けて紹介します。

 

f:id:rehaphysical:20210512231905j:plain


 

1.スーパーセット法

 

の方法は知っている方も多いと思います。

 

これは前後・裏表の作用が拮抗する筋肉を連続で鍛える方法です。

 

例えば上腕を鍛える際、アームカールなどで上腕二頭筋を鍛え、その後短い休息後にトライエクステンションなどで上腕三頭筋を鍛えたりします。

 

この時の種目は筋肉の作用が逆のものを選択する必要があります。

肘・膝の屈曲筋⇔伸展筋

股関節の内転筋⇔外転筋など

 

これはネットで調べれば筋肉の作用が出てくるため、しっかりと鍛えたい方は調べて頂ければ良いですが、やや専門的な知識となるため簡単に【身体の前後・裏表で鍛える】と覚えて頂ければ良いと思います。

 

上記以外のトレーニング一例として

・ベンチプレス(大胸筋)⇔懸垂(広背筋)

・レッグエクステンション(大腿四頭筋)⇔レッグカール(ハムストレング)

・クランチ(腹直筋)⇔バックエクステンション(脊柱起立筋)などがあります。

 

またセットの流れとしては

種目A→休息10秒→種目B→休息1分を1セットとしてこれを3~4セット繰り返します。

 

 

この方法のメリットしては拮抗している筋肉をトレーニングしているため、種目Aをやっている時は種目Bの筋肉は休憩できるということです。

更に筋肉は拮抗している筋肉が収縮している時は弛緩するという特徴があるため、血流を促進しパンプアップを目指すことができます。

 

そして交互に行い休息が短いため、時間がない人も鍛えられる。

片方の筋肉は休んでいるけど、運動はずっと続いているため持久力も向上するためスポーツ選手にも有用とかなり色々なメリットがあります。

 

もし、トレーニングに飽きを感じていればこの方法でトレーニングしてみてください。

 

2.コンパウンド・セット法

 

れは同じ部位のトレーニングを2種目連続で行う方法。

 

例えばベンチプレスをして、休息をせずにすぐにダンベルフライを行うなどです。

 

 

この方法のメリットとして1つの筋肉に集中できるため、筋肉に効かせる意識がしっかりと出来る事です。

また普段よりも1つの部位に対しての負荷量が強いため筋肥大をさせたい方にオススメです。

 

レーニングの一例としては

・ベンチプレス→ダンベルフライ

・スクワット→フォワードランジ

・ラットプルダウン→ワンハンドロウイングなどです。

 

セットの流れとしては

種目A→休息なし→種目B→休息1〜2分を1セットとして3セット以上行います。

 

 

1つの部位集中するため少し時間がかかり、トレーニング後の疲労感も強いですが、トレーニングに慣れてきた方におすすめの方法です。

 

f:id:rehaphysical:20210413225047j:plain


 

3.トライ・セット法

 

ライ・セット法は先ほどのコンパウンド・セット法と同じ考え方で3つの種目を連続して行う方法です。

 

 

これはかなり筋肉に負荷がかかる方法なのでトレーニング中級者向けのセット法になります。

 

レーニングの一例として

・ベンチプレス→ダンベルフライ→ペクトラルフライ

デッドリフト→ヒップスラスト→ヒップリフト

・ベントオーバーロウイング→ラットプルダウン→シーデットロウなど

 

 

この種目はトレーニングにとても達成感があるため、レーニングにマンネリを感じてきており、体力に自身のある方にオススメです。

 

 

4.ジャイアント・セット

 

の方法も先ほどと考え方は同じで同じ部位の種目を4つ連続で行うというもの。

 

言わずとも分かる通りかなりきつい種目となっています。

 

 

レーニングの一例として

・スクワット→フォワードランジ→レッグエクステンション→シザースジャンプ

・アームカール→ハンマーカール→リバースカール→オルターネイトカール

などです。

 

この方法はレーニング中級者から上級者向けの方法です。

理由としては体力・筋力をかなり必要とし、トレーニングに慣れていないとフォームが乱れ怪我をしてしまう可能性があるからです。

 

またトレーニング後の疲労感がとても強いため、トレーニング初心者が行うとトレーニング自体が嫌になってしまう可能性があります。

 

 

個人的に「ある部位の筋肥大をしたい」「忙しくて少しの間トレーニングできない予定」の時にしっかりと追い込むためにこの方法がオススメです。

 

 

ただ、この方法はマシンや器具が複数必要となる場合があります。

日本のジムでは1人でいくつもの器具を独占して使うことはマナー違反に当たることが多いため、周囲の人に配慮しながら実施してください。

 

 

5.プレ・イグゾーション法

 

レ・イグゾーション法とは【事前疲労】という意味です。

 

この方法はメインのトレーニングの前に単関節運動で主働筋に刺激を入れておく方法です。

 

レーニングの一例として

・スクワットの前にレッグエクステンションを行う。

・ベンチプレスの前にダンベルフライを行うなどといった感じです。

 

セットの流れとしては

①種目A(単関節運動)→休息30秒〜1分→種目B(多関節運動)を1セットにする方法。

②種目A(単関節運動)×3セット→休息2~3分→種目B(多関節運動)×3セットと種目ABを完全に分ける方法があります。

 

この2つは好みによって使い分けてもらえれば良いのですが、①の場合コンパウンド・セット法に近くなるためマンネリ防止には②の方法が良いかも知れません。

 

 

この方法のメリットとしては事前に主働筋に刺激を入れておくことで、【メイントレーニングの際に筋肉を意識しやすい】ことが挙げられます。

 

 

また例えばベンチプレスであれば主働筋である大胸筋の前に補助筋である三角筋前部繊維や上腕三頭筋が先に疲労してしまい大胸筋を最後まで追い込みきれない場合があります。

 

そんな時にこのプレ・イグゾーション法を行うと先に大胸筋がある程度疲労しているため最後まで主働筋を追い込むことができます。

 

そのため、「普通のトレーニングでは何となく追い込み切れていない」と感じている方にオススメの方法です。

 

6.事後疲労

 

の方法は先ほどとは逆にメイントレーニングの後に主働筋の単関節運動を行うというもので、別の言い方があるのかも知れませんが、私は事後疲労と呼んでいます。

 

 

この方法の特徴としては、多関節運動を行っても先に補助筋が疲れてしまい主働筋を追い込み切れていない時に最後まで主働筋を追い込むことができます。

 

トレニングの一例として

・ベンチプレス後にペクトラルフライを行う。

・スクワット後にレッグエクステンションを行うなどです。

 

レーニングの流れとしては

・種目A(多関節運動)×3セット→休息→種目B(単関節運動)×3セットとなります。

 

 

補助筋の疲労の影響による主働筋を追い込み切れない状態を解決する目的は先ほどのプレ・イグゾーション法と同じですが、私個人は主働筋を追い込むにはこの事後疲労法がオススメです。

 

 

理由としては多関節運動はフリーウエイトで行うことが多いです。

そのため、プレ・イグゾーション法の場合疲労によりフォームが乱れてしまったり怪我の原因になります。

またフリーウエイトは多関節運動のため主働筋に疲れている中で意識を集中させにくいのです。

 

その点、この事後疲労法では多関節運動の後に単関節運動を行うため怪我のリスクが少なく、フォームも乱れにくいため主働筋にしっかり効かせる意識を持ちトレーニングができます。

 

 

単関節運動はマシントレーニングであれば更に主働筋に効かせやすくなるでしょう。

f:id:rehaphysical:20210501130844j:plain

 

◆前半のまとめ

 

半では6つのセット法について紹介しました。

おさらいすると

1.スーパーセット法

2.コンパウンド・セット法

3.トライ・セット法

4.ジャイアント・セット法

5.プレ・イグゾーション法

6.事後疲労

となります。

 

 

この6つだけでもトレーニングのマンネリをかなり解消できるので参考にしてみてください。

 

ではまた後半の記事でお会いしましょう。

【気にしすぎ】GI値は実用的じゃない?見るべきものはGL値

血糖値のコントロールがダイエットや肥満に影響を与えることは現在では広く知られています。

 

 

そんな時よく耳にするのがGI値というものです。

 

 

このGI値というものはかなり前から存在するのですが、糖質制限ダイエットが流行し出してから良く耳にするようになったなと感じます。

実際にネットで糖質制限を勧めているサイトを見てみると、「血糖値の上昇は肥満に繋がる」「血糖値を上げないように低GI値の食品を食べよう」と書いてある事が多いです。

 

 

確かに血糖値の急激な上昇は糖尿病や肥満に繋がる事がありますが、だからと言って「高GI値のものは太る」「低GI値のものはOK」と単純な話ではありません。

 

 

今日はそんなGI値の勘違いについてお話ししたいと思います。

 

f:id:rehaphysical:20210511092122j:plain


 

GI値の本質

 

もそもGI値とはなんなのか、そうやって数値が測定されているか皆さん知っていますか?

 

GI値とはグリセミック・インデックスのことで

「食品に含まれる炭水化物50gを摂取した際、摂取後2時間の血液中の血糖値上昇を測定したもの」

「またその数値をブドウ糖グルコース)を100とした数値の相対値で表す」

というものが測定基準となります。

 ※炭水化物は糖質+食物繊維のことですが、今回のお話しでは炭水化物=糖質と思ってください。

 

このように測定された数値から

GI値55以下は低GI値

56〜69までが中GI値

70以上が高GI値とされています。

 

 

ちなみに低GI値とされているものは「そば」「パスタ」「りんご」「苺」「ブロッコリー」「ピーマン」「チーズ」「ヨーグルト」など

GI値は「玄米」「パイナップル」「ぶどう」「サツマイモ」など

GI値は「白米」「パン」「もち」「芋類」などとなっています。

 

これらは一例ですが、このGI値の基準から「白米よりも玄米を食べよう」と言われている事が多いですよね。

 

 

確かに玄米は健康に良いですが、このようなGI値の数値だけを見て「にんじんはGI値が高いのでダメ」「白米よりもパスタの方がGI値が低いからダイエットにオススメ」などと書かれているサイトもあります。

 

 

しかし、ちょっと待ってください。

このGI値の測定基準を思い返してみると「食品に含まれる炭水化物を50g摂取した際の血糖値上昇」とあります。

 

 

そうなるとAという食品には100g中に炭水化物が20g入っているとします

その食品のGI値調べるためには250g食べればいい訳です。

しかし、Bという食品には100g中炭水化物が2gしか入っていないとしましょう。

そうなるとGI値を測定するにはその食品を2.5kgも食べなければいけないことになります。

 

 

そうなれば、いくらGI値が高いと言っても現実的に摂取量が少ない食品も多々あります。

 

 

先ほどの食品AとBの例は極端と思うかも知れませんが、実際にはそこまで大袈裟な話でもありません。

 

例えば白米であれば約135gで炭水化物量が50gとなります。

これは一般的なお茶碗1杯(1膳)よりやや少ない量です。

つまり白米のGI値は1膳食べた時の血糖値の上昇具合を表しています。

 

 

しかし、苺であれば100gの中に炭水化物は9gしか入っていないため、50gの炭水化物を苺から摂りたい場合、550g以上食べなければいけません。

苺一粒の重さを15gだとすると37粒も食べる必要があります。

 

 

またGI値だけでみると人参であればGI値80であり、プリン(GI値52)やカステラ(GI値69)よりも高めです。

では、プリンやカステラを食べるよりも人参を食べる方が太ると思いますか?

そんな訳ないですよね。

(研究によっては人参のGI値は47というものもあるが、それでもプリンとあまり差はないですね)

 

冷静に考えてみれば、GI値の低いもの=ダイエットに繋がるものではないとわかるはずです。

あくまでGI値は研究によって出た数値なのです。

 

 

ですが、私たちが知りたいのは研究によって出た数値ではなく普段の食事が血糖値に影響を与える数値ですよね。

 

f:id:rehaphysical:20210511092329j:plain


 

◆知るべきはGL値

 

の通常の食事での血糖値上昇を算出した数値が【GL値(グリセミック・ロード)】と言われるものです。

 

これはGI値×各食材に含まれる炭水化物量(g)÷100で表した数値で、一人前の食事で食材ごとの血糖値上昇値が分かります。

 

 

GL値は10以下で低GL値

11〜19の間で中GL値

20以上で高GL値となっています。

 

 

代表的なGL値として、まず白米はGL値41.7とやはり白米は炭水化物が多いことが分かります。

次は先ほどGI値が高かった人参ですが、GL値では2.8とかなり低い数値になっています。

このことからやはり人参は太りにくい食材と分かりますね。

 

 

先ほど例にあげた苺もGI値は40とチョコレート(GI値42)、マフィン(GI値46)などとそんなに差はないですがGL値は2とチョコレート(GL値9)、マフィン(GL値12)とは大きく差があります。

 

 

このようにGI値だけでは「太りやすい」「太りにくい」と言われていたものが、実際に食事で食べる量に直してみると「実は太りにくい食材だった」「実は太りやすいものだった」というものが多々あります。

 

 

このGL値という考え方はアメリカやオーストラリアでは普通の考えとされています。

しかし日本では徐々に浸透してきてはいますが、まだまだGI値で考えている人も多く見られます。

 

 

ダイエットや運動を指導している方でもまだまだ「GI値が高いから太りやすいですよ」と指導している方もいるため鵜呑みにせずGL値を調べた上で食材を選択しましょう。

 

 

◆まとめ

 

回はGI値とGL値についてお話ししてきました。

簡単に説明すると

GI値:一定の炭水化物量で研究によって算出された数値

GL値:実際の食事を考慮した数値

です。

 

 

ダイエットをしている方はGL値を参考にして頂けると良いのですが、食事の度にGL値を細かく見ていくと疲れてしまうため気になった時だけで良いと思います。

 

 

ダイエットでも筋トレでも短期的に結果を出すことよりも継続できる方法を探していくことが長期的にみて理想の身体になる方法です。

 

 

 

本日も記事を読んでいただきありがとうございました。

GI値とGL値について違いをわかって頂けたでしょうか。

まだまだ浸透してきていない考え方ですが、実用的なGL値も参考にしながら食事を考えてみてください。

 

ではまた次回の記事でお会いしましょう。

 

 

アルコールが筋肉に及ぼす影響

「筋トレを頑張っているけど運動後はビールが飲みたくなる」

 

頑張ってトレーニングをした後はこんなことを思ったことはありませんか?

 

普段お酒を飲む方であれば仕事が終わって「ジムに行くのがめんどくさい」という気持ちに打ち勝って一生懸命トレーニングをしたけど、達成感を感じたと共にキンキンに冷えたビールが恋しくなる事もあると思います。

 

そこで「折角筋トレしたし我慢しよう」と自分に打ち勝つことができれば良いのですが、「頑張ったしちょっと位は良いか」と誘惑に負けてしまう方もいるでしょう。

 

f:id:rehaphysical:20210508232038j:plain

 

日はそんな方のために【アルコールと筋肉】についてお話しします。

この記事を読んで少しでも「お酒を飲みたいけど、筋肉にとっては良くないよな」とお酒を我慢する理由として使って頂ければと思います。

 

またアルコールが健康に及ぼす影響はこちらの記事にまとめてあるため、興味があれば読んで頂きたいと思います。

 

rehaphysical.hatenablog.com

 

 

◆アルコールが筋肉に及ぼす影響①

 

ルコールを取ると筋肉に良い影響を与えないことは何となく想像できると思います。

 

では具体的にアルコールは筋肉にどの様な影響を及ぼすのでしょうか?

 

まず初めに筋肉に与える影響として【筋タンパク質の合成を阻害する】ということが挙げられます。

 

2013年に発表されたDirect central nervous system effect of alcohol alters synthesis and degradation of skeletal muscle proteinという論文ではアルコールを飲むと筋合成が減少し、筋分解を増加させるとされています。

更に筋肥大に重要なアミノ酸であるロイシンの機能もアルコールによって損なわれるとされています。

 

f:id:rehaphysical:20210507223652j:plain

※Effect of alcohol on muscle protein synthesis. In vivo-determined protein synthesis was determined using 3H-phenylalanine in rats administered alcohol (ethanol; EtOH) either ICV or intragastrically (IG). Gastrocnemius (A) and soleus (B) were sampled from each group. Values are means ± SEM; n = 8–9 per group. For the same time point (e.g. 1, 6 and 24 h), values with a different letter are statistically different (P < 0.05), compared with time-matched control values (open bars). As there were no significant differences between rats infused ICV with aCSF and those administered saline IG, values from these groups were combined and presented as a single ‘control’ group for this and other endpoints.

 

また別のEthanol impairs post-prandial hepatic protein metabolism.という研究ではアルコールを70g摂取すると24%筋肉の合成が阻害されるとされています。

 

 

この研究結果からアルコールを摂取すると単純に筋合成が抑制されトレーニングの効果が薄くなることが分かります。

 

では他にはどの様な影響があるのでしょうか?

 

◆アルコールが筋肉に及ぼす影響②

 

ルコールによって受ける影響として次にあげられるのは【コルチゾールの増加】です。

 

コルチゾールとは別名ストレスホルモンと言われており、血圧を上げたり、免疫を抑えるなどマイナスの働きをすることもありますが、血糖値を上げて低血糖から身体を守ってくれたり、身体の炎症を抑えてくれたりする機能があります。

 

そのためコルチゾール自体は適切に働けば身体に守ってくれる良い影響を与えるのですが、筋肉に関してはこちらもマイナスの働きをします。

 

コルチゾールの作用の一つとして【筋肉を分解してエネルギーを作る】というものがあります。

 

こちらのAlcohol consumption and hormonal alterations related to muscle hypertrophy: a reviewといった研究では体重1kgあたり1.75gのアルコール を摂取するとコルチゾールが大幅に増加するとされています。

 

体重1kgあたり1.75gというとかなりの深酒ではありますが、やはりアルコールは筋肉に良い影響は与えなさそうです。

 

f:id:rehaphysical:20210508232205j:plain

 

◆アルコールが筋肉に及ぼす影響③

 

ルコールが筋肉に及ぼす影響の3つ目は【テストステロン】についてです。

 

テストステロンは男性ホルモンの一つです。

男性ホルモンだからと言って女性にないわけではないのですが、男性に多くこのホルモンが筋肥大に関わっており筋合成を促進してくれるものです。

 

 

ある研究では体重1kgあたり1.5gのアルコールを摂取するとテストステロンが23%減少する。1.75g摂取すると27%もテストステロンが減少するという結果が出ています。

更に減少したテストステロンの回復には36時間以上かかるとされており、1日以上筋合成が少ない状態が続いてしまいます。

 

こうなるとかなり筋肉をつけるためには効率が悪くなってしまいます。

 

ただテストステロンに関してはThe effect of alcohol on testosterone concentrations in alcohol-preferring and non-preferring rat linesといった研究やAlcohol consumption and hormonal alterations related to muscle hypertrophy: a reviewといった研究で「少量のアルコールであれば摂取後にテストステロンの量が変わらない・もしくは増加する」といった結果が出ているため【アルコール=テストステロンが減少する】とは言い切れませんが、他の影響を見てみてもトレーニングの効果を低下させたくない場合はアルコールを控えた方が良さそうです。

 

以上3つがアルコールが筋肉に及ぼす影響でした。

おさらいすると

【筋合成の抑制・筋分解の促進】

コルチゾールの増加】

【テストステロンの減少】

 

 

これらがアルコールが筋肉に直接的に関わる影響でした。

 

しかし、直接的でなくともアルコールは他の影響を与えます。

 

次はアルコールが及ぼす間接的な影響を紹介します。

 

◆アルコールによる間接的な影響①

 

ず1つ目が【脱水】です。

 

アルコールは利尿作用があるため体内から水分が抜けていきます。

これはしっかりと水分を補給すれば問題ないのですが、水分が抜けた状態だと筋力低下や持久性の低下を招いてしまいます。

 

更に脱水状態だと血流も悪くなり身体中に栄養や酸素が行き届かなくなり、パフォーマンスの低下や筋合成のための栄養が少なくなるなどの影響も出てきます。

f:id:rehaphysical:20210508232312p:plain
 

 

◆アルコールによる間接的な影響②

 

2つ目はビタミンB1亜鉛の不足】です。

 

アルコールを体内で分解するにはビタミンB1亜鉛が必要です。

ビタミンB1の働きとして糖質をエネルギーに変えるというものがあります。

しかし、ビタミンB1が不足しているとその働きがうまく利用出来ず、エネルギーを作り出すために筋肉を分解してしまいます。

 

そうなると折角トレーニングしていても効果は少なくなってしまいます。

 

また亜鉛筋肉の修復や新陳代謝に関わってくるため亜鉛が不足するとパフォーマンスの低下や疲労が回復しないなどの影響が出てきてしまいます。

 

◆アルコールによる間接的な影響③

 

3つの影響は【睡眠の質が低下する】というものです。

 

アルコールは睡眠にも影響してきます。

アルコールを分解するために身体は働き続ける必要があります。

 

そのため、深い眠りにつくことが出来ず浅い睡眠になってしまい結果筋肉の修復や栄養を身体中に届けることができなくなります。

 

「お酒を飲むとよく眠れる」という人がいますが、アルコールによって誘発される睡眠のスイッチは通常のものとは異なります。

これについてはここで説明すると長くなってしまうため、別の記事にしようと思いますが、Reviewing alcohol's effects on normal sleepという研究でもアルコールによってレム睡眠が阻害されるということが分かっています。

 

 

◆その他の研究と適切な摂取量

 

まかな説明は以上となりますが、最後に少しだけ他の研究とどのくらいの量なら適切な量かをお話ししたいと思います。

 

紹介したいのはAlcohol myopathy: impairment of protein synthesis and translation initiationという研究なのですが、こちらはアルコールの大量摂取についての研究です。

 

アルコールを飲むと筋分解などが促進される可能性が高いと説明しましたが、アルコールを一度に大量に飲む行為

 

いわゆる「ガブ飲み」をしてしまうとただ単に筋合成の低下、筋分解の促進による筋力

 低下だけでなく、急性的に筋繊維の部分的壊死が起こることが報告されています。

 

 

しかも壊死するのは、筋肥大や筋パワー発揮に重要な速筋繊維(白筋繊維)のため、筋肥大を目指している方はアルコールの大量摂取は控えた方が良さそうです。

 

更に慢性的な症状として、筋萎縮や筋の衰弱が起こるという報告もされています。

これはアルコールによってテストステロンの合成量が低下し、筋合成が抑制された結果だと考えられます。

 

◆アルコールの適切な摂取量

 

ルコールが筋肉に悪影響を及ぼすことは今までの説明で分かっていただけたかと思います。

 

しかし、「それでもお酒を飲みたい」と言う方もいるでしょう。

 

なので最後にアルコールの適切な摂取量をご紹介します。

ちなみに健康に関してはアルコール自体が悪影響という結果が出ているため、健康を意識する場合はアルコール摂取量は0に近い方が良いです。

その記事をまとめたものがこちら

↓↓↓↓↓↓↓↓

 

rehaphysical.hatenablog.com

 

 

る研究では体重1kgあたり1gかそれ以下のアルコールであればテストステロン値に変化はないとされています。

また石井らは「究極のトレーニング 最新スポーツ生理学と効率的カラダづくり」のなかでビールを1日に1.2ℓ程度であれば影響はないとされています。

 

またModerate and Large Doses of Ethanol Differentially Affect Hepatic Protein Metabolism in Humansという研究の中ではアルコール摂取量が1日に28g以下ではテストステロン値やコルチゾールにほとんど影響はなかったとされています。

 

1日の摂取量が28g以下ということは350mlの缶ビール2本程度なので、これ位なら飲んでも大丈夫とこの研究からは考えることができます。

 

しかし、他の研究では3週間毎日30~40gのアルコールを摂取しているとテストステロン値が低下したと報告されているため、「基準値以下なら毎日飲んでも良い」という訳ではなさそうです。

 

更にこれらの研究は海外のものであり、被験者も外国の方です。

そのため日本人よりも体格が良い人が被験者である可能性が高く、我々日本人の基準値はもう少し少ない可能性が高いです。

 

また厚生労働省が定める1日のアルコールの摂取量は20g以下のため、こちらの数値も参考にしてみてください。

f:id:rehaphysical:20210506174344j:plain

 

◆総まとめ

 

の記事を書き始めた時は「今日は少し短い記事かな」と思っていたのですが、書いてみたらかなりの量になってしまいました。

 

最後におさらいとして総まとめです。

【アルコールの直接的な影響】

・タンパク質の合成低下、分解促進

・テストステロンの低下

コルチゾールの分泌促進

 

【アルコールの間接的な影響】

・脱水

ビタミンB1亜鉛の不足

睡眠障害

 

【その他】

・一度に大量に飲むと筋繊維が壊死する可能性がある。

・適切な量は1日28g以下(日本人なら20g以下の方が良いかも)

・基準値以下でも毎日飲むとテストステロンなどに影響が出る可能性がある。

 

 

今回のまとめとしてはこんな感じでしょうか。

 

アルコールは気分をリラックスさせてくれるもののため、ストレスの緩和にも繋がります。

お酒の席でコミュニケーションを取る人もいるでしょうし、付き合いもあるため絶対に飲むなとは言いません。

 

 

しかし、筋肉や健康にとってはやはり好ましくないもののため、出来たら控える方が良いでしょう。

特に自宅で1人で飲むのが習慣になっており、「なかなか筋肉つかない、脂肪が減らない」と悩んでいる方は今回の記事を読んで少しでもお酒を控える気になっていただければ幸いです。

 

 

では、今回も記事を読んでいただきありがとうございました。

また次回の記事でお会いしましょう。

「適度なアルコールは健康に良い」は嘘!?

「アルコールは適度に飲めば健康に良い」「酒は百薬の長だ」と聞いたことはありませんか?

 

アルコールは大量に飲むと心血管疾患・冠動脈疾患などのリスクを減少させると言われています。

しかし、それは本当でしょうか?

 

今回の記事はお酒好きの人には耳が痛い話になるかも知れませんが、アルコールについてのお話です。

 

 

f:id:rehaphysical:20210506173025j:plain

 

◆酒は百薬の長

 

もそも「酒は百薬の長」という言葉の由来は何なのでしょうか?

言葉の由来としては昔の中国(漢)の時代に王莽という人物が酒を飲むと気分が高揚することから「夫れ塩は食肴の将、酒は百薬の長、嘉会の好、鉄は田農の本」と言ったことが由来とされています。

 

そこから「酒は百薬の長」と言われる様になり、健康に良いとされてきました。

私自身、諺や慣用句は人間の知恵として好きですし、考え方の参考にもなると思っています。

 

しかし、健康や医療に携わる者としては「昔からの言い伝えだから」と言って盲信する訳にはいきません。

 

そのため前置きが長くなりましたが、お酒についての研究結果を見ていきましょう。

 

◆お酒は身体に良いという研究

 

ず「お酒は身体に良い」という結果が出ている研究から見ていきましょう。

 

初めにThun MJ et al. Alcohol consumption and mortality among middle-aged and elderly U.S. adults. N Engl J Med 337: 1705-14, 1997.という研究です。

 

この研究では平均年齢56歳の49万人を9年間調査しています。

結果はアルコールを飲んでいる人は飲まない人に比べ心血管疾患(心臓などの病気)になる割合が30~40%低かったとされています。

しかしこの研究ではアルコールを飲んでいる人は飲まなかった人に比べ癌になる確率が30%も高かったとなっています。

 

心血管疾患の確率が下がっても癌になる確率が上がったということですね。

 

この研究の様にアルコールの健康への効果については心血管疾患のリスクを謳っているものがほとんどです。

つまりその他のリスクは高くなるのですが、それでも心血管疾患に効果的なら飲む価値はある程度ありそうですね。

 

ネットでアルコールについて調べてみると「Jグラフ」というものが出てきます。

これはアルコール摂取量と疾患発症の確率を表したものですが、アルコール が少量なら、グラフは少し下に下がりリスクが低下します。

しかし、大量に飲むとリスクが高くなります。

この形がJになることからJグラフと言われています。

f:id:rehaphysical:20210506173419p:plain

※画像は厚生労働省から抜粋

 

は本当にアルコールは心血管疾患のリスクを下げるのでしょうか?

他の研究を見てみましょう。

 

国際循環器病研究センターの発表では「アルコールは狭心症心筋梗塞、虚血性心疾患に効果的」と発表されています。

 

また厚生労働省の発表では、アルコールは適量・少量であれば「脳梗塞に保護的に働く」「冠血管疾患のリスクを20%軽減させる」「抹消血管閉塞に効果的」とされています。

 

「国際循環器病研究センターや厚生労働省が言っているなら間違い無いのでは?」と思うかも知れませんが、これはちょっとしたトリックがあるのです。

 

◆お酒のデメリット

 

ほどの研究などからアルコールについてのメリットは「冠血管疾患」「脳梗塞」「抹消血管閉塞」「狭心症」などに効果があるということでした。

 

しかし、良く考えると少し違和感があることがわかります。

アルコールを飲むことで効果があると言っている疾患の全ては「血管の詰まり」が原因のものばかりです。

 

 

狭心症は心臓の血管が一時的に詰まる疾患ですし、抹消血管閉塞や脳梗塞心筋梗塞は文字通りその場所の血管が詰まります。

また冠血管疾患も心臓の血管が詰まり循環不全を起こすものです。

 

なぜこれらに効果的なのかと言うとそもそも「アルコールは血管を拡張させる効果がある」からなんです。

アルコールによって血管が拡張している時間が長いため狭心症脳梗塞で血管が詰まる確率が低下します。

 

これがアルコールと疾患のちょっとしたトリックです。

実際に先ほどの厚生労働省の発表ではアルコールによって脳出血のリスクが向上することや不整脈や心房細動のリスクが上昇することが分かっています。

f:id:rehaphysical:20210419224939j:plain

 

に国際循環器病研究センターの発表でもデメリットが示されており、アルコールによって心肥大や心疾患、期外性収縮や心房細動、くも膜下出血のリスクが高くなるとされています。

 

つまり、「アルコールは血管を広げるため血管の詰まる病気には効果があるが、その分他の病気や他の心血管疾患のリスクは高くなる」と言えます。

 

 

加えてこの研究では血圧のことについても言及されていて、 「アルコールを飲むと血圧上昇が起きるとされています。

ただ国際循環器病研究センターでは「アルコールによって血圧は上昇するが夜間(就寝中)はアルコールを制限している方が血圧が高くなるため、平均すれば血圧は同じくらい」とされています。

 

これについては血圧はその時の心臓や血管の負荷を見るもののため平均して同じだからと言って安全なわけではないと個人的には思います。

またこのアルコールを制限している人は普段アルコールを飲まない人ではなく普段飲んでいるが制限している人です。

 

普段から飲んでいる人ということはアルコール の影響でそもそも血管が硬くなっている可能性が高いため、血圧が通常よりも高くなってしまうのは当然の結果だと考えます。

 

これらの結果からアルコールが心臓病などに良いというのは単にアルコールが血管の拡張を促すため、血管の詰まりが緩和されるだけで根本的に健康になるわけではないと私は考えます。

 

 

●「アルコールは飲まない方が良い」という決定打

 

こまでアルコールは血管の詰まりが原因の疾患には効果はあるが、トータルして見るとアルコールは健康に良いと言い切れないと様々な研究から考察してきました。

 

 

今まではこの様な考察でしかアルコールと健康に関して説明出来なかったため、

トレーナー時代にお客様に「アルコールは健康に良くない可能性の方が高いです」と言っても

「いや、でも身体に良いって言う話も聞くし」となかなか納得してもらえない時もありました。

 

 

しかし、【アルコールと健康】に関して決定的な論文が発表されました。

それがhttps://www.thelancet.com/article/S0140-6736(18)31310-2/fulltextという2018年に発表されたもので1990年から2016年までの期間195もの国と地域でアルコールによる障害や死亡率などを調査し続けた論文です。

 

この論文で結論つけされているのは【健康上の障害や病気を1番抑えられるアルコール摂取量は1週間あたり0g】とされています。

 

 

つまりアルコールは飲まないことが1番健康に良く、摂取量が増えていくにつれ健康被害のリスクが高まります。

この研究は2018年世界で最も注目された論文第3位にランクインする程の衝撃を与えました。

 

これが決定打となり現在アルコールは健康に良いかと聞かれた際に「飲まない方が良い」と言える様になりました。

 

f:id:rehaphysical:20210506174241p:plain

 

 

すが、この論文は2018年に発表されたばかりのため一般の方はもちろんトレーナーの方や医療従事者でも「お酒は少量なら健康に良い」という方がまだ多いなと感じます。

 

 

実際に少し前も院内の先輩と話していると「アルコールは心疾患に効くから少量なら良い」と言っていて、「それは少し前の話ですよ」と説明しても聞き入れてもらえませんでした。

もしかしたら後輩に指摘されたことが気に食わなかっただけかも知れませんが、今までの知識を盲信している方も多くいるため、自分で判断できる様知識を深めていきましょう。

 

◆健康的なアルコール代表の赤ワイン

 

て、ここまでのお話しでアルコール自体が健康に良くないと説明されてきましたがこんな疑問はないでしょうか

 

「健康に良いと言われている赤ワインもダメなの?」

 

確かに赤ワインは唯一健康に良いアルコールだと言われています。

赤ワインが健康に効果がある理由としてポリフェノールが豊富で抗酸化作用があると言うのが一番の理由ではないでしょうか。

f:id:rehaphysical:20210506174344j:plain



 

かに赤ワインはポリフェノールの一種であるレスベラトロールが豊富です。

その量は同じワインである白ワインの10倍とも言われていて、事実ポリフェノールレスベラトロール)は身体に有益な働きをします。

 

しかし、ハーバード公衆衛生大学院のエリック・リム教授は「赤ワインから摂取できる

レスベラトロールは野菜や果物から摂取できる量よりはるかに少ない」と言っています。

またJAMAインターナショナル・メディシンによると「レスベラトロールと心臓疾患や癌の罹患率は関係がなかった」と発表されています。

 

更にレスベラトロールの効果を示した研究では

「赤ワインからポリフェノールの成分を抽出し、動物に与えていた」「その結果素晴らしい効果があった」というのがほとんどであり、「実際に同じ量のポリフェノールを人間が摂取しようとすると毎日8〜10本の赤ワインを飲む必要がある。」とエリック・リム教授は言っています。

 

 

【10年間にアルコールを飲む量が多いほど脳卒中や癌になる確率が高くなる】という研究もありますが、そんな研究なくても毎日それだけ赤ワインを飲めば健康に悪いのは明らかですよね。

 

 

また赤ワインに関しては動物実験だけでなく、人間でも「赤ワインを飲む人の方が健康的で長寿」という疫学実験がされています。

しかし、疫学調査では地域の風土や食生活などの要因が省かれていて実際には関連がなかったということもしばしばあると以前お話ししました。

その記事はこちら

 

rehaphysical.hatenablog.com

 

 

ワインに関しても行われている研究は疫学調査も多いです。

特に赤ワインをよく飲む地域の人は健康に良いとされている地中海式の食事をしている人がほとんどです。

地中海式の食事はポリフェノールや良質な脂質を摂取を多く取るため、そもそもが身体に良い食事をしています。

 

f:id:rehaphysical:20210506174358j:plain

 

ちろんポリフェノール自体は健康に良いのですが「地中海式の食事に赤ワインが含まれている」「赤ワインはポリフェノールが豊富だ」「実際に調べてみたら赤ワインを飲んでいる人は健康な人が多かっった」「赤ワインが健康に良い」と調査がねじ曲げられてしまっている可能性があります。

 

またエリック・リム教授は「赤ワインはビールなどの他のアルコールと比べ健康に関してメリットがある訳ではない」とも発言しています。

 

◆まとめ

 

今回のお話はいかがだったでしょうか?

お酒が好きな人には耳が痛いお話だったかも知れませんが、現段階では

・アルコールは飲めば飲むほど健康被害のリスクが高まる。

・少量なら健康に良いは少し前の話

・赤ワインも例外ではない

 

しかし、お酒が好きな人に全く飲むなと言うのは少し厳しいですよね。

お酒の場は楽しいですし、気分も高揚してリラックスできるため精神的な健康のため飲むのであれば適度なお酒は飲んでも良いと思います。

 

 

また赤ワインを含む地中海式の食事をしている地域の人たちが健康なのも事実なため、多少お酒を飲んでいてもその他の食事を気を付ければ、そこまで大きな健康被害を被るリスクは高くないと考えます。

 

人間の健康は1日で崩れるものではなく、日々の積み重ねです。

飲み会の日は楽しんで、その他の日で健康に目を向けた食事を心がけましょう。

 

本日も読んでいただきありがとうございました。

また次回お会いしましょう。

有機野菜って本当に健康に良いの?

皆さん、健康を意識する上で食事に気をつけていますか?

ダイエット、筋トレ、美容、健康に関する事であれば何を目標にするにしても食事内容のバランスがとても重要です。

 

 

特にビタミン・ミネラルなどの微量栄養素は不足する人が多いため、意識して食べる

必要があります。

そこでダイエットを始めて食事内容を気にする様になり、野菜を普段より多く食べている人もいるのではないでしょうか?

 

そんな時、こんなことを思ったことはありませんか?

「野菜って無農薬や有機野菜の方がいいのかな?」

 

テレビやネットでは「普通の野菜は農薬まみれ」「有機野菜は栄養価が高いから美容にいい」など様々なことを言われています。

確かに有機野菜、無農薬と聞くと何となく身体に良い気がしますが、本当に身体に良いのでしょうか?

 

 

今日はそんな有機野菜についてのお話です。

f:id:rehaphysical:20210502202737j:plain

 

有機野菜の栄養価

 

機野菜の栄養価をお話しする前にそもそも有機野菜やオーガニック野菜とは何なのかを軽く紹介します。

 

有機野菜とは農林水産省が定めた条件を満たして育てられた野菜の事です。

その条件とは薬剤や添加物を使わない遺伝子組み換えではない、化学肥料を使わないなどと言った事です。

条件の中には土壌にも規定があるそうで、簡単に言えばかなり厳しい条件をクリアして育てられた野菜のエリートと言う訳です。

ちなみに有機野菜とオーガニックは同義です。

 

有機野菜と似たもので無農薬野菜がありますが、無農薬野菜は定められた条件がないため有機野菜とは少し違う様です。

 

 

さて、そんな有機野菜ですが栄養価はどうなのでしょう

まずはレタス、ほうれん草、小松菜の栄養素を調べた研究(https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/79/10/79_KJ00004407273/_pdf/-char/ja)から紹介します。

 

この研究は有機野菜と従来の野菜を育てて栄養価の違いを見ました。

またその際に遠くで育てると環境の違いによって差が生じてしまう可能性があるため隣接した畑で有機野菜と従来の野菜を育てました。

 

 

その結果は何と有機野菜は従来の野菜と比べて栄養価に優位な差はない」となりました。

一部βカロチンに違いがあったそうですが、それは生育段階での違いであり有機野菜だからと言う訳ではないそうです。

 

またこちらのAre organic foods safer or healthier than conventional alternatives?: a systematic reviewという論文は1996年から2011年までの間に報告された240の論文を精査したレビュー論文です。

 

この論文によると有機野菜と従来の野菜では野菜に付着している農薬、いわゆる残留農薬に差があったとされています。

 

 

従来の野菜は37%の残留農薬に対し、有機野菜は7%程度の残留農薬でした。

また尿から検出された農薬にも違いがあった様です。

しかし、論文内で「臨床的に重要ではない」とされていて、健康に対しての影響はないとされています。

 

またこの研究では有機肉(牛、豚、鳥)の研究もされており、従来の育て方の肉の方が細菌の付着は多かったとされています。

しかし、こちらも野菜と同じく健康に対しては何の影響もないとされています。

 

 

栄養価に関してはこの研究では有機野菜の方がリンとポリフェノールが豊富だったとされていますが、バラ付きが激しく有機野菜だからという訳ではなさそうです。

 

更に筆者の要約では栄養価の違いは研究者のバイアスによる可能性があるため、有機野菜の栄養価の優位性はないとされています。

 

f:id:rehaphysical:20210502202818j:plain

 

の2つの研究から有機野菜は特別栄養価が高いわけではなさそうです。

特に野菜に関しては土壌の状態、気候、育て方など様々な条件によって栄養価が変化するため一律して研究をすることが難しいです。

 

そのため、「有機野菜は栄養価が高いとデータで出ています。」と言った謳い文句で有機野菜の方が優れているデータを出して有機野菜を勧めているものは信用しない方がいいでしょう。

 

有機肉はどうなの?

 

ほども少し紹介しましたが有機は野菜だけではなく、牛肉や豚肉、鶏肉にも有機のものが存在します。

 

野菜の栄養価は有機と従来のものに違いはなさそうでしたが、肉ではどうなのでしょう?

2008年にアメリカで行われた研究では牧草牛(有機)と穀物牛の栄養価を比較しました。

結果は牧草で育てられたグラスフェッドである牧草牛の方がオメガ3脂肪酸と抗酸化作用のあるリノール酸、ビタミンB6が穀物牛よりも少し高かったそうです。

 

また肉ではなく有機で育てられた鶏から出来た有機卵では従来の卵と比べ、ビタミンA、D、Eが多く含まれており、オメガ3脂肪酸も多かったそうです。

 

ただこれらの研究は信頼性の高い研究ではなく、有機肉に関する比較研究の総数がそもそも少ないため「肉に関しては有機の方が少し栄養価が高い可能性があるかな」位の気持ちで考えていただければと思います。

 

f:id:rehaphysical:20210502202840j:plain

有機野菜は買うべき?

 

れまでの研究の結果から個人的にはダイエットや健康に関しては

有機野菜でなくても良い、有機野菜を買うお金で普通の野菜をいっぱい買う方が効果的」と考えています。

 

またアメリカで栄養士として活躍しているクリスティ博士も「有機野菜は予算内であるなら買うべき」「ただし、予算を考えて有機野菜を買う事でそもそもの野菜や果物の摂取量が減る場合は従来の野菜をしっかりと食べる方がいい」と発言しています。

 

少量の有機野菜よりも多くの従来の野菜の方が良い理由としては「癌や病気への予防のために多くの野菜や果物などを取り入れた食事をする方がいい」と様々な研究で言われていますが、その研究で使用されているのは従来の野菜であることがほとんどだからです。

 

従来の野菜でも研究によって健康に効果的と分かっているため、無理をして有機野菜をとる必要はないでしょう。

 

 

◆優先して買うべき有機野菜

 

最後に予算的に有機野菜を買える場合、どんな野菜・果物を優先して買うべきかをご紹介します。

 

優先的に買うべき有機野菜はこちら

・ほうれん草

・セロリ

・じゃがいも

・ピーマン

・トマト

・苺

・桃

・ブドウ

さくらんぼなど

 

逆に優先して買わなくても良い有機野菜はこちら

・アボガド

・玉ねぎ

・アスパラガス

・マンゴー

・キウイ

・メロン

・グレープフルーツ

・オレンジなど

 

考え方としては「皮ごと食べるかどうか」です。

有機野菜の栄養素はほとんど変わらないと言いましたが、従来の野菜には農薬が残留しています。

 

もちろん健康に影響はないとされていますが、体内に入るものなので農薬は少ないに越したことはないですよね。

農薬は表面、つまり皮の部分に多いため皮を剥いて食べる野菜はそこまで体内に入る農薬は多くありません。

 

 

先ほどの研究でも従来の野菜は約37%農薬が残留していると言いましたが、使用されたのは小松菜やレタスなどそのまま食べる野菜でした。

そのため、皮ごと食べる野菜・果物は優先して有機のものの方が良いと考えます。

 

 

f:id:rehaphysical:20210502202957j:plain

 

機野菜を買う時にどの野菜を買うか悩んだ時は「皮ごと食べる物」ということを意識して選んでみてください。

 

本日も記事を読んでいただきありがとうございました。

また次回の記事でお会いしましょう。

 

筋肥大のメカニズムと5つの要素

キムキになりたい」「かっこいい身体を目指したい」そう思って筋トレを始めた方も多いと思います。

私もそうでしたが特に若い世代の方は筋肉をつけて引き締まった身体に憧れを持ちますよね。

 

筋肉をつけたい理由は人それぞれですが、男性であればモテたいと言うのが本音ではないでしょうか?

事実筋肉量が多い人はモテる確率が高まると言う論文も発表されています。

もちろん純粋に筋肉をつけること自体に喜びを感じている人もいるでしょう。

 

またスポーツ選手のような締まった身体、ボディビルダーのようなムキムキな体型、フィジークの選手のようなゴリゴリであり締まった身体など人によって目指す体型も様々です。

 

そのどの体型を目指すにしても必要なのが「筋肉をつけること」もっと簡単に言うと「筋肥大」です。

 

f:id:rehaphysical:20210501130725j:plain

 

今日はその「筋肥大」についてのお話です。

 

◆ジムのトレーナーは「筋肥大はなぜ起きる?」を説明できますか?

 

トレをしていると段々筋肉が大きくなり、気がつくと服がきつくなっている事があります。

それは筋トレをした結果、筋肉が肥大しており身体のサイズが大きくなっているのですが、その筋肥大はどのようにして起こるか知っていますか?

 

恐らく「筋トレで筋肉が傷ついて、それが治るときに前と同じ刺激に負けないように筋肉がより強く回復する」と何となく思っているのではないでしょうか?

 

 

それは正しいのですが、何だかぼんやりした説明と感じませんか?

もちろん身体についての知識がない方はそれで十分ですが、ジムのトレーナーなどがこのレベルの説明では少し物足りないです。

 

皆さんが通っているジムのトレーナーさんは筋肥大のメカニズムを詳しく説明できるでしょうか?

この説明が全てではありませんが、やはり身体の勉強をしている者としては知っていて欲しいですよね。

 

 

なので今日は筋肥大が起こる5つのメカニズムを解説していきます。

もし現在「このトレーナーさんは本当に知識があるのか」や「パーソナルトレーニングをしようかな、どこのジム・どんな人が良いのかな」と考えている方は今日の説明を聞いて、トレーナーに「筋肥大のメカニズムを詳しく教えて」と聞いてしっかりとした返答が返ってくれば信頼性を判断する一つの材料になると思います。

 

f:id:rehaphysical:20210501130844j:plain


 

◆筋肥大のメカニズム

 

は初めに筋肥大について基礎的な知識をお話しします。

少し専門的な話になるため、軽く読み流して次の項目に行って頂いても大丈夫です。

 

まず初めに知っていただきたいのは、筋肉の構造です。

筋肉は筋繊維の集まりで出来ているのは一般の方でも知っていると思います。

しかし、筋肉を細かく見ていくと、筋繊維は筋原繊維と言う細い束の集まりなのです。

更にその筋原繊維もとても細いミオシンフィラメントとそれよりも細いアクチンフィラメントで構成されています。

 

 

このミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが滑り合う事で筋肉は収縮されます。

そしてこの2つは筋タンパク質から出来ています。

この2つのフィラメントが合成される事で筋肥大が起こるため筋肉にはタンパク質が必要と言われているのです。

 

 

この筋タンパク質は24時間365日代謝され「分解と合成」を繰り返しています。

基本的には分解と合成が釣り合った状態のため、私たちの筋肉量は維持されています。

そのため、筋肥大させるにはこの筋の合成が分解を上回る必要があります。

 

では、どうすれば筋の合成は促進されるのでしょうか?

 

筋肉はα運動ニューロン(いわゆる運動神経)からの命令で収縮し身体を動かします。トレーニングなどで筋繊維が収縮する刺激が筋合成を促進するスイッチを入れます。

 

筋肉を収縮する際に筋肉にある筋小胞体と言う箇所からカルシウムイオン(Ca2+)が放出されます。そして細胞の成長を促すインスリン様成長因子(IGF-1)の分泌が増加します。

このインスリン様成長因子(IGF-1)は睡眠不足になると分泌が抑制されると以前の記事で紹介しましたね。

※その記事も貼っておきます。

 

 

rehaphysical.hatenablog.com

 

れらのカルシウムイオンとインスリン様成長因子(IGF-1)によって活性化されるのが筋肥大に重要と言われている哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)です。

この哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)は筋合成を促進させる物質を活性化させ、筋合成を抑制する物質を不活性化させます。

 

 

つまりトレーニングによって、身体の中の筋合成を促進させる物質が活性化する事で筋肉は大きくなるのです。

では、その筋肉を大きくさせる要素はどう言ったものがあるのででしょうか。

 

 

◆筋肥大のための5つの要素

筋肥大に必要なのは以下の5つです。

・メカニカルストレス

・筋肉へのダメージ

代謝

・酸素環境

・ホルモン

 

1つずつ解説していきましょう・

 

●メカニカルストレス

 

カニカルストレスとは、重いものを持った時に筋肉や腱に加わる力のことです。

筋肉を肥大させるにはこのメカニカルストレスをしっかりとかけなければいけません。

レーニングを1RMの60〜80%の負荷で行うと筋肥大すると言うのは、このメカニカルストレスをかけるためです。

 

これについては「サイズの原理」や「総負荷」に対する考えもあり、最近では必ずしも高負荷である必要はないのですが、それは長くなるため別の記事でお話しします。

 

また常に同じ負荷でトレーニングすると身体が慣れてきてしまいメカニカルストレスが弱くなってしまうため、筋肥大を行うには徐々に負荷を上げていく必要があります。

これを過負荷の原理と言います。

f:id:rehaphysical:20210501131212j:plain

 

●筋肉へのダメージ

 

レーニングによって筋繊維が微細な損傷や断裂を起こします。

この損傷や断裂は怪我ではないため、数時間〜数日で回復します。

 

人間は環境への適応力が生物の中でも抜群に優れているため、ダメージを受けた筋肉が回復する際に「同じストレスに負けないようにしよう」となり筋繊維の強度が増します。

それによって筋肥大が促進されるのです。

この過程が皆さんが思っている筋肥大のイメージかなと思います。

 

また肉離れなどをイメージしてもらうと分かりやいですが、筋繊維は伸ばされる時に損傷を起こしやすいです。

そのため筋肉が伸びながら収縮する遠心性収縮(エキセントリック、ネガティブ動作とも言います)を意識して行う事で筋肉の成長を促しやすくなります。

 

筋肉へのダメージと聞いて「筋肉痛」をイメージしてしまいますが、筋肉痛は必ずしも筋肥大に必要ではないため筋肉痛が来ないからと効果がないわけではないため、安心してください。

 

代謝

 

肥大には代謝も重要です。

代謝と言うと栄養素のことも入ってしまうのですが、そうなるとキリがないため今回は乳酸の代謝についてです。

 

乳酸と聞くと疲労物質をイメージする方も多いと思います。

確かにトレーニングを行うと乳酸は発生します。

数年前までは乳酸が疲労の原因とされていました。

 

しかし、現在ではむしろ乳酸は疲労回復」「筋肥大」に重要な物質だとわかってきています。

 

乳酸は無酸素運動、つまり瞬発的な激しい運動を行うと生成されるのですが乳酸が溜まってくると脳にその情報は伝わります。

そうすると脳の下垂体と言う場所から成長ホルモンが分泌されます。

 

そうする事で筋の合成が促進され筋肥大しやすくなります。

また乳酸は体内にエネルギーがないと生成されにくいため、トレーニング前は糖質を取る事で筋の分解を防ぐとともに乳酸の生成を促し筋肥大に繋がります。

 

 

以下の様に乳酸によって筋肥大が促されたという研究もいくつもされているため、「乳酸が溜まると疲れやすい」と言っているトレーナーがいればちょっと勉強不足かな?と思います。

https://www.ueharazaidan.or.jp/houkokushu/Vol.32/pdf/report/099_report.pdf

 

●酸素環境

 

し前に加圧トレーニングが流行ったことを覚えているでしょうか?

加圧トレーニングとは腕や脚を圧迫し血流を制限して運動するものです。

血流は酸素を運んでいるため血流を制限すると筋肉が低酸素状態になります。

 

 

低酸素状態になると筋合成を促進する物質の活性を促すサイトカインという物質が増加し、筋肥大が起こります。

実際にBangsbo J,Gollnick PD,Graham TE,Juel C,Kiens B,Mizuno M,Saltin B,Anaerobicenergy Production and O2Deficit Debtlelationship during exhaustive exercise in human J Physiologic422:539-559 1990という論文でも

「低酸素状態でのトレーニングは筋横断面積を優位に増加させた」や

「寝たきりの人に1日2回血管閉塞を起こると筋萎縮が優位に減少した」とされています。

 

 

f:id:rehaphysical:20210501131412p:plain

 

た血管を圧迫した低酸素状態では圧迫を開放した際に一気に血流が流れ、その時に反応性の高い活性酸素種が作られ筋肥大を促すシグナルになると考えられています。

この理論を使ったのが加圧トレーニングです。

 

私がパーソナルトレーナーの学校に通っていた学生の頃も、同級生がセルフ加圧トレーニングとしてチューブで腕を締め、トレーニングをしていて筋肥大もとてもしていました。

 

この様に酸素の状況によっても筋肥大は促進されます。

しかし、私自身加圧トレーニング自体はあまりオススメしません。

 

理由としては血管を圧迫しているため、血管への負担が大きく意図的に血流を阻害するため静脈還流量が不均等になり心臓への負担も大きくなるからです。

加圧=心臓・血管に負担がかかる研究結果はないですが、通常のトレーニングでも十分効果があるため変にリスクを取る必要はないと考えます。

 

 

何より私の同級生の様にセルフで締めるなど危険性が高いため絶対にやめましょう。

もし、加圧トレーニングを行う場合は、専門の資格を持った指導者の元で行いましょう。

 

●ホルモン

 

肥大にはホルモンが重要とされています。

筋肥大を促すホルモンとして「成長ホルモン」「男性ホルモン(テストステロン)」「インスリン様成長因子(IGF-l)」などはあります。

f:id:rehaphysical:20210501131448p:plain

 

れらは高強度なトレーニングを行うことで分泌されやすくなり筋肥大に効果的と言われています。

 

「トレーニング後30分以内はゴールデンタイムだからすぐにプロテインを飲む必要がある!」と言われるのもこの考え方のためですね。

 

実際にはトレーニング後の成長ホルモンなどは筋合成に関与は小さいのですが、トレーニングによって筋肥大を促進するホルモンが分泌されるのは確かなため、徐々に負荷量を向上させていきましょう。

 

レーニング後のプロテイン摂取は効果的かどうかはこちらの記事を参考にしてください。

 

 

rehaphysical.hatenablog.com

 

 

◆まとめ

肥大のメカニズムとそれに伴う5つの要素についてお話ししてきました。

なるべくわかりやすく解説したつもりですが、いかがだったでしょうか?

 

 

普通にトレーニングするだけならここまで詳しく知らなくても「徐々に重量を上げると筋肉は強くなる」という認識で問題ないですが、トレーナーさんの知識などを見極める時などに今回の知識を使っていただけると、より良い指導者を探す1つのポイントになると思います。

 

 

明日からトレーニングする際に今回紹介した「メカニカルストレス」「筋肉へのダメージ」「代謝」「酸素環境」「ホルモン」のことを意識しつつトレーニングを行なってみてください。

 

本日も記事を読んでいただきありがとうございます。

また次回お会いしましょう。